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2009年04月08日 19:59:01
トラ・トラ・トラ!
 映画「トラ・トラ・トラ!」のDVDを二月上旬に見ました。

 1970年の映画で、監督はリチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二。脚本はラリー・フォレスター、菊島隆三、小国英雄です。

 この映画は、クレジットはないですが、初期のころは黒澤明が関わっていて、途中で降板したそうです。そこらへんの経緯はWikipediaに詳しいです。

□Wikipedia - トラ・トラ・トラ!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%A9!



 さて、映画を見た感想ですが、「これはよく出来ている」そして、「アメリカの映画とは思えないほど公平に描かれている」でした。

 この映画は、真珠湾攻撃までの経緯とその結果を描いた戦争物です。

 日米合作とは言え、アメリカ主導で作られているので、作る側がアメリカ賛美に描こうと思えばそれもできたはずです。

 しかし内容は、日米両方の視点から、非常にバランスよく描かれています。それも、どちらが悪いという態度を取っていません。強いて言うならば、「それぞれの上層部が悪い」という立場を取っています。

 アメリカ側では、大統領や現場指揮官にも情報を隠蔽していた情報部の隠蔽体質。そして日本側では、長期の戦争に耐えられないという現場指揮官の意見を無視した上層部の現実認識の欠如。

 そのまま歴史の授業で参考資料として流しても違和感のない映画だという印象を受けました。



 この映画を見て、「こりゃあ、『パール・ハーバー』(2001)が、徹底的に叩かれるわけだ」と思いました。

 これだけきちんとした映画の前例があるのに、一方的で偏見まみれの映画を作れば、映画好きの人は怒るはずです。

「パール・ハーバー」は未見ですが、たぶん「トラ・トラ・トラ!」に負けているだろうと思いました。見てみないと、結論は出ませんが。



 さて、映画は面白かったのですが、それはドラマとしての面白さというよりは、軍事物としての面白さの方だったと思います。

 戦艦に、飛行機に、「いったいどれだけお金が掛かっているんだ?」という物量と質の高さです。実際、日本の戦闘機は可能な限り似せて、飛ぶような形で再現しているようですし。

 戦艦などのシーンも、オープンセットを組んだり、実際の軍艦を使ったりして、可能な限りリアルに作り込んでいるようです。

 映像的にもよく出来ています。

 終盤の真珠湾攻撃シーンなど、手に汗握るシーンが延々と続きます。

 また、真珠湾攻撃に至るまでの間のシーンも、非常に丁寧に作り込まれています。太平洋を渡る艦隊内でのエピソードなども、それぞれが徐々に話を盛り上げてくれます。

 これは、戦争系映画を語る上で、見ておかないといけない映画だなと思いました。



 ドラマ的な部分では、アメリカ側のぐだぐだ感が印象的でした。

 いろんなところで現場から上がってきた意見を上司が無視し、結果として奇襲が成立してしまう。

 それぞれのタイミングで気付いて、適切な報告をしているのに、上層部への伝達過程で握り潰されてしまう。

 いつの時代でも、どの組織でも、よく起こることなのでしょうが、見ながら歯痒さを感じながらハラハラとしました。

 会社組織でも、こういったことは多そうだなと思いました。

 まあ、現場と管理者側では問題意識が違うので、この映画と逆の場合もあるわけですが。上層部が一生懸命しているのに、現場レベルできちんと運用されないこともあるでしょうから。



 以下、粗筋です。

 真珠湾攻撃が始まる前、日本はぎりぎりまでアメリカと交渉を続けていた。

 アメリカの情報機関や基地など、様々な場所で奇襲の兆候が見出され、上層部に報告されていたが、それらの言葉は無視され続けた。

 また日本では、開戦に至った後に、最終的に勝利することは難しいという意見が上申されていた。しかし、楽観的な軍上層部は、それらの言を消極的だと見なし、開戦に踏み切ろうとしていく。

 海軍は、開戦するならば完璧な作戦を遂行すると決め、連日演習を行い、計画を練り上げていく。計画の肝は、真珠湾の基地破壊とともに、戦艦の撃沈だった。

 そして真珠湾攻撃の当日となる。日本軍は徹底的な爆撃を行う。しかしその場には、攻撃目標の戦艦はなかった。

 圧倒的な戦果を得たものの、戦局を有利にするために必要とされていた戦艦撃沈は果たせなかった。そのため、海軍上層部は苦い思いを味わうことになる。



 それにしても、出来が非常によかったです。映画と言うよりは、映像資料として。

 やっぱり、古い名作は押さえておかないといけないなと思いました。
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