映画「オデッサ・ファイル」のDVDを十二月下旬に見ました。
1974年の作品で、監督はロナルド・ニーム、脚本はケネス・ロス、原作はフレデリック・フォーサイス、主役はジョン・ヴォイトです。
ロナルド・ニームは、「ポセイドン・アドベンチャー」(1972)の監督です。
フレデリック・フォーサイスは、「ジャッカルの日」も書いています。
□Wikipedia - フレデリック・フォーサイス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83... 主役のジョン・ヴォイトは、「帰郷」(1978)での演技が記憶に残っています。
以下、ネタばれ的な部分があります。
一切のネタばれを許さないという人は、読まないで下さい。
さて、本作ですが、面白かったけど、端折りすぎだろうと思う点がいくつかありました。
まず、この映画がどういった話なのかを少し書いておきます。
この映画の舞台は、第二次大戦後、1963年、ケネディ暗殺直後です。
ドイツには、ナチの元SS隊員が別人になって生活するのを支援する秘密組織「オデッサ」が存在します。その、人名リストが「オデッサ・ファイル」です。
主人公はドイツの若い記者で、このオデッサの秘密を暴こうとして暗闘することになります。
映画が始まった直後、小説っぽいモノローグが入ったので、「ああ、原作付きだな」というのはすぐに分かりました。普通に映画を作れば、こういった構成にはならないので。
そして映画が進むのですが、要所々々でご都合主義的に話が進みます。
たぶん、原作では、ここを突破するために「何か苦労しているんだろうな」と思わせる部分で、話が何の障害もなく進みます。
ここらへんは尺の問題なのでしょうが、非常に気になりました。
あと、主人公がかなり目的意識を持って動くのですが、「なぜそんなに一生懸命頑張るのか」終盤まで明かされません。
これは、終盤の直前に、主人公が「当初の目的を達した後でも動き続ける」のを見て、ようやく理由が推察できました。
その「理由」は、ラストに明かされます。伏線はきちんと提示されているのですが、かなり後まで、「主人公の行動に理由がある」ということに気が付きませんでした。
ここらへん、原作では、どういった情報提示にしているのだろうなと気になりました。
主人公自身の動機がサプライズになるような構成なら、小説では主人公視点では書き難いはずですので。
さて、この映画を見ていて、デジャブのように浮かんだのは、マンガの「MONSTAR」です。
第二次大戦時代の情報を現代で追うという部分も似ていますし、ドイツで動き回るのも似ています。
それよりも何よりも、追跡劇部分の雰囲気がよく似ていました。
もしかしたら、「MONSTAR」で参考にしている部分があるのかもしれません。
以下、粗筋です。(中盤までのネタばれあり。中盤の最後まで書いています)
主人公は売れない若手ジャーナリスト。彼はある日、友人である警部補から、一冊の日記をもらう。それは、主人公が発見現場に居合わせた自殺者の老人が持っていたものだった。
その日記には、収容所での過酷な体験が綴ってあった。そして、その収容所の所長が、大戦末期に何をしたのか、そして現在でも潜伏していて、その姿を最近見たことが書いてあった。その収容所の所長は、リガの屠殺人と呼ばれる男だった。
主人公はその日記を見て心を打たれる。そして、元所長を追い詰めることを考える。彼は母親や恋人と話をした後、調査を進めだす。
命を狙われながらの情報収集の末、主人公はある事実を掴む。
ナチの元SS隊員たちによる「オデッサ」という組織が存在し、元SS隊員が別人に成りすますのを支援していることを。そして、彼らがドイツのあらゆる階層に入り込み、敵対的な動きを監視していることを。
謎の一端を突き止めた主人公。しかし彼は人手に落ちる。
主人公を拉致したのはユダヤ人の組織だった。彼らは主人公をスパイに仕立て上げ、オデッサに潜入させようとする。
主人公はその話を受け、オデッサに潜入する。そして、新しい身分を得るために、書類一式を作っている印刷工場に行く。
だが主人公は、恋人に電話をしてしまったせいで正体がばれる。組織は、主人公の元に殺し屋を送る。
主人公は、印刷工場で、これまで身分証を偽造した人間のリスト「オデッサ・ファイル」の存在を知る。
そして、それを入手して主導権を握ろうとする……。
主人公がオデッサに潜入するために変装する場面があるのですが、さすが役者だなと思いました。別の年齢の、別の人にしか見えなくなっていましたので。
あと、このリガの屠殺人の話ですが、「マラソンマン」(1976)も、この作品を下地にしているということでした。