映画「失われた週末」のDVDを五月中旬に見ました。
1945年の白黒映画で、監督はビリー・ワイルダー、脚本はチャールズ・ブラケットとビリー・ワイルダー、製作がチャールズ・ブラケットです。
ビリー・ワイルダーは、「サンセット大通り」(1950)や「アパートの鍵貸します」(1960)の監督ですね。どちらも非常に面白い映画でした。
チャールズ・ブラケットは、「サンセット大通り」(1950)でもビリー・ワイルダーと組んでいます。
さて、本作ですが、それなりによくできているとは思いましたが、それほど面白いとは感じませんでした。
いやまあ、水準以上には面白いとは思うのですが。ずば抜けた感じはないです。
この映画は、どういった内容かと言うと、「アルコール中毒の作家が、小説が書けずに、アルコールを求めて週末に町をさまよい歩く」といったものです。
その小説家を更正させようとしている彼の兄と恋人が出てくるのですが、メインは主人公である小説家が酒に溺れ、酒を求めてどんどん落ちていく話です。
その当時見ると、それなりにショッキングな内容だっただろうと思うのですが、今見ると「まあ、アルコール依存症の患者はこんな感じだよな」と思うだけです。
たぶん、吾妻ひでおの「失踪日記」を読む前なら、もう少し何かを感じたかもしれないのですが、さすがにこれを読んだ後では、そんじょそこらのアルコール中毒作家の話ではびくともしません。吾妻ひでおの方はノンフィクションですし。
というわけで、最大の売りが「アルコール中毒の恐ろしさ」だったと思うのですが、そこに多くを感じなかったのでそれほど面白いとは思いませんでした。
以下、粗筋です。(ネタバレはある程度あり。ラストの直前まで書いています)
主人公は売れない作家。彼は、書けないことから逃げ出すために飲み始めた酒のせいで、アルコール中毒になっていた。
彼の兄と恋人は彼を必死に更正させようとするが、主人公はアルコール中毒患者の常で、隙を盗んではお酒を口にしようとする。
ある週末、主人公は兄と恋人と田舎に行くことになっていた。しかし、彼はその小旅行から逃れ、一人町に残った。
彼は酒を求めて町の酒場や酒屋をわたり歩く。しかし、兄の部屋に居候している彼は、手持ちのお金がとぼしかった。彼はなりふり構わず酒を得ようとする。
そんな主人公の恋人は、町に残り、主人公から酒を断とうとしていた。しかし主人公は巧みに彼女から逃れ、酒を飲み続ける。
そして主人公は酒に溺れた末に恐ろしい体験をすることになる。酔って倒れた彼は、アルコール中毒患者の収容施設に入れられてしまったのだ。
そこでは、幻覚を見たり暴れたりする無数のアルコール中毒患者がいた。主人公はその姿に恐怖を覚え、隙を見付けて施設を逃げ出す。
身一つで帰って来た主人公は、兄の部屋で再び酒に溺れる。そして、彼が恐れた施設の人々と同じように幻覚を見るようになってしまった。
主人公は、自分はもう駄目だと思い、死を決意する。だが、そのことを察した主人公の恋人は、必死に彼を止めようとする……。
なんというか、主人公はだいぶヘタレだなと思いました。
繊細というか、心が弱いというか。
それは、アルコール依存症のことではなく、“書けない”という点についてです。
小説家と名乗るなら、血反吐を吐いても書かなければ駄目だろうと思いました。