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2009年04月30日 14:59:31
古今和歌集 4
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 講談社学術文庫版の「古今和歌集 全訳注」(全四巻、久曾神 昇)の四巻を読みました。ラストの巻です。

 というわけで、前回の三巻の感想の続きです。

 以下、「古今和歌集 全訳注 四巻」の中から、これはと思った歌を抜き出しておきます。あくまで、私の趣味に適った作品ですので、世間の評価とは違うと思います。

 また、漢字付加、歌意、感想は、本を参考にして、私が勝手に付けています。文法的に誤っている部分もあると思います。



 さて、この第四巻を一言で言えば「その他」です。これまでの大きなカテゴリーに入らなかった歌が多く入っています。

 短歌以外にも、長歌、旋頭歌(五七七 五七七)や、俳諧なども入っています。

 そして、墨滅歌(すみけちうた)も掲載されています。古今和歌集は、写しているバージョン違いによって、入っている歌、入っていない歌がありますので。

 巻末には、真名序(漢文による序文)も入っていました。



 というわけで、「古今和歌集 全訳注」に載っていた歌の数は1111でした。

 ちなみに、万葉集は約4500、新古今和歌集は約2000首だそうです。1000首ぐらいでだいたい三ヶ月かかりましたので、万葉集をまともに読むと一年ぐらい掛かる計算になります。さすがにこれは無理です。

 なので、万葉集は、秀歌を抜き出した本を読んで済まそうと思います(これは、読み終えました)。

 新古今は、現在ソフィア文庫の全掲載版を読んでいます。定家について本を読んでいる時に読んだ久保田淳氏の本です。

 それでは、以下、「古今和歌集 全訳注」の4巻から私が選んだ秀歌です。



古今和歌集 巻第十七 雑歌上

●メモ:
 雑多な歌。上巻は嬉しい気持ちを歌う歌。



P17 歌869

「近院右のおほいまうちぎみ

色なしと人や見るらむ昔よりふかき心にそめてしものを」

●漢字付加:
色無しと
人や見るらむ

昔より
深き心に
染めてしものを

●歌意:
 この綾絹は、染めていないので、人は色がないと思って見るだろうか。しかし昔より、私が深い心で染めているので、そう心で見て欲しい。

●感想:
 白絹のままで保存し、季節に応じて染めて使用する。それを白絹のままで送ったことに対する歌。

 白綾に見えるが、深く思い染めているので、心で見て欲しいという歌。

 心の温かさと柔らかさを感じる歌。



古今和歌集 巻第十八 雑歌下

●メモ:
 雑多な歌。下巻は憂う気持ちを歌う歌。



P94 歌943

「よみ人しらず

よのなかにいづらわが身はありてなしあはれとやいはむあなうとやいはむ」

●漢字付加:
世の中に
いづら我が身は
ありて無し

あはれとや言はむ
あな憂とや言はむ

●歌意:
 世の中のどこにわが身はあるのだろうか、あるようで、ないのである。あわれと言おうか、それともああ憂いことであると言おうか。

●感想:
 「あはれ」(ああ感慨深いことであるよ)と、「あな憂」(ああ憂いことであるよ)の対比が楽しい。

 これを読んでしばらく「あなう〜」がマイブームになった。たぶん原因は、「よつばと」の「しまう〜」だと思います。



P106 歌956

「凡河内(おほしかふちの)みつね

世をすてて山にいる人山にても猶(なほ)うき時はいづちゆくらむ」

●漢字付加:
世を捨てて
山に入る人

山にても
猶憂き時は
いづち行くらむ

●歌意:
 世を捨てて山に入る人は、山の中でもなお憂いような時には、山を捨ててどこに行くのであろうか。(どこにも行けないだろう)

