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2009年02月18日 11:33:44
大空港
 映画「大空港」(原題:AIRPORT)のDVDを一月上旬に見ました。

 1970年の映画で、監督・脚本はジョージ・シートン。

 ジョージ・シートンは、「三十四丁目の奇蹟」(1947)の監督・脚本、「喝采」(1954)の監督・製作・脚本です。どちらも、非常に面白かったです。

 この映画「大空港」も、とても面白かったです。



 さて、この映画がよくできているなと思ったのは、物語の出来に負うところが大きいです。

・夫婦の不仲を抱えている空港長

・彼と親密な、航空会社の旅客係責任者の女性

・空港長の姉と結婚しているジェット機の機長

・彼の浮気相手のスチュワーデス

・整備とトラブル解決を担当するベテラン整備士

・密輸の確認を行う老職員

・密航常習犯の老婆

・生命保険を掛けて乗り込む爆弾魔

・その妻

 これらの人物が、空港と飛行機の中で密に絡み合って、未曾有の危機を経験し、そこからの生還を目指します。

 何よりよくできているのが、「大空港」の名に相応しいように「巨大な空港規模で起こっている話」というスケール感を作っていることです。

 この映画を見ながら、方向性は大きく違いますが、人間関係が密に絡み合うという意味で「グランド・ホテル」(1932)を思い出しました。



 この映画の、展開で上手いなと思ったのは、小さな人間関係から物語をスタートさせて、徐々に人間関係の広がりを増やしながら、描く舞台も広げていくといった手法です。

 新しい人物が出てきて、その人間関係が、既存の人間関係に組み込まれた後、その人物が本来の持ち場に行くことで、舞台が広がっていきます。

 例えば、空港長と機長は、昔から反りが合わずに、空港の入り口で顔を合わせたことで喧嘩になります。その後、機長が飛行機に乗り込むことで、舞台に「飛行機」が追加されます。

 こういった感じで、主人公である空港長と人間的な接点が提示された後に、その人間が本来の持ち場に行くことで、舞台が広がり、物語が広がっていきます。

 この手法は上手いなと思いました。

 人間関係が先に提示されているので自然に話が広がっていき、舞台が離れていても感情的連結が強く残って、スムーズに話が進んでいました。



 この「人間関係の繋がりからスケール感を広げていく手法」を強く感じたのは、この数日後に、続編の「エアポート'75」(1974)を見たことによります。

 続編の方は、「エアポート」と言うよりは「エアプレイン」といった感じで、「空港」という舞台の広がりを感じさせない小さなスケールになっていました。

 そのせいで、「大空港」が、いかにスケール感を作るための仕掛けを脚本に施しているのかに気付きました。



 以下、粗筋です。(ネタバレあり。終盤の冒頭まで書いています)

 雪の降る季節、アメリカ中西部を襲った吹雪のため、リンカーン国際空港は大打撃を受けていた。

 除雪をしても追い付かない状態に追い討ちを掛け、滑走路の移動をショートカットしようとしたジェット機が雪にはまって動けなくなってしまった。

 結果、騒音問題で地元住民と揉めている滑走路のみしか使用できないという状態になる。

 空港長である主人公は、ジェット機の撤去をベテラン整備士に命じる。

 主人公には、いくつか抱えている問題があった。派手好きで夫の仕事を理解しない妻、姉の結婚相手である機長との不仲、その機長の女癖の悪さ。

 そんな彼が、唯一心を安らげることができるのは、航空会社の地上勤務の女性社員と話をする時だけだった。

 吹雪の中でも空港は、いつものように人でごった返していた。そして、一人の老女が捕まり、航空会社の女性と空港長の許に連れてこられる。彼女は密航常習犯で、悪びれた様子もなく、その手口を語って聞かせる。

 航空会社の女性は呆れ、彼女を送り返すように部下に命じる。だが、彼女は、その部下の目を逃れて、ローマ行きの飛行機に乗り込む。その飛行機の機長は、空港長の義兄弟だった。

 機長は、その機に乗るスチュワーデスと不倫をしていた。彼女は機長に妊娠したことを告げる。

 その頃、その飛行機に一人の男が乗り込む。彼は職にあぶれ、保険金を妻に残すために、ダイナマイトを鞄に入れていた。

 飛行機は出発する。そして、ローマへと向かう。

 爆弾を持った男は、現在位置を気にし続ける。彼は、飛行機が爆破した後、その証拠が残らないように、海に出るのを待っていた。

 だが、その計画は別の経路で明るみになってしまう。飛行機のチケットの過払い通知を受けた妻が、予定になかった飛行機搭乗に危険を感じて、空港にやって来ていたのだ。

 機長とスチュワーデスは、無線で爆弾男の話を聞く。そして、その直前に連絡を受けていた密航常習犯の老女を密かに呼ぶ。彼女は爆弾魔の隣の席に座っていた。

 爆弾の回収に協力すれば、密航を不問にして、ファーストクラスの席を用意するという提案に、彼女は乗ってくる。

 そして機長とスチュワーデスと老女は協力して爆弾を回収しようとする。しかし、おせっかいな客のせいで、爆弾は男の手に戻ってしまう。

 保険金が下りないことを知らされた男は、再びおせっかいな客のせいで追い詰められ、尾部のトイレの中で自爆する。

 大穴が空いた飛行機は、元の空港に必死で戻ろうとする。しかし、尾部が動かない飛行機は、メイン滑走路にしか降りられない。

 だが、その滑走路には、まだ雪にはまったジェット機が居座ったままだった……。



 映画中、気を利かせたつもりで、機長やスチュワーデスの邪魔をする客が、邪魔で邪魔でしょうがなかったです。

(映画に問題があるのではなく、そういった“いかにもいそうな”客が出てくるというわけです)

 機長やスチュワーデスは、客の知らない情報を元に動いているので、その邪魔をしてはいけないです。

 自分が物事を判断できない状況にいるのに、自分は物事を判断できると勝手に思って行動するのは、周囲の迷惑になります。

 勝手に行動するのではなく、確認を求めて、判断を仰いでから行動をするべきです。

 映画では、そのせいで大惨事が起こりました。

 こういうシーンを見て、客は客の仕事をしないといけないよなと思いました。



 個人的には、ヘレン・ヘイズ演じる密航常習者クォンセット夫人が、おちゃめでよかったです。

 悪びれた様子が一切なく、愛嬌があって、嬉しそうに密航します。

 全員真面目な中、一人だけ笑顔で動いているので、「絶対最後においしいところを持っていくな」と思いました。

 予想通り、ラスト間際まで楽しませてくれました。
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