2008年の読書のまとめ1月分です。
星による評価の基準については前述の通りです。
● 2008年01月(4冊/計4冊)
■01 Twelve Y.O.(福井 晴敏) (
★★★★☆)
「亡国のイージス」の前の話。文章にはまだ荒さの残るものの、福井節とでも言える「男っぷり」は健在。十分堪能できました。特に、敵キャラの男が格好いいです。
話としては、「無茶だろう」と思える大仰な展開なのですが、それを押さえ込んでエンターテインメントにする腕力があります。そして、その腕力の基礎となる知識力もあります。
少し話は飛びますが、この本を読んで思ったのは、福井晴敏はアニメ世代の人なんだなあということです。やたら強い女の子が出てきたり。そこらへんは、そういう世代の人だからだろうなと感じました。
■03 百人一首 (角川ソフィア文庫)(島津 忠夫)(
★★★★☆)
「編者 藤原定家」にターゲットを当てた百人一首本。どういう意図で選んだか、その背景はどうなのか、どういった文献からその経緯が分かるのか、当時その歌はどう解釈されていたのかなどがまとめられています。
興味深かったのは、古今和歌集(905年成立)から当時(1235年「百人一首」の原型の小倉山荘色紙和歌)までで、既に古典の解釈の間違いが生じていることです。まあ、結構時間が経ってますし。
また、時代順に解説しているおかげで、どの時代の和歌がどういったものなのかがよく分かりました。
個人的には、万葉集の頃は素朴過ぎて物足りなく、新古今の頃はパズルのように技巧的になっていて実感が乏しく、古今の頃ぐらいが好みだと思いました。というわけで、今は古今和歌集を読んでいます。
■10 クビキリサイクル—青色サヴァンと戯言遣い(西尾 維新)(★★☆☆☆)
なるほど、こういうのが評価されたのかと思いました。個人的には、特に好みという感じではなかったです。ミステリーが云々というよりは、キャラ小説なんだなというのが感想です。時代背景的に合っているんだろうなと思いました。
■24 顔に降りかかる雨(桐野 夏生)(★★☆☆☆)
なるほど、こういうのが評価されたのかと思いました。作者が女性で、女性視点で、女性主観の小説なのですが、男っぷりのいい女性だよなと思いました。
ミステリーと言っても、謎解きではなくハードボイルド系でした。話自体は短いのですが、引っ張り方が上手く、それで長く持たせ、最後まで引き伸ばしています。
謎も最後までくれば拍子抜けするほど小さいです。でも、それまでの鬱屈を大きく持ってくることで、その小ささを怒りに転化して、加害者にぶつけて上手く霧散させていました。
ずるいなと思ったのは、続編への布石を打っていることです。というか、話的には「これからのシリーズの序章」といった内容でした。