映画「シマロン」のDVDを六月下旬に見ました。
1931年の白黒映画で、監督はウェズリー・ラッグルズ、脚本はハワード・エスタブルックです。
オクラホマを舞台として、アメリカ開拓の歴史を、開拓時代(1889年)から現代(1931年。映画の公開年)まで描いた作品です。
なかなか面白かったです。
開拓者というと荒くれ者や無法者を想像しますが、この主人公はそういった枠に納まらない人物です。
一流のガンマンであり冒険家でありながら、開拓地に新聞社を起こし、先住民の権利保護のために戦うというのは、一筋縄ではいきません。
また、娼婦を迫害する裁判に、彼女らの人権保護のために弁護人を務めるなどといった活躍も見せます。
肉体的強者で英雄的存在でありながら、先見の明があり、その能力を虐げられている人々の保護に使う。たとえその時代に理解されなくても、妻に反対されても、自分の価値観を信じて実行する。
主人公は、真の意味での英雄のように振る舞います。
しかし、そうかと思えば一所に留まることができず、家を妻に任せて冒険に飛び出して数年戻ってこなかったりする。
主人公は、そういった二面性も持っています。
この映画を見て思ったのは、アメリカ的神話だなということです。
歴史の浅い国であるアメリカは、神話時代を持たず、そのために国民の中から英雄を求める傾向があるという話を読んだことがあります。
そういった、「自分たちの神話」として評価されるタイプの映画だなと思いました。
過去のアカデミー賞作品の中には、このタイプの「アメリカの神話」を描いた開拓物語がいくつかあります。
この映画は、そういった映画の一本だなと感じました。
映画は、開拓時代の風俗をいろいろと見られてよかったです。
その中でも特に面白かったのは、ゼロからの町の発展の仕方を描いている部分です(映画全体を通して描かれています)。
映画は、まず最初は土地獲得レースから始まります(Wikipediaによるとグレート・ランと呼ばれているらしい)。
□Wikipedia - シマロン (映画)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82... レースの開始とともに馬や馬車で数千人が一斉に走り出し、地面に旗を立ててその場所を獲得します。
そして、テントや小屋が立ち並び、初期の町が出来ていきます。さらに町に鉄道が通ったりして、どんどん大きくなっていきます。
この映画では、その町の成長の様子(アメリカの発展の様子)が、単なる背景ではなく、きちんとした風俗描写の変遷として描かれていました。
こういった“町の発展”の物語は好きなので、そういった面でも楽しめました。
当然、主人公周りの人間ドラマも楽しめました。
以下、粗筋です。(あまりネタバレが問題になるような作品ではないので、普通に書いています。終盤に入ったところまで書いています)
開拓時代のオクラホマ。新たに解放された土地に、多くの入植者たちがやって来た。
ガンマンとして名を馳せていた主人公も、妻と子供とともに新しい町にやって来る。彼はこの町に新聞社を作り、先住民たちの権利保護を推し進めようと考えていた。
無法者との戦いなどを経て、彼はこの町の有力者の一人となる。
町の発展とともに新聞社も大きくなる。だが、新たな土地の解放とともに、主人公は旅に出る。彼は一つの土地に長く留まれる人間ではなかったからだ。
一人残された妻は、主人が帰ってくるまで新聞社を維持する。
時代は移り、油田ブームがやって来た。人々は先住民を追い出し、石油の利益を手に入れようとする。
帰って来た主人公は、新聞上で対抗する論陣を張り、アメリカ各地の新聞から賞賛を浴びる。
その後主人公は再び旅に出る。
時は移り現代になる。新聞社は巨大ビルとなり、年老いた妻は女性議員となっていた。彼女は議員就任のパーティーを開く。そこには、主人公以外の懐かしい顔ぶれが揃った……。
町が成長していくに従い、どんどん環境が変化していくので見所の多い映画でした。
Wikipediaの記事を読むと、アカデミー賞最優秀作品賞を獲得したにもかかわらず大赤字だったそうです(これには、大恐慌の影響だという説もあるそうです)。
出来はよいので、環境要因が大きいのではないかと思いました。