映画「ハムレット」のDVDを九月上旬に見ました。
1947年の白黒映画で、監督、製作、主演がローレンス・オリヴィエ、脚本がアラン・デント、原作はウィリアム・シェイクスピアです。
153分という長めの作品でしたが、結構楽しめました。
台詞が装飾過剰なところはやはり古さを感じますが、物語のドラマ性はさすがに高かったです。
特に後半から終盤に掛けての、畳み掛けるようなボタンの掛け違いによる不幸の連鎖がよかったです。
個人的には、オフィーリアのシーンが見られたので満足でした。多くの絵画で画題として取り上げられているシーンですが、劇中ではまた見たことがありませんでしたので。
さて、この映画「ハムレット」は、シェイクスピアの有名な劇が原作です。
感想としては、「いろいろな要素がてんこ盛り」という感じでした。
古い劇なので「古典=退屈」というイメージがなんとなくあるのですが、実際に見てみると「当時の大衆劇=エンターテインメント」という印象でした。
謀略、寝取り、復讐、劇中劇、対立、恋人の死、兄の復讐、決闘、毒殺と、次から次にイベントが発生していきます。
確かに前半は台詞が装飾過剰で、一人で悩んでポエムしているシーンが多いのですが、後半はそういったシーンも少なくなり、話がどんどん転がっていきます。
楽しめました。
以下、ネタバレありの感想です。
まあ、古典なのでよいでしょう。
特に上手いなあと思ったのは話の進行です。
序盤、幽霊の父王に復讐をするように言われることで動機付けが起こります。そして、父王を毒殺して王位と妻を奪った叔父と対立します。
しかし、主人公であるハムレットは、その復讐をすぐには実行せず、保身に走ります。
自分が復讐することで罪を問われない状態を作ってから復讐しようと考えます。
そのために、狂人になった振りをし、新王を動揺させる劇を催し、人々に前王毒殺の可能性を示唆します。
しかし、その回りくどさのせいで、母親と対立したり、恋人の父を殺してしまったり、恋人が死んでしまったり、その兄が復讐を誓ったりしてしまいます。
苦悩という言葉がぴったりだと思うのですが、自分の選んだ決断と行動が、全部自分に跳ね返ってくる感じです。
なるほどな、上手くできているなと思いました。
あと、物語的によくできているなと感じたのは、ビジュアル的にインパクトのあるシーンが多い点です。
最初の父王の幽霊の登場からしてそうです。
絵画の題材によくなっているオフィーリアの水死のシーンもそうです。
他にも骸骨を見るシーンとか、ラストの決闘のシーンとか、ビジュアル的に盛り上がるシーンが多いです。
こういった、目で見てインパクトのあるシーンを多数盛り込むことは、基本中の基本だけど、やっぱり有効だなと思いました。
以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)
主人公は青年の王子。彼の父である王が死に、その弟が新王となり、前王の妻を迎えることになった。
ある日、主人公は父の幽霊に出会う。幽霊は、弟が自分を毒殺したことを告げる。彼は弟への復讐を行うことと、妻を傷付けないことを息子に誓わせる。
主人公は復讐をするために行動を開始する。そのために彼は狂人の振りをする。彼は恋人にも冷たくなる。
そして、前王の毒殺シーンを模した劇を興行して、新王に罪を突き付ける。
さらに、母親に新王の真実の姿を突き付ける。その過程で、新王に仕える、恋人の父親を誤って殺してしまう。
新王は、主人公が生きていることに危険を感じ、外国に行かせて殺そうとする。
恋人は不幸な境遇から発狂して死んでしまう。
外国に行く途中に海賊に襲われた主人公は国に戻ってくる。そして恋人の死を知る。
恋人の兄は、父を殺し、妹を発狂の末に殺した主人公を恨む。新王は、その思いを利用して主人公を葬ろうと考え、彼と結託する。
新王は、恋人の兄に、毒付きの剣を使って主人公と決闘するようにさせる。さらに、それが失敗した時のために、毒入りの飲み物を用意しておく。
だが、その計画は失敗した。決闘で傷付けはしたものの、恋人の兄は返り討ちにあってしまう。そして、毒入りの飲み物は、主人公ではなく、その母親が飲んでしまう。
主人公は父母の復讐として新王を倒す。しかし、彼も毒の剣で傷を負っていた。運命に翻弄された主人公は玉座で短い人生を終える。
時間は少々長いですが楽しめました。
「ハムレット」は何度か映画化されているようです。他のは見ていないのですが、これは結構よい方のできなのではないかと思いました。