映画「エル・マリアッチ」のDVDを七月上旬に見ました。
1992年の映画で、監督・脚本はロバート・ロドリゲス。
七千ドル(約七十七万円)で、十四日間の撮影日数で撮り上げた作品です。九十分ぐらいの短い作品ですが楽しめました。
DVDには、“ロバート・ロドリゲスの映画講座”的な十分ぐらいの映像が収録されていました。
何かと言うと、どうやって低予算で映画を撮ったかの解説。
「アイデアさえあれば、安い予算でも映画を撮れるよ!」と、細かな解説をしていました。
だいたい要点は以下の感じでした。
1.物を買わない。買い出すと切りがないので、借りたり、作ったり、編集したりして誤魔化す。拳銃はかなりの数が水鉄砲。後は警察の知り合いに借りた。
2.撮り直さない。フィルムは失敗したところだけ短く撮る。あとは編集で誤魔化す。ぶつ切りで繋ぐ、繋ぐ。
3.カメラは一台を徹底的に使いまわす。同じシーンをカメラの位置を変えて撮って、あたかも数台カメラがあったように誤魔化す。
4.音を一緒に録音しない。ミスが多くなるから。声は別に録音して、合成で誤魔化す。ある程度ずれてても割り切る。
ともかく、低予算で乗り切るために、観客を誤魔化す手段を徹底的に使います。
上手いなあと思いました。あと、こういうのは思い切りが大切だなと思いました。取り敢えずやってみて、失敗したら誤魔化すという方針は大切だと思いました。
こういうのを見ると、ビデオカメラを買って短編映画を撮ってみたいなと思います。
さて、映画です。
主人公はエル・マリアッチ(歌手という意味)で、ギターケースを持った殺し屋に間違われて命を狙われます。
そのせいで、敵の組織は、殺し屋が神出鬼没に見えて、主人公は我が身を守るために必死に敵を殺して、殺し屋はよく分からない内に殺した人数が増えていきます。
ある意味、コメディーのシチュエーションです。それを、真面目なアクション映画風に取っています。
こういう巻き込まれ系は、短編的な話にはよく合いますね。
まあ、綱渡りのようなご都合主義的な話なのですが、娯楽として見るアクション映画は、これぐらいが楽しくていいと思います。
面白かったです。
以下、粗筋です。(中盤過ぎぐらいまで書いています。最後の方は端折っています。ベタベタのアクション映画なので、ネタバレは余り気にせず書きます)
刑務所でしのぎをしている一人の悪党がいた。彼は仲間の男と大きな仕事を過去にしたが、裏切りにより、刑務所に入る羽目になった。
今や町を牛耳るボスとなった裏切った男が、刑務所の男に連絡をしてきた。男を完全に始末し、自分の地位を安泰にするためだ。
だがその作戦は失敗に終わった。やって来た手下たちを殺した刑務所の男は、野に出てボスを狙う殺し屋となった。
しばらくして、ボスの町に一人の若い男がやって来た。ギター一本を持ち旅をする彼は、その町の宿に逗留する。
しかし、町では事件が発生していた。ギターケースの中にマシンガンを入れた殺し屋が、ボスの部下を次々に殺していたのだ。
殺し屋に間違われた歌手は、自分の身を守るためにボスの部下を殺して逃げる。
彼は、逃げた末に入り込んだ酒場の女主人に匿われる。そこで歌を歌い日銭を稼ぎながら、自分がなぜ狙われているのかを探る。そして、自分が殺し屋に間違われていることを知る。
歌手は、なんとか誤解を解く方法はないかと考える。しかし、ふとした手違いで殺し屋のギターケースを持つ羽目になる。
歌手はどんどん争いに巻き込まれていく。そして女主人との恋に落ちながら、戦いの中央へと突き進んでいく。
映画には随所にユーモアが入ります。ネタ自体がギャグのような話なので、そういった部分がしっくりきます。
いろいろな撮影上の誤魔化しは、映画を見ている間は気になりませんでした。
後で映像特典を見て、一番騙されたと思ったところは「ギターケースの秘密」です。
ある意味、二つのギターケースが話の核心なのですが、実はちゃんとしたギターケースは一つしかなかったそうです。お金がなかったから用意できなかったとのこと。
一つはちゃんとしたギターケースで、もう一つは張りぼてで、アップのシーンは二つのギターケースを使いまわしたそうです。
「ほら、ここを見て、同じところに傷があるだろう」
なるほど。
やられたなあと思いました。