映画「バベル」のDVDを三月下旬に見ました。
2006年の映画で、監督はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリト。脚本はギジェルモ・アリアガです。
監督・脚本は「21グラム」(2003年)のコンビですね。複数視点で話を進めていき、徐々にそこに接点が見えてくるという構造は「21グラム」と同じでした。
前に見た「21グラム」は、割と小さな世界の話でしたが、今回見た「バベル」はワールドワイドな舞台でそれを行うという感じでした。
でもまあ、タイトルからイメージするような世界がひっくり返るようなことはなく、ずれがずれを呼んで事件になるという感じの映画でした。
映画を見ている時には気付かなかったのですが(似ているなあとは思ったけど)、ブラッド・ピットの奥さん役はケイト・ブランシェットでした。
この人は、どんな役にでも化けるので、キャラによって印象が大きく違うのでびっくりです。
やっぱり、上手い人だなと思いました。
あと、アカデミー賞で菊地凛子が話題になっていましたが、これは取れないよなと思いました。
体当たりの演技ではあると思うのですが、演技自体が凄いとは感じませんでした。
耳が聞こえない高校生役なのですが、彼女の友人の方が自然だなと思いました。
逆に「これはよい」と思った役者もいます。
菊地凛子と絡む刑事役の二階堂智です。非常に味を出していてよかったです。今まで知りませんでしたが、ちょっと名前を覚えておこうと思います。
以下、粗筋です。
モロッコの羊飼いの一家。その父親は、一丁の猟銃を子供たちに与えた。狼たちを追い払うためのものだ。しかし、その銃から発射された弾丸が思わぬ悲劇を招く。
猟銃を与えられた兄弟は、その銃で遠いところを狙う。弟は上手く、兄は下手だった。
そして、その射撃競争はだんだん距離が伸び、兄は谷底のバスを狙う。だが弾は全く届かない。
「貸してみな」
弟は狙いを付けて弾を放つ。彼が引き金を引いた直後、バスが止まった。誰かに当たったのだ。
その弾丸は、アメリカから来ていた夫妻の妻の肩を貫いていた。そして、その弾丸はテロリストが放ったものとして大事件となる。
その頃、夫妻がアメリカに残してきた子供たちの乳母は、親戚の結婚式にメキシコに行くことになった。
彼女は子供を知人に預けようとするが、預け先が見つからず、仕方なくメキシコに子供たちを連れていく。
しかし、帰りに悲劇が起きる。彼女は不法就労者だった。そして、車を運転してもらっていた甥が警備の兵士と言い争いをしてしまったために、誘拐犯として逃亡せざるをえなくなる。
甥は車を走らせ、乳母と子供たちを砂漠に残して逃亡する。彼女らは極暑の中、人の姿を探してさまようことになる。
また、日本では警察が動き初めていた。“テロリスト”が使った銃の出所を調べるためだ。
その銃をモロッコの羊飼いに与えたのは、一人の高給取りのビジネスマンだった。彼は妻を自殺で亡くしており、聾の娘がいた。
女子高校生の彼女は、母の死と父との不和で不安定な状態だった。
彼女は家にやって来た刑事に好意を抱く。そして、もらった名刺の電話番号に電話を掛け、彼を家に招く。
被弾した妻は生死の境をさまよう。夫は大使館に連絡する。だが政情不安定な場所ゆえに、病院への搬送方法がなかなか都合が付かない。
現地には獣医しかいなかった。夫は必死に妻を看病する。妻の望みは子供たちの声を聞くことだった…。
最初はばらばらに提示されるプロットが、だんだん繋がっていきます。
でも、密接に絡んで影響しあうというものではなく、それぞれの場所でそれぞれの事件があり、それぞれの人生が送られるというタイプの緩い結合です。
できはなかなかよかったです。
こういった緩い結合の物語なので、最後に巨大などんでん返しがあるわけではありません。それよりも、過程を楽しむといったタイプの楽しみ方をする映画でした。
爽快感はないですが面白い映画でした。
少し、個人的な感想を書いておこうと思います。
アメリカ人夫婦の子供たちの乳母が不法就労で問題になるのですが、これはまあ仕方がないなと思います。
アメリカで何年も働いていると言い訳をするのですが、それは不法就労として働いているだけです。
彼女がしなければならなかったのは、その時の伝手を駆使してアメリカで働くための法的な根拠を取得することです。
それをしなければ、不法就労は不法就労でしかありません。そして、法的根拠を得る活動をした上でビザがなかなか下りないことを非難するのならば正当性があります。
そうでないと、単なる犯罪者です。
日本でも、日本国籍を取る気がないのに参政権をくれという主張があります。
これは、はっきりいってナンセンスです。
日本国籍の取得が難しいので、その取得の基準を下げてくれという主張なら意味があります。それは議論の俎上に載る話です。
でも、そうではなく、権利だけくれというのは無茶苦茶な主張です。最近、そういった活動が増えているので厳しく監視していく必要があると思います。
最後に少し。
菊地凛子は全裸で頑張っているのですが、その裸が貧相でした。
だいぶ痛いなと思いました。まあ実際に、見て凄いレベルの裸を持っている人はそうそういないとは思うのですが。
表情とかシチュエーションとか含めて、あまり嬉しくない裸でした。まあそういう演出なので仕方がないとは思うのですが。