映画「つばさ」のDVDを、十一月中旬に見ました。
1927年の白黒無声映画で、監督はウィリアム・A・ウェルマン、脚本はホープ・ローリングです。
この映画で一番有名なのは、第一回アカデミー賞最優秀作品賞を取ったというエピソードです。
何せ古い映画だし、白黒無声映画だしと思って、見る前は相当侮っていました。
見てみると、凄かったです。
何が凄かったかというと、空中戦がです。
「えっ、この時代に、ここまで本気の空中戦が描かれているの?」と驚きました。
何が凄いって、本当に飛行機が空を飛んで、複数対複数で立体的に位置取りをしながら、ガチで戦闘をしています。
模型じゃなくて、本当のプロペラ機で。
撃墜された飛行機は、火を噴きながら雲に突っ込むし、地面に激突する飛行機は、本当に落ちて、砕け散りながら残骸になりますし、飛行船V.S.プロペラ機なんてバトルもある。
この映画では、破壊シーンが、単なる爆発ではなく、きちんと実物を壊しています。
そして、空中戦以外の戦争シーンも、実際に建物や陣地を爆破しながら、きちんと撮影されています。
これは、予想外だったので、びっくりしました。
Wikipediaで確認したのですが、本当に飛行機を飛ばしまくって撮影しているようです。
□Wikipedia - つばさ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81... Wikipediaには「この映画は空中戦映画の先駆的な超大作として映画史上に名高い作品である」と書いてあります。納得です。その通りでした。
本気で驚きました。
さて、物語の方ですが、これもけっこう出来がいいです。
飛行機野郎+青春映画+戦争映画といった感じの話です。
時代背景的に、反戦映画ではありません。戦争の空しさは伝えていますが、そこまで絶望的ではありません。
青春映画の方は、最初反目しあっていた二人が、命懸けの仕事を通して、次第に固い友情で結ばれていくという話です。
そこに、恋愛要素が加わっています。
個人的には、主人公の考え方が幼すぎるのが気になりました。
明らかに、ライバルで親友の男の方が、しっかりとしています。
そこの部分は気になりましたが、全体としては「徹頭徹尾エンターテインメント超大作」といった感じで、面白かったです。
以下、粗筋です。(ネタバレは少しあります。終盤の直前まで書いています)
第一次世界大戦。アメリカに住む若者である主人公は、空軍に志願する。彼には幼馴染の女の子がいたが、都会から来た美人の女性に憧れていた。
その美人の女性と愛し合っている金持ちの青年がいた。金持ちの青年も空軍に志願していて、美人の女性は、彼のために写真を用意していた。
そんなこととは知らない主人公は、写真を見て、自分のために用意してくれたと勘違いする。そして、自分と彼女は恋中なのだと思い込む。
その写真には、金持ちの青年のための愛のメッセージが書いてあった。だが、主人公は気付かずに写真をペンダントに入れてしまう。
空軍で訓練を重ねる二人は、最初反目しあう。しかし、次第に無二の親友となる。
その頃、主人公の幼馴染は、主人公と出会うことを期待して、補給部隊の運転士に志願する。
主人公達は、戦場であるヨーロッパに渡る。そして、その地で戦果を上げる。二人はエースパイロットとして成長していく。
幼馴染の女の子は、主人公を追いかけてヨーロッパに渡る。しかし、その恋はなかなか実らない。
ヨーロッパでの戦いは激戦になってきた。
戦場での友情は長くは続かない。死がその友情を割くこともある。そういった死の予感を、金持ちの青年は抱き始める。
そんな折、主人公は、美人の女性からもらった写真を落とす。金持ちの青年は、主人公がその写真の裏の書き込みに気付かないように、敢えて憎まれ役を買い、破り捨てる。
金持ちの青年は、真実を知った主人公が、戦場で混乱することを避けようとして、そういった行動を取ったのだ。
そして二人は、対立したまま、激戦の地に出撃する。
正直、侮っていたなあというのが正直な感想です。
最後は、けっこうホロリときました。
でもまあ、この映画で一番凄いのは、戦闘シーンだよなと思いました。
よく出来た映画でした。