●感想:
 素朴な疑問のようで、何か真理を言い当てているような気にさせてくれる歌。

 ネタ的にも面白い。



P154 歌998

「大江千里

あしたづのひとりおくれてなくこゑは雲のうへまできこえつがなむ」

●漢字付加:
葦鶴の
一人遅れて
鳴く声は

雲の上まで
聞こえ継がなむ

●歌意:
 葦の間にただ一羽取り残されて鳴いている鶴の声は、雲の上まで聞こえ伝わっていって欲しいものよ。

●感想:
 出世に取り残されていることを嘆いた歌。

 寂寥感が伝わってくる。



古今和歌集 巻第十九 雑体

●メモ:
 短歌以外の形式の歌。

 長歌、旋頭歌(せどうか)、俳諧歌。

 長歌は、枕詞、掛詞のオンパレード。半分以上がそういった修飾で出来上がっている。

 俳諧については、以前俳句の歴史の本で読んだ。この時期の俳諧は、和歌に使われない言葉が使われているらしい。実際に、砕けた感じの言葉が入っていることが多かった。

 俳諧歌は、数こそ少ないが、古今集の構成(季節、恋愛など)をそのまま模倣して並んでいる。



P189 歌1021

 立春の前日、隣家から風が雪を吹き入れてきたのを見て、隣家に贈った歌。

「清原ふかやぶ

冬ながら春の隣のちかければなかがきよりぞ花はちりける」

●漢字付加:
冬ながら
春の隣の
近ければ

中垣よりぞ
花は散りける

●歌意:
 まだ冬であるが、春である隣が近いので、境の垣根を越えて、花が舞い込んでくることであるよ。

●感想:
 立春の前日だから、春が隣まで来ていると見なして、舞い込む雪を、散り来る花として詠んだ歌。

 こういった近所付き合いはよいなと思う。



P205 歌1041

「よみ人しらず

われを思ふ人をおもはぬむくいにやわが思ふ人の我をおもはぬ」

●漢字付加:
我を思ふ
人を思はぬ
報いにや

我が思ふ人の
我を思はぬ

●歌意:
 私を思っている人のことを思ってやらない報いだろうか。私が思っている人は、私を思ってくれないことであるよ。

●感想:
 まさにその通りという感じ。

 諧謔を感じる歌。



古今和歌集 巻第二十 大歌所御歌

●メモ:
 主に神事や儀式用の歌。地域の歌もある。



P246 歌1085

「よみ人しらず

きみがよは限りもあらじながはまのまさごのかずはよみつくすとも」

●漢字付加:
君が代は
限りもあらじ

長浜の
真砂の数は
読み尽くすとも

●歌意:
 君の御世は限りなく長く続くだろう。長浜の砂の数はたとえ読み尽くすことができようとも。(君の御世は数え尽くすことができないだろう)

●感想:
 非常に素直な祝意の歌。



P254 歌1095

 ひたちうた。

「よみ人しらず

つくばねのこのもかのもにかげはあれど君がみかげにますかげはなし」

●漢字付加:
筑波ねの
このも かのもに
影はあれど

君が御陰に
ます影は無し

●歌意:
 筑波山のあちこちに木陰はあるが、君のおかげに勝るものはない。

●感想:
 古来知られていた歌。

 素直な感謝の心が伝わって来るような気がする。



墨滅歌

●メモ:
 消されているだけあって、これぞという歌はなかった。



 というわけで、「古今和歌集 全訳注 四巻」の中から、これはと思った歌を抜き出しておきました。

 抜き出した歌の数は、二百四十九首中、八首でした。比率的には全巻中最も少なかったです。

 以下、%です。

一巻 17/168 = 10.1%
二巻 24/300 = 8.0%
三巻 28/394 = 7.1%
四巻 8/249 = 3.2%

合計 77/1111 = 6.9%

 だいたい七%ぐらいが、心に残る歌でした。

 私が取り上げた歌を、歌人別に集計したデータは、以下の通りです。

7 在原業平
6 小野小町
4 紀友則
4 凡河内躬恒
3 紀貫之
3 清原深養父
3 藤原敏行
2 壬生忠岑
2 藤原興風
2 近院の右のおほいまうちぎみ
2 大江千里
2 藤原よるかの朝臣

1 文屋康秀(ふんやのやすひで)
1 仁和(にんな)のみかど
1 源宗于(むねゆき)
1 素性法師
1 ならのみかどの御うた
1 僧正遍昭
1 坂上是則
1 よしみねのひでをか
1 しろめ
1 安倍仲麿
1 兼覧王(かねみのおおきみ)
1 僧正聖宝(さうほう)
1 伊勢
1 さかゐのひとさね
1 小野篁 (たかむら)
1 かむつけのみねを

