映画「イベント・ホライゾン」のDVDを十二月下旬に見ました。
1997年の映画で、監督はポール・W・S・アンダーソン。「モータル・コンバット」(1995年)や、「バイオハザード」(2002年)の監督です。
脚本はフィリップ・アイスナー。
主役はローレンス・フィッシュバーンと、サム・ニールです。
映画の感想は「うーん微妙」です。
映画自体はSF物で、系列的には「エイリアン」系です。
閉鎖空間である宇宙船の中で、よく分からない敵と戦い生還を目指すという話です。
映像的にはそれなりのできなのですが、話の切れ味が悪いです。
以下、映画の設定を書き、その理由を書いていこうと思います。
映画は、ウェアー博士(サム・ニール)と、ミラー艦長(ローレンス・フィッシュバーン)の二人が中心メンバーになります。
そして、舞台は「イベント・ホライゾン」という巨大宇宙船です。
この宇宙船は深宇宙探索を目的とした有人宇宙船で、海王星の付近で消息を絶ちました。
しかし、七年後に突然発見され、その確認に行くために、ウェアー博士を乗せた宇宙船が旅立ちます。この宇宙船の艦長がミラーです。
そして、海王星付近の「イベント・ホライゾン」にたどり着いた後、ウェアー博士はその宇宙船が何をやっていたのかを明かします。
「イベント・ホライゾン」は時空を曲げ、遥か遠くに行くための装置を搭載していました。
どうやら、その場所で何かに出会い、こちらに連れてきたらしい……。
というわけで、見えない「何か」に船員たちが襲われ始めます。
えー、どこかで見たような使い古された設定です。
でもまあ、そういった王道の設定ということは、きっちりと作ればそれなりに楽しめる作品になるはずです。
しかし、この映画ではそれほど面白くなっていません。
その理由は、キーパーソンとなるウェアー博士の行動原理が不明確だからです。
まず第一に目的が曖昧です。
そしてそれ以上に問題なのは、最終的な結論に至る過程が適切に描かれていないことです。
「いや、お前、そのこと知っていないだろう。少なくとも映画の序盤では」という理由で意思決定を行います。
TRPGで言うところの「プレイヤーの知識とキャラクターの知識の混同」が起こっています。
そのために、博士の行動の理由が間違っているように見えます。
これじゃあ納得がいかない。
それともう一つこの映画には問題があります。
それは、敵のルールが不明確なことです。
この手の閉鎖空間バトル物では、ルールは明確でなければなりません。そして、ルールの積み重ねの結果、その全貌が明らかになるという物語上の構成を持っていなければなりません。
これは「序盤でルールAが示され、中盤でルールAに則ったルールBが示され、終盤でさらに前のルールの延長線上に当たるルールCが示され、それらを総合するとルールの全貌が分かる」といった構成です。
この映画では、そういった積み重ねがほとんどなく、ルールが独立してしまってその場限りのものになっている物が多いです。
そのために、何と言うか“話に新たな展開が見られません”。
序盤のルールを何となくだらだらと続けているだけのように見えます。
ここら辺は工夫が必要だなと思いました。
結論として、「エイリアン」もどきの失敗作となっていました。
残念。
細かな伏線は張られていましたが、全体の構成に難ありだなと思いました。
以下、粗筋です。(最終的なネタバレはなし。終盤直前まで書いています)
深宇宙を目指していた宇宙船「イベント・ホライゾン」が海王星の付近で連絡を経った。
それから七年。突如発見されたその船を目指して、一機の宇宙船が海王星を目指す。
その船には一人の男が乗っていた。「イベント・ホライゾン」の設計者である博士である。
彼は今回の探索の目的を船長以下船員に語っていなかった。
宇宙船は「イベント・ホライゾン」までたどり着く。
そこには一人も人がおらず、死体しかなかった。
船員たちは、記録を元に、この船で何が起こったのか探り出す。
しかし、彼らに次々と変調が起き始める。精神を病み、幻覚を見始めたのだ。
「この船には何かがいる。船全体から微弱な生体反応が検出されている」
船員の一人は、船長と博士にそう告げる。
船長は博士に、この船がどんな船なのか、そして今回の探索の真の目的が何なのかを尋ねる。
しかし博士はそのことを答えようとしない。
そんな中、一人、また一人と犠牲者が出始めた。そして博士がこの船の正体を語り出す。
「イベント・ホライゾン」は、特殊な重力ドライブを持っており、空間を捻じ曲げ、遠方に一瞬の内に航行する船だという。
その船が、どこかに行き、戻ってきた。その空白の七年間で、全ての乗組員が死んだ。
航行先で何が起こったのか?
博士は沈黙を続ける。
そして、被害は拡大し、乗ってきた宇宙船も破壊され、帰還が困難な状況になり、博士が全ての真相を語り始めた。
船長や残った船員たちは、博士の企みを阻止するために戦いを始める。
なんというか、映画の終盤の畳み掛けるような博士の告白に脱力します。
「いや、お前それ知っていないだろう」というのが一つ。
「えー、いくらなんでもそれの理由は繋がっていないだろう。因果関係の順番が微妙にずれているし」というのが一つ。
「その航行先はないだろう」というのが一つ。
終盤に少しは期待していただけに、がっかり感も大きかったです。
まあ、「エイリアン」を超えるのは大変だなというのが結論でした。