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2009年04月06日 19:59:47
魁!!男塾
 映画「魁!!男塾」のDVDを、二月上旬に見ました。

 2007年の映画で、監督、脚本、主演は坂口拓。原作は宮下あきらの人気マンガです。



 B級です。たぶん、原作を知らない人間には1mmも面白くない映画だと思います。でも、原作が好きな人は堪能できる映画です。

 何よりも、坂口拓の原作への愛を感じました。「魁!!男塾」の世界を、自分ができる範囲と予算の許す範囲内で、可能な限り再現しています。

 マンガの世界を実写の世界に移し変える場合、ジャンプなどの荒唐無稽物は、そもそも無理な部分が多いです(「北斗の拳」しかり、「ドラゴンボール」しかり)。

 なので、そこで頑張っているのは単純に評価できます。

 たぶん、このマンガで一番再現が困難だったのは、主人公クラスのキャラたちの「体」だと思います。マンガのような、あんな体格の人間など存在しませんので。

 特に、日本人で役者をしている人で、あれほど肉体的なボリュームがある人を揃えるのは不可能です。

 そういった「縛り」の中で、可能な限りマンガを実写化しています。

 いや、「富樫源次」役の「照英」だけは、原作そのままの「顔」と「体格」と「雰囲気」でびっくりしました。

 彼だけは別格です。富樫源次本人が出演しているようにしか見えませんでした。

 後、脇のキャラは、体格が無茶ではないので再現度が高かったです。秀麻呂や松尾や田沢や鬼ヒゲは、まんまそのままでした。

 江田島平八は、もう少し体が大きくないといけないのですが、まあ無理だよなと思いました。



 さて、映画は、前述のように「体格」の縛りがかなりあります。

 それと尺の関係もあって削除されたんだろうなと思うキャラがいます。「J」です。

 男塾一号生の中で、Jだけが白人です。白人の体格の人間が、今回の映画の「日本人体型の配役群」の中に紛れ込むと、体格のバランスが破綻します。なのでJは出せなかったのだと思います。二時間という尺の関係もあると思いますが。

 また、その関係で、「驚邏大四凶殺」が「驚邏大三凶殺」になっており、関東豪学連の三面拳からは、Jの対戦相手である「雷電」が削除されています。

 そういった意味で、原作に忠実ではない部分もありますが、そのことにより、原作の雰囲気を壊したと感じることはなく、この映画に関しては適切な処置だったと思いました。



 冒頭で、坂口拓の原作に対する愛を感じると書いたのは、こういった「魁!!男塾」の世界観を可能な限り実写化しようとしているところだけではありません。

 脚本にも愛を感じます。

 この映画は、「魁!!男塾」なので、主人公は剣桃太郎です。しかし、影の主役は「極小路秀麻呂」です。

「魁!!男塾」というマンガは、よく言えば破天荒で、悪く言えば場当たり的で、一貫したストーリーがありません。

 これは週間連載というマンガの形態では問題にならず、逆に積極的に人気を取りに行くための強みともなります。しかし、この形式そのままでは映画にはなりません。

 映画には、ストーリーの主軸が必要です。主軸とは、主人公の成長です。主人公が、映画の体験を通して、最後には内面が変化する。それが映画のストーリーで最も大切な部分です。

 しかし、原作の「魁!!男塾」の主人公である剣桃太郎は変化しない人間です。彼は完璧な人間であるので、基本的に成長しません。そして、そういったキャラは、映画の主人公としては不適格です。

 映画を一本の作品に仕上げるに当たって、「映画を通して成長するキャラ」を用意しなければなりません。



 この映画の影の主役は秀麻呂です。映画は、初期の頃のドタバタ劇から驚邏大四凶殺までを描いています。そして、それらのエピソードを上手く継ぎ接ぎして一本の映画にしています。

 そのエピソードを一本のドラマにまとめているのが「秀麻呂の成長」です。

 最初は駄目駄目で、男塾を嫌い、馬鹿にしていた秀麻呂が、友人たちに助けられ、彼らを助けたいと思い始め、最後は桃太郎たちを応援するために巨大な旗を上げる。そういった成長物語が映画の主軸に据えられています。

