横浜美術館で行われている特別展「源氏物語の1000年 −あこがれの王朝ロマン−」を、十月中旬に見てきました。
□特別展 源氏物語の1000年-あこがれの王朝ロマン-
http://genji1000.jp/ 私は源氏物語は「あさきゆめみし」でしか確認していません。さすがに原文は読んでいません。
なので、かなりへたれです。
そんな私が、なぜ源氏物語かと言うと、ここ数年、藤原定家を調べているからです。なので、平安時代の文学を支配していた源氏物語に関する展示会を見て来たわけです。
というわけで、「へー、こういう世界観で当時の貴族たちは生きていたのか」と思いながら、いろいろな展示物を見てきました。
さて、この展示会は、メインの目玉があるタイプのものではありません。
なので、同じテーマで、時代の変遷を見るという、時間軸ベースの鑑賞になりました。
まず最初に印象深かったのは、古い絵の緑と青の鮮烈さです。
他の色や、金は、色が褪せているのですが、緑と青だけは鮮やかに残っており、そこだけ別の絵のように強烈でした。
少し前に岩絵の具について調べたことがあったのですが、この緑と青は、たぶん緑青(孔雀石)と群青(藍銅鉱)だと思います。
この二つの鉱物はほとんど組成が同じで、共生する状態がしばしば見られます。(孔雀石:Cu2(CO3)(OH)2、藍銅鉱:Cu3(CO3)2(OH)2)
たぶん、似たような性質なんだろうなと思いました。
□Wikipedia - 緑青
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7...□Wikipedia - 藍銅鉱
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2...□Wikipedia - 孔雀石
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD...
次に印象に残ったのは、扇を屏風に貼った源氏物語扇面散屏風というものが多かったことです。
これは、各話を把握していないので、どれがどれなのか、さっぱり分かりませんでした。
勉強不足です。
紫式部を描いた絵も多くあったのですが、これはちょっと美化し過ぎだろうと思いました。
音声ガイドでは、「紫式部は、宮中で一人だけ年齢が上で、最初は周囲から浮いていた」というエピソードが流れていました。
なので、たぶん中年女性だったのだと思います。だから、いわゆる美人ではなかっただろうと思います。
紫式部は、私のイメージでは「日本最強の大同人女」です。美女というよりは腐女です。貴腐人です。そして孤高の存在「紫式腐」です。BLはないですが。
美人画の対象としては、いかがなものかと思いました。
まあ、脳内補完は大切な「同人要素」ですが。
展示物と解説を聞いていて、なるほどなと持ったのは、江戸時代の源氏物語の絵についての話です。
大名などの婚礼の道具に源氏物語を描いたり、装飾品として源氏物語を描いたりするのですが、これは御用絵師たちの仕事です。
彼らは、大量の源氏物語の絵をストックしていて、その絵図を資料として活用して仕事をこなしていたそうです。
これって、知財ビジネスだよねと思いました。
いつの時代でも、データベースを持っているところは強いなと思いました。
あと、同じ江戸時代でも、出版物の源氏物語も多数展示してありました。
これが、なかなかよさそうでした。
イラストがふんだんに入っていて(毎ページにイラストが入る勢い)、これなら、普通の人でも楽しめるなと思いました。
最後は、現代の源氏物語を題材にした作品で締めでした。瀬戸内寂聴の本に使われている絵が何点か展示されていました。
解説を聞いていると、この展示会は、瀬戸内寂聴が顧問をしているとのことでした。なるほどと思いました。
「パープル、やるな」と思いました。
(パープル:瀬戸内寂聴が86歳でケータイ小説に初チャレンジした時のペンネーム)
あと、どうでもいいですが、人物相関図が凄かったです。錯綜しまくっていて、どこがどう繋がっているのか、さっぱり分かりませんでした。
http://genji1000.jp/about.html「王朝って、こんな感じになるよな」と思いました。