映画「サンキュー・スモーキング」のDVDを十二月上旬に見ました。
2006年の映画で、監督、脚本はジェイソン・ライトマンです。
この監督は「JUNO/ジュノ」(2007)も監督していますね。まだ未見ですが。
「サンキュー・スモーキング」は、93分という短めの映画ですが、なかなかよくできていて楽しめました。
さて、この映画がどういった映画かと言うと、「“世間の逆風に悩むタバコ会社”の広報マンの、“しゃべくり”を楽しむ社会派コメディー」です。
主人公は、正義とか悪とか関係なく、ともかく「しゃべり」で情報操作することに邁進している人です。能力を振るうのが好きで好きでしょうがなく、その対象は何でもいいという感じの人です。
「タバコが悪なのは知っているよ。でも、それが正しいか悪いかを決めるのは、個人の問題だからね」
前者の言葉は言いませんが、後者の言葉は言います。そして、そういった弁舌で、敵を巧みに煙に巻いていきます。
また、主人公の友人は、銃の広報マン、酒の広報ウーマンと、世間の風当たりの強い人たちばかりです。この仲間たちで、ぐだぐだの会話を繰り広げていきます。
そして主人公は、あまりにも前面に出て顔を売り過ぎたせいで、世間の攻撃対象になっていきます。
この映画、上手いなと思うのは、主人公の子供を上手く使っているところです。
主人公には、離婚した妻の許で育てられている子供がいます。
この子供の疑問に答えたり、子供に自分の仕事を見せたりしながら、問題点や論点を明確にしていきます。
この手の社会派コメディーでは、その問題点をどう観客に伝えるかが重要です。笑うためには、基礎知識が必要ですから。
この映画では、子供を会話相手にすることで、その部分を上手くクリアーしていました。
あとは、嫌われ者業界の仲間たちの愚痴トークで、いろいろと裏事情を語り合うという見せ方をしていました。
しかしまあ、この映画に限ったことではないのですが、少し思ったことがあります。
それは、アメリカの映画の夫婦はたいてい離婚しているなということです。実際にそれだけ多いのを反映しているのでしょうが。
もしくは、ハリウッド界隈では、これぐらい多いのかもしれませんが。
以下、粗筋です。(ネタばれあり。終盤まで書いています)
主人公は逆風に喘ぐタバコ業界の広報マン。彼は業界の顔として、テレビなどの多くのメディアに登場している。
そんな主人公はバツイチの父親でもある。だが子供は妻に取られており、たまにしか会えない。その元妻は医者と結婚しており、主人公と元妻の間は険悪だ。
主人公は、子供によいところを見せようと思っている。そして、自分の仕事のことを伝えようとしている。
彼はそのディベート能力の高さで、タバコ業界のドンにも愛されている。主人公は、タバコ禁止を推進する政治家を敵に回しながら、タバコの広報のためにハリウッドに乗り込んでいく。
主人公は、自分の仕事を見せるために、子供をハリウッドに連れて行く。
主人公には古くから付き合いのある仲間たちがいた。彼は、銃の広報マンや酒の広報ウーマンと定期的に会って親交を深めていた。その伝手で知り合った記者と親密になり、肉体関係を持つ。
だが、その女性記者には企みがあった。睦言から業界の裏事情をすっぱ抜かれた主人公は、窮地に立たされる。そして、彼の庇護者だったタバコ業界のドンも死去して、彼は会社を首になる。
意気消沈する主人公の許に、子供がやってくる。子供は主人公にはっぱを掛ける。
気概を取り戻した主人公は、政府の公聴会に、弁舌で殴り込みを掛けていく。
映画中、「本当にこういう駆け引きがあったら凄いな」と思ったのは、主人公がハリウッドに行った時に会った、仕掛け人の台詞です。
「ブラッド・ピットから、○○ドルならタバコを吸うと返事があった」みたいな台詞です。
……実際にあるのかも知れないですが。まあ、そこはハリウッドですので。
個人的には、ブラッド・ピットはそういったイメージからは遠かったので、ちょっとドキッとしました。