 この脚本のまとめ方に、原作に対する愛を感じました。



 アクションについても書きます。

 基本的にCGではなく、リアル・アクションです。アクション監督も坂口拓です。

 このアクションについては、「凄いよい」と思うところは特になく、「おっ、これはありだな」「これは少し足らないな」と、部分によってばらつきがありました。

 全体としては「まあまああり」という感じでした。

 ラストの伊達臣人ととの戦いは、最後はボクシングみたいになっていて、気迫は伝わって来るけど、これはどうだろうと思いましたが、まあ最終的には「予算だろう」という気がしました。

 予算はそんなになさそうですし。でもその割には頑張っているという雰囲気でしたので。



 というわけで映画は、原作を知らない人には1mmも面白くない映画だと思いますが、原作が好きな人には堪能できる映画でした。

 何よりも私は、愛を感じました。



 以下、粗筋です。

 日本中の落ちこぼれが集まる私塾「男塾」。そこでは、時代錯誤の塾長江田島平八の下で、戦前のようなスパルタ教育が続けられていた。

 その男塾に、ヤクザの三代目の秀麻呂が入ることになった。彼の祖父は伝説的なヤクザだったが、代を重ねるごとに斜陽になり、秀麻呂は貧弱な男となっていた。彼の母は、秀麻呂を鍛え上げるために男塾に叩き込む。

 男塾では、一号生たちの入塾式が行われる。今年の新入生も、あくが強い人間が集まっていた。一号生筆頭の物静かな男、剣桃太郎。死んだ兄を追って入塾してきた、男臭さ満点の富樫源次。ヤンチャな野生児の虎丸龍次。

 塾は厳しく、秀麻呂は何度も逃げ出そうとする。その度に、同級生たちは彼のことをかばう。秀麻呂の代わりに油風呂に入る富樫。双生独居房で天井を支え続ける桃太郎。

 そして男塾に敵がやって来た。伊達臣人率いる関東豪学連たちだ。江田島平八塾長は、この混乱を収拾させるために、驚邏大三凶殺を提案する。それは、互いが三人ずつの代表を出し、富士山の様々な場所で戦うというものだった。

 男塾からは、剣桃太郎と富樫源次、虎丸龍次が出ることになる。

 塾生たちは応援に行くが、富士山の麓までしか同行は許されない。その場所には、彼らの生命を表す蝋燭が置いてあった。その蝋燭は一つ、一つ消えていく。

 仲間たちのために何かをしたい。一号生たちは、大鐘音のエールで、必死の応援を行う。その場所に塾長が到着した。彼は巨大な旗を持ってきた。重量300kg。名前は渇魂旗。真の男でなければ上げられない旗。男塾の至宝である。

 誰もがその巨大さと重量にたじろぐ。その中、友のために命を掛けたいと思うようになった秀麻呂が志願する。彼は一号生の中で、最も小柄な体格であった。

 秀麻呂は全身全霊を傾け、富士山で戦い続ける桃太郎たちのために、上がらずの旗を上げようとする……。



 映画のホームページは以下です。

http://www.otokojuku-the-movie.com/

 個人的には大満足の映画なのですが、普通の人には全く薦められない映画だよなと思いました。



 一点だけ、どうでもいいことを書きます。

 つじあやのです。ウクレレガールという名前で出演しています。

 映画中、秀麻呂が落ち込んで商店街を歩くシーンがあるのですが、そのBGMでウクレレが流れていたので「つじあやのっぽいな」と思っていたら、本人が出てきて道端でウクレレを弾いていました。

「おい、BGMではなく、ストリートミュージシャンの演奏扱いかよ!」

「なんで、つじあやの?」と思ったのですが、彼女は原作のファンなのですね。特に富樫源次が好きらしいです。

 彼女は爽やかな人かと思っていたのですが、男臭いキャラが好きな人なんですね。

 ちょっと意外でした。
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