21 よみ人しらず

 業平、小町は恋の歌で稼いでいる感じです。個人的な好みでは、在原業平、紀友則が好きでした。

 それでは、以下、データのまとめです。



■ 各巻の構成

 撰者紀貫之の、定規で測ったような生真面目な性格が反映している。

●巻一 春歌上

 時節(立春・早春)、地儀(春野)、動物(春鳥)、植物(梅花・桜花)

●巻二 春歌下

 植物(桜花・花・藤花・山吹・新緑)、時節(暮春・三月尽)

●巻三 夏歌

 時節(初夏)、植物(花橘)、動物(時鳥[ほととぎす])、時節(晩夏、六月尽)

●巻四 秋歌上

 時節(立秋・初秋・七夕・秋景)、天象(秋月)、動物(秋虫・雁・鹿)、植物(萩・女郎花[おみなえし]・藤袴・花薄[はなすすき]・瞿麦[なでしこ]・秋草)

●巻五 秋歌下

 植物(紅葉・菊花・残葉・落葉・秋田)、時節(暮秋・九月尽)

●巻六 冬歌

 時節(初冬)、天象(氷・雪)、時節(歳暮)

●巻七 雅歌

 祝(祝寿・年賀)、慶賀

●巻八 離別歌

 一般的餞別(本格的離別〔離別前・離別後〕、一時的離別)、男女の惜別

●巻九 羇旅[きりょ]歌

 海路、陸路(遠隔地・近郊)

●巻十 物名

 動物(鳥名・虫名)、植物(木名・草名・果実名)、地儀(地名)、人事(調度・品名・食物名・言辞)

●巻十一〜十五 恋歌

 恋愛の過程に従って五十項に分類。明確に断定しがたい。

●巻十六 哀傷歌

 狭義の哀傷歌(逝去直後・喪中〔喪服者・諒闇[りょうあん]中・喪服者以外〕・没後〔思出・形見〕)、辞世歌

●巻十七 雑歌上

 得意順境の歌。

 順境(恩恵・参詣節会[せちえ]・享楽)、寄月(照る月・隠る月)、老年(老・経年)、寄水(海・河・地・泊[とまり]・滝)、屏風歌

●巻十八 雑歌下

 失意逆境の歌。

 憂世(侘びしき世・厭[いと]わしき世・憂き世)、逆境(沈淪[ちんりん]・解任・離郷・交際疎遠)、閑居(庵住・廃屋・無宿)、述懐(離別・疎遠・詠歌)

●巻十九 雑体

 長歌、旋頭歌、俳諧歌(春・夏・秋〔七夕・女郎花・藤袴〕・冬・恋〔逢わぬ恋・相思の恋・別の恋・心を乱す恋〕・雑〔悲嘆・憂世・老・厭世〕)

●巻二十 (奏覧本では雅)

 神歌、神楽[かぐら]歌、翻物歌、御贄[おおにえ]歌、東[あずま]歌、賀茂祭歌



■ 歌の部類

┌和歌
│├有心
││├短歌
│││├自然題材
││││├〔四季推移〕(春上下・夏・秋上下・冬)
││││├〔詠作動機〕(賀・離別・羇旅)
││││└〔表現技法〕(物名)
│││└人事題材
│││ ├〔事件過程〕(恋一〜五)
│││ └〔詠作動機〕(雑上下)
││├長歌─┐
││└旋頭歌┼(雑体)
│└無心  │
│ └俳諧歌┘
└歌謡(神歌・神楽・翻物・御贄・東歌等)(雅)



■ 年表(和歌集と時代区分)

┌592年…飛鳥時代

└694年
┌710年…奈良時代(84年間)


│759年…万葉集(759年の大伴家持の歌まで、約400年にわたる歌が収められる)


└794年
┌794年…平安時代(約390年間)


│905年…古今和歌集(905年醍醐天皇の命により開始。913年辺りで成立。最初の勅撰和歌集)


└1185〜1192年
┌1185年頃…鎌倉時代(約150年間)

│1205年 新古今和歌集(後鳥羽院の院宣による勅撰和歌集)


└1333年

・万葉集と古今和歌集の間は、約150年。

・古今和歌集と新古今和歌集の間は、約300年。



■ 主な登場人物とその年代

・紀貫之[きのつらゆき](98首)
 (866/872年〜945年)

・凡河内躬恒[おおしこうちのみつね](60首)
 (859年?〜925年)

・紀友則[きのとものり](46首)
 (845年?〜907年)

・壬生忠岑[みぶのただみね](36首)
 (860年?〜920年?)

