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2009年01月01日 07:10:55
ファーゴ
 映画「ファーゴ」のDVDを十一月中旬に見ました。

 1996年の映画で、監督はジョエル・コーエン、製作はイーサン・コーエン、脚本はこの二人。いわゆるコーエン兄弟の作品です。

 ずっと見ようと思っていたのですが、なぜか近くのTSUTAYAにはなく、TSUTAYAディスカスでのレンタルになりました。

 ブシェミ大活躍で、個人的に満足しました。

 ブシェミは劇中、「変な顔」と何度も言われていました。「どこが変って言うか、全体的に変なんだよ!」と。

 おかげで、警察が捜査しても、人相がいまいちよく分からないという始末。

「さすがブシェミ! それでこそブシェミ!」と思いました。



 映画を見た感想ですが、この二人が最近撮った「ノーカントリー」にけっこう近い感じの映画でした。

 同じ監督と言われて「うん、そうだよね」とすぐに答えられるぐらい、テイストが似ています。

 犯罪自体にはっきりとした目的がなく、迷走しながらラストに向かっていく様子と雰囲気がよく似ていました。

 というわけで、クライム・サスペンスとしては、けっこう緩い感じの映画でした。

 結末がはっきりと描かれているという意味では、「ノーカントリー」よりも、こちらの方がよかったです。



 さて、この映画の面白さというか、話の特徴を一言で言うと「予定外」に尽きると思います。

 当初の計画から(計画自体も杜撰ですが)、ある一人の異分子の存在により、徐々に話が逸れていき、そして過激で血みどろの展開になっていく。

 掛け違えたボタンは戻されることなく、どんどん連鎖的に悪い方に流れていく。

 その、ある意味「悪夢」とでも言うよな、不気味な運命の流れが、気持ち悪くも面白い作品でした。



 あと、この映画の特徴となっているのは、主人公の比重が軽いという点です。

 一応クレジットでは、女性警察署長が主役となっていますが、彼女は途中まで出てきませんし、話の全体を貫く要素としては非常に弱いです。

 キャスト上は、彼女が主役となっていますが、実際には主役の一人といったレベルです。

 映画は、三つの視点で描かれます。

 ちんぴらに妻の擬装誘拐を依頼する自動車ディーラーの男。

 擬装誘拐を請け負ったちんぴら(ブシェミ)。

 そして、事件を追う女性警察署長です。

 話の序盤は、前者二人だけで進みます。女性警察署長は、終盤の事件を締める解決役ですが、立場的には事件の目撃者です。

 異様な事件の顛末を、一つの視点にまとめる役です。

 そして、事件の異様な現場に常に身を置き続けるのが、擬装誘拐を請け負ったちんぴらになります。



 では、なぜ、このちんぴらがそういった現場に身を置くことになるのか。

 その理由は、ちんぴらが相棒として連れてきた、無口で凶暴な男にあります。

 この無口な男が、事態を悪い方へ悪い方へと導いていきます。

 その結果、無用な血が延々と流れていきます。

 そして、依頼者である自動車ディーラーの男は、事態をまったくコントロールできないまま、人生がガラガラと崩壊していきます。

 その気分が悪くなるような悪夢の連鎖が、美しい白銀の景色の中で進んでいきます。

 この、腐った臓物のような黒い状況と、無垢の象徴のような白い景色が、異様なコントラストを持って迫ってきます。

 なるほど、よくできているなと思いました。



 以下、粗筋です。(大きなネタバレはありません。中盤ぐらいまで書いています)

 自動車ディーラーの男は借金を抱えていた。彼は、妻の父親である資産家に金を出させるために、擬装誘拐を計画する。

 彼は、自動車工場に勤める刑務所返りの男に、手頃な人間を紹介してもらう。

 自動車ディーラーの許に来たのは、二人のちんぴらだった。

 一人は口の軽そうな変な顔の男、もう一人は無口で不気味な男だった。

 自動車ディーラーは、二人に擬装誘拐を依頼する。

 二人のちんぴらは、予定通り、自動車ディーラーの妻を誘拐する。しかし、その後に手違いが起こった。

 警察に車を止められた変な顔のちんぴらは、必死に警察を騙そうとする。しかし、その試みが無駄に終わったことが分かった瞬間、無口で不気味な男は銃を抜いてぶっ放した。

 誘拐は、殺人事件に発展する。さらに、その現場をたまたま通り掛かった目撃者の車も、無口な男は追跡する。車は車道を逸れて停車する。男は目撃者を射殺する。

「話が違うじゃないか!」自動車ディーラーは、事態の成り行きに戸惑う。

 さらに彼の計画は狂いだす。娘を誘拐された父親は、事件の主導権を自分が握ろうと考える。自動車ディーラーは、必死に事件をコントロールしようとする。

 その頃、警察が動き出す。臨月が近い女性警察署長は、事件の手掛かりを一つずつ追いながら、犯人の追跡を開始する。

 顔の変なちんぴらは、どうにかして金を得て、擬装誘拐を無事に終わらせようとする。

 だが、無口な男は、無言のまま凶悪さを露にし出し、計画を混沌へと引きずり込んでいく。



 話の成り行き自体は間抜けなのですが、描写は非常にバイオレンスで血みどろでした。

 すかっと爽快というタイプの話ではないのですが、じわじわと面白かったです。
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