映画「ナイト・ウォッチ」のDVDを三月上旬に見ました。
2004年のロシア映画で、監督・脚本はティムール・ベクマンベトフです。
ティムール・ベクマンベトフは、「ウォンテッド」(2008)の監督です。
映画は、斬新な映像が非常に格好よかったです。
この映画は、ジャンルで言えば「吸血鬼物」です。
映画の解説には、過去から連綿と続く、超能力を持った光の一族と闇の一族の戦いを描いたストーリー……と書いてありますが、まあ端的に言って「吸血鬼物」です。
そして、この映画の最大の魅力は、その「吸血鬼物」の「映像表現」にあります。
クールでスタイリッシュで斬新な映像で、吸血鬼バトルの世界を堪能させてくれます。
このように映像が魅力的になっている最大の要因は、説明をことごとく省いている展開にあると思います。通常の説明的な画面の遷移を無視することで、映像はインパクト抜群に脳に響いてきます。
これは、扱っている題材が「吸血鬼物」のために、「お前ら分かれ」という監督のスタンスが有効に働いているからでしょう。
逆に、その意味が分からない人には「まったく意味不明の映像の羅列」に見えてしまう危険性も持っています。
私はこの映像に非常に興奮しました。吸血鬼物の素養がある人は、完全に「アリ」な作品だと思います。
映像のベクトル的には、「300」(2007)あたりが好きな人もいけると思います。
この映画は、元々ロシアで大ヒットしたファンタジー小説が原作だそうです。なので、ストーリーはこの原作に従っているのだと思います。そして、映画は三部作の一作目を映画化したものになります。
先ほど書きましたが、この物語は、光の一族と闇の一族の戦いを描いてます。
その戦い方や、組織の活動の描き方も面白いです。
映画の舞台は現代なのですが、異常現象の発生をコンピューターの天気図の観察で検知したりします。ハイテクだけど自前でシステムを組む予算がない、というリアル感がよいです。
そうかと思えば、そのものずばりの「呪い」も出てきます。また、吸血鬼を見るために、動物の血をごくごくと飲んだり、そういったオカルト的な描写もふんだんに出てきます。
これが、なかなか楽しいです。
たぶんTRPGが好きな人は、喜びそうな映画だなと思いました。現代物でクトゥルフをやる場合に参考にしたい作品です。
また、丁寧に描写した挙句、ギャグにしか見えなくなっているシーンもあって面白かったです。
映画には“不幸な女”というべき重要な人物が出てくるのですが、その不幸の一つに、「マグカップにボトルが落ちてくる」というものがあります。
このシーンは、「飛行機から落ちたボトルが、ビルに落ちて、換気口を伝わって、部屋に飛び込んで、マグカップに落ちる」という一連のシークエンスからできています。これがもう、壮大なギャグにしか見えません。
こういった部分の映像にも無駄に気合が入っているのが、この映画の魅力の一つだなと思いました。
そういったわけで、映像の格好よさと、周辺ガジェット(オカルト系)の配置の上手さは、かなり秀逸な映画です。
これは受けるわと思いました。実際私も楽しめました。
以下、粗筋です。(大きなネタバレはなし。中盤の真ん中あたりまで書いています)
太古の時代から続く戦い。人間の中に紛れ込んでいる光の一族と、闇の一族。彼らは決定的な勝利を収めることなく、その戦いを現代まで継続させていた。
しかし、予言によるとその均衡は崩れるという。そして、その鍵となる人物が、光と闇、どちらを選ぶかが重要だとされている。
主人公は、かつて普通の青年だった。彼は、自分を捨てた恋人のお腹の子を呪い殺すために、まじない師の家を訪れる。
そこに謎の一団が現れた。彼らは「協定違反だ」と言ってまじない師を葬る。そして、その場にいて、彼らを目撃した主人公は尋ねられる。光の一族と闇の一族のどちらを選ぶかを。
数年後、主人公は光の一族として活動をしていた。彼は覚醒しかかっている少年を探し、光の側に引き入れる役に就く。その途中、彼は一人の女性に目を留める。彼女の頭上では風が渦を巻いていた。
主人公は少年を追い、吸血鬼たちと一戦を交える。そして傷だらけになって帰還する。
頭上に風を抱いた女──大いなる不幸を招く呪いを受けた女。それは予言に記された重要人物の可能性がある。光の一族は彼女について調べ始める。
それとともに、少年の保護も行うことになる。主人公は、少年を吸血鬼から守る役に就く。彼は、梟に姿を変えられていた女性とコンビを組むことになる。
そして少年の家に行った主人公は、その少年がいったい何者なのか知ってしまう。それは、主人公自身の運命に関わることだった……。
敵のボスが格闘ゲームばっかりしているのは「うーん、ちょっと」と思いました。しかし、そのことが終盤できちんと映像に反映されていて、ちょっとびっくりしました。