映画「ブリジット・ジョーンズの日記」のDVDを二月の上旬に見ました。
2001年のアメリカ映画で、監督はシャロン・マグワイア。
わざわざアメリカ映画と書いたのは、原作がイギリスで大人気の作品だったためです。
監督のシャロン・マグワイアは、これ一作しか見つかりませんでした。
原作はヘレン・フィールディングで、脚本は原作と同じヘレン・フィールディングに、アンドリュー・デイヴィスとリチャード・カーティスです。
脚本は、原作者の周囲をベテランが固めているという印象です。
アンドリュー・デイヴィスは「刑事ニコ 法の死角」(1988、製作、監督、原作、脚本)の人ですし、リチャード・カーティスは「ノッティングヒルの恋人」(1999、製作総指揮、脚本)や「ラブ・アクチュアリー」(2003、監督、製作総指揮、脚本)の人ですので。
そして主役はレニー・ゼルウィガーです。
反感を買わないブスキャラを演じさせたら右に出る者のいない彼女が、お肉がたるんでぷよぷよした“いけてない女”を好演します。
感想を一言で書くと「なるほどな」です。
女性の行動パターンの一つとして、自分よりも容姿の劣る女性と一緒に行動したがるというものがあります。
つまり、自分をよく見せるために引き立て役を求めるのと、精神的優越感を得るための行為です。
この映画は、そういった女性の心理を物凄くストレートに突いています。
「私もそんなに“いけている”方じゃないけれど、彼女に比べればまだマシだわ」という優越感を徹底的に煽ります。
何と言うか、発言小町で女性からの同情・共感メッセージが大量に集まりそうなキャラです。
レニー・ゼルウィガーはこのキャラクターを演じるために、物凄い量の贅肉を付けています。
DVDにはインタビューも付いていて、そこにレニー・ゼルウィガーが登場していましたが、そのインタビュー時のレニー・ゼルウィガーはかなり痩せていました。
多分、役に合わせて体重を増やしたのだと思います。
ぱっと見、15〜20kgぐらいは贅肉を付けている印象です。
この贅肉が、女性にとっての安心感と優越感を与えているのだろうなと感じました。
ぽっちゃりはとっくの昔に通り過ぎたけど、デブと言い切るには3mmぐらい手前といった体型です。
この体型を作り、レニー・ゼルウィガーが演じているあたりで、キャラ作りは成功だなと感じました。
次に「なるほどな」と思ったのは、主役のブリジットの職業です。
けっこうハイソな職業に就いています。最初は中堅以上の出版社、次はローカルだけどテレビ局。
でも、ブリジットは滅茶苦茶ドジで地雷踏みです。能力は皆無です。
これだけレベルの低い女性がそういった仕事ができるのならば、彼女よりもできる自分ならもっといい職業に就けると感じさせられるようなキャラクター造形です。
まあ、現実問題として、あそこまで仕事ができない女性がそういった場所に就職できるかどうかはかなり疑問です。
端的に言うと「自分で地雷を掘って、そこに落ちて『なんで!』と叫ぶような女性」ですので。
でもまあ、そういった職業になっているのは、マーケティング的な理由ではない可能性が高いです。
最初の仕事場所が出版社なのは、単に原作者がそういった場所で働いていたからという理由だけだと思います。
別に狙ってそういう職業設定にしたのではないでしょう。
DVDの映像特典によると、原作は元々は新聞のコラムだったそうで、特に小説とかそういったものではなかったようですので。
さらに、女性が喜ぶ要素が入っています。
「駄目でいけてない私だけど、イケメンたちから無償の愛を注がれる」という話の構造です。
これは、少女漫画でよく見る構図と同じです。
読者に近い立場の女性が、イケメンたちに取り囲まれて心を揺れ動かすという奴です。
まあ、これは女性だけが好む要素ではありません。多くのギャルゲーがこの構造ですので。
そういったわけで、いろいろな意味で、女性の優越感と共感をくすぐるように作りこまれていて、あざといなと感じさせられました。
よくできていると思います。
次に脚本についての感想です。
脚本については、設定されていたトラップに即効で気付き、正解を言い当てられたので勝った気がしました。
まあ、私レベルで答えが分かるので、それほど難しいトラップではなかったのですが。それに、そういったことをする映画でもないですし。
あと、この映画は、終盤の巻きが凄かったです。
「いったい、何度どんでん返しするねん!」と叫びたくなるぐらい話が逆転しまくります。もう、笑うしかないです。
勉強のために借りてきたDVDですが、けっこう楽しめました。
以下、粗筋です。(中盤の終盤近くまで書いています)
主人公は出版社の女性編集者。彼女は年齢と体重を気にする“いけていない女性”。やることなすこと全て裏目に出るタイプで、結婚したいのにその芽を全部自分で摘み取ってしまうような人間だ。
彼女はある日、故郷のパーティーで一人の男性を紹介される。弁護士という職業に期待するが、母親にもらったトナカイのセーターをパーティーに着てくる男で幻滅する。
休暇が終わり、主人公は職場に戻る。彼女は上司でイケメンの男性に恋をしていた。そして、その恋が実り、彼と肉体関係になる。
しかし、それはどう見てもセックス・フレンドだった。だが、彼女は恋人になったと思い、幸福の絶頂になる。
そんな彼女に、故郷で出会った弁護士の男が絡んでくる。その男は、主人公の上司にもなぜか敵意を燃やしている。
彼女は弁護士のことを徹底的に嫌う。
幸せを満喫していた主人公だが、それは長くは続かなかった。上司に美人の恋人がいることが発覚したからだ。
アメリカ支社にいた上司の恋人は転勤で戻ってきた。主人公は、恋人がいない間の代替品にしか過ぎなかったために捨てられた。
自暴自棄になる主人公。そんな彼女に、弁護士の男が愛を告白する。彼女の心は揺れる。そして、一度は離れた上司が戻ってきた。美人の恋人に振られたらしい。
そして、二人の男による主人公の取り合いが始まった……。
以下、どうでもいいような感想を羅列します。
最も印象に残ったシーンは、テレビカメラに向かっての、レニー・ゼルウィガーのヒップ・アタックです。
普通ならセクシーな映像になるのですが、肉の塊が激突するような感じで、全くセクシーではなかったです。
「うわー、すげー、肉弾攻撃だ」と思いました。
あと、ヒュー・グラントのイケメン上司がよかったです。
あっけらかんと駄目男です。
頭のネジが何本か外れています。
でもまあ、憎めないキャラです。見ていて面白かったです。
基本的に、キャラ作りが非常に上手い映画ですので、見ていて飽きません。
最後に本当にどうでもいい感想を書きます。
映画を見ている最中、主人公のブリジットのことを、勝手に「インディーの孫娘」と呼んでいました。
「インディーって誰だ?」というと、ナチスと戦う考古学者です。例の教授です。
「うおー、インディーの孫娘のくせに、なんてドジなんだ〜〜!」とか、勝手に脳内シナリオを展開していました。