・素性法師[そせいほうし](35首)
 (?〜910年?)

・在原業平[ありわらのなりひら](30首)
 (825年〜880年)

・伊勢[いせ](22首)
 (872年?〜938年?)

・藤原敏行[ふじわらのとしゆき](19首)
 (?〜907/901年)

・清原深養父[きよはらのふかやぶ](18首)
 (?〜908年内匠允、923年内蔵大允等、最終930年従五位下内蔵大允〜?)

・僧正遍照[そうじょうへんじょう](17首)
 (816年〜890年)

・藤原興風[ふじわらのおきかぜ](17首)
 (?〜900年相模掾、904年上野権大掾、914年上総権大掾〜?)

・小野小町[おののこまち](17首)
 (825年?〜900年?)

・在原元方[ありわらのもとかた](14首)
 (?〜?)(在原業平が祖父に当たる)

・大江千里[おおえのちさと](9首)
 (?〜883年備中大掾、901年、中務少丞、902年兵部少丞、903年兵部大丞〜?)

・平貞文[たいらのさだふみ](9首)
 (872年?〜923年)

・坂上是則[さかのうえのこれのり]
 (?〜930年)

(年代並べ替え)

816年 僧正遍照(生)
825年 在原業平(生)
825年? 小野小町(生)
XXX年? 素性法師(生)(没910年以前)
XXX年? 藤原敏行(生)(没907年以前)
845年? 紀友則(生)
XXX年? 在原元方(生)(在原業平の孫)
859年? 凡河内躬恒(生)
860年? 壬生忠岑(生)
XXX年? 大江千里(生)(任官883年以前)
866年 紀貫之(生)(872年説も)
872年? 伊勢(生)
872年? 平貞文(生)
XXX年? 坂上是則(生)(没930年以前)
XXX年? 清原深養父(生)(任官908年以前)
XXX年? 藤原興風(生)(任官900年以前)
880年 在原業平(没)
890年 僧正遍照(没)
900年? 小野小町(没)
905年 ■古今和歌集■
XXX年? 在原元方(没)
907年 藤原敏行(没)(901年説も)
907年 紀友則(没)
910年? 素性法師(没)
920年? 壬生忠岑(没)
923年 平貞文(没)
925年 凡河内躬恒(没)
XXX年? 大江千里(没)(任官903年以降)
XXX年? 藤原興風(没)(任官914年以降)
XXX年? 清原深養父(没)(任官930年以降)
930年 坂上是則(没)
938年? 伊勢(没)
945年 紀貫之(没)



■ 秀歌まとめ

 特に心に残った歌をまとめてみました。かなりの率で、百人一首に被っています。やはり、百人一首は優秀な歌が集まっているようです。

P78 歌21
「仁和(にんな)のみかど
君がため春ののにいでてわかなつむわが衣手に雪はふりつつ」

P98 歌42
「つらゆき
人はいさ心もしらずふるさとは花ぞ昔のかににほひける」

P109 歌53
「在原業平朝臣(ありはらのなりひらあそん)
世の中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし」

P138 歌84
「きのとものり
久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ」

P50 歌215
「よみ人しらず
おく山に紅葉ふみわけ鳴く鹿のこゑきく時ぞ秋は悲しき」

P110 歌277
「凡河内(おほしかふちの)みつね
心あてにをらばやをらむはつしものおきまどはせる白菊の花」

P125 歌294
「なりひらの朝臣
ちはやぶる神世もきかず竜田河唐紅(からくれない)に水くくるとは」

P249 歌406
「安倍仲麿
あまの原ふりさけ見ればかすがなるみかさの山にいでし月かも」

P256 歌747
「在原業平朝臣
月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」
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