五月分です。
● 2007年05月(5冊/計25冊)
■ 鳥葬の山(夢枕 獏)(★★★☆☆)
夢枕獏は結構文章が好きです。
これは短編集。妙に記憶に残る作品が多かったです。
特に、魚を釣ろうとして谷に落ちる話が強く印象に残りました。
自分にとっての宝(魚釣り)を追った結果、脱出不可能の谷底に落ちるのですが、結局何をするかと言うと、その宝を得ようとする。つまり釣りキチガイの話です。
妙にぐっと来るものがありました。
■ ロアルド・ダールの幽霊物語(ロアルド・ダール編)(
★★★★☆)
高校時代に一番怖かった幽霊本。物音を気にして、震えながら読んだ記憶があります。
ロアルド・ダールが、千本近くの幽霊物語を読み、その中から厳選して選んだ幽霊物語集。
ロアルド・ダールは多才な人で、私の位置づけでは短編小説の名手。児童文学での方が有名かも知れず、「チョコレート工場の秘密」(ティム・バートン監督による「チャーリーとチョコレート工場」として二度目の映画化)などを書いています。
また脚本も手がけているらしく「007は二度死ぬ」(1967)「チキ・チキ・バン・バン」(1968)を書いているようです。
というわけで、どういった内容だったか確認するために再読しました。
高校の頃と違って全く怖くなく、感性の摩耗にショックを受けました。
作品には、見るべき年齢や精神状態があるんだなと気付かされました。
ただし、非常に優れた短編集であることは間違いありません。本当によく出来た作品ばかりです。
■ 映画の見方がわかる本—『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION)(町山 智浩)(
★★★★★)
これは非常に素晴らしい本。誰かが書かないといけない、時代別の映画の“本当の意味での”レビュー集。
人にはそれぞれ、人生でやっておかないといけない“仕事”というものがあります。たとえば塩野七生の「ローマ人の物語」、司馬遼太郎の「坂の上の雲」。
この本は、氏のそういった位置づけになるのではないかと思います。作家にとって名刺となる本です。
この本の最大の特徴は「映画の縦軸と横軸」が把握できることです。映画史の中で、その作家や作品がどういった位置づけになるのか、そしてそれらの作家や作品の同時代間での関係がどうなっているのか、そういた“映画や作家の関係性”を教えてくれます。
それも、内容が非常に的確で、読み物としてのクオリティも高い。単なる映画の紹介ではなく、映画作家本人にスポットを当てた列伝形式になっているために、物語としても熱いドラマを展開しています。
この本はシリーズで現在二冊まで出ています。早くもっと出して欲しいです。
映画好きなら必ず読まないといけない本です。
■ 甲賀と伊賀のみち 砂鉄のみちほか 街道をゆく (7)(司馬 遼太郎)(★★☆☆☆)
忍者です。
司馬遼太郎の初期と言えば、「梟の城」というゴージャス忍者時代劇があります。映画化もされている作品です。
なので、その司馬遼太郎が、甲賀や伊賀をどういった風に捕らえているのかを読むのが楽しかったです。
■ 法病理学講義ノート 2007 年度版(青木 康博)(★★☆☆☆)
岩手医科大学医学部法医学教室の「法病理学講義ノート」です。
本ではなくてPDFですが、本扱いでいいと思います。こういうのが無料で配布されているのは素晴らしいです。
ミステリー好きの人は参考になると思います。