映画「ブロークバック・マウンテン」のDVDを六月中旬に見ました。
2005年の映画で、監督はアン・リー。脚本はラリー・マクマートリー他です。
よく出来た映画だとは思いますが、私はあまりぐっと来ませんでした。
たぶん、叙情性が高く、話の進展が比較的緩やかなせいだと思います。
盛り上がりどころがあまりなく、淡々と進んでいく感じの話でした。
さて、この映画は話題になりましたが、山で肉体関係になったゲイの話です。
一人は元々ゲイで、もう一人は元々ノンケの男です。
よく出来ているなと思ったのは、この二人の関係が、多元性を持っているからです。
単なるゲイの話として見なくても、男の友情の機微とも見られるし、恋愛の機微とも捕らえることができます。
「男の友情って、こういったところがあるよね」とも思いますし、「恋愛って、こういうところがあるだろうね」とも感じます。
見る人それぞれが自分の人生から、「そういった関係はあるかも」と思わせてくれます。肉体関係を除いてという意味ですが。
そういったことを思わせるという意味で、よく出来た映画だなと思いました。
映画には、二つ印象に残る演技やシーンがありました。
一つは、ゲイ役のジェイク・ギレンホールの目力です。誘っています。「アイ・アム・ゲイ、ウェルカム!」という感じの目付きをしています。
ゲイ・ビームというか、そういったものを目から放っています。「うわー、ゲイだ」と思いました。
もう一つは、元ノンケの男が、彼との関係を奥さんに見られるシーンです。
奥さんの困惑と、「行かないで」と言いたいけど、言ってしまうと今見たことを認めてしまうことになるという混乱が非常に印象的に描かれていました。
ちょっと奥さんがかわいそうでした。
そういった印象的なシーンはいくつかありましたが、全体的にテンポが緩やかなので、あまり私の好みではありませんでした。
もうちょっとサクサクと進む映画の方が好きですので。
まあ、大自然の雄大さや、それと対比させたままならぬ人生を描いているので、こういったテンポになるのは分かるのですが。
私個人の感想としては、そんなところでした。
以下、粗筋です。(中盤ぐらいまで書いています。ネタバレで困るような部分は書いていません)
一人の男が、ブロークバック山にやってきた。一冬の間、羊を放牧しながら山を移動させるという仕事をするためだ。
彼はそこで同じ仕事にやって来た男と生活を共にする。そして肉体関係に至る。彼は後悔する。彼には婚約者がいた。そして冬が終わり、彼らはそれぞれの生活に戻っていった。
主人公は結婚し、娘が生まれる。
平穏な家庭。だが、その生活は一通の手紙で壊れる。ゲイの男からの「山に行こう」という誘い。彼を求めていた主人公は、二人で山に行くことを決める。
ゲイの男が家にやって来た。迎えに行った主人公は、建物の陰で抱き合い口付けを交わす。だが、その様子を妻が窓から見ていた。
「行かないで……」
彼女は夫に恐る恐る頼む。だが彼は山に行った。そして家庭は崩壊し、養育費だけを稼ぎ続ける人生が始まる。
二人は、苦悩の原因が互いの関係にあることを知っていながら離れられなかった。相手のことを忘れられれば楽になることが分かっていながら辛い人生を歩み続ける。
そして、徐々に年を取り、彼らはそれぞれの日常を持ちながら互いの関係を続けていく……。
終盤は泣かせる話でした。
叙情を叙情で終わらせるには、ああいった展開が望ましいと思いました。
私個人は好みではありませんでしたが、映画の出来はよかったです。