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2009年07月01日 00:18:00
ロンゲスト・ヤード
 映画「ロンゲスト・ヤード」のDVDを五月中旬に見ました。

 1974年の映画で、原題は「The Mean Machine」。監督はロバート・アルドリッチ、脚本はトレイシー・キーナン・ウィン、主演はバート・レイノルズです。



 映画は、元プロ・フットボール・プレイヤーと、彼が集めた囚人チームが、セミプロの看守チームと戦うといった内容です。

 脚本力がある映画といった感じで面白かったです。

 ちなみに「Mean Machine」は、その囚人チームの名前です。「mean」は、「卑劣な、陰けんな、 ひきょうな」といった意味です。用例として、「mean gene」では「犯罪遺伝子」となります。

 映画では、「mean machine」は、確か「殺人戦車」といった感じで訳していたと思います。



 さて、この映画の感想として「脚本力」があると書きましたが、それは不要な部分がなく、筋肉質な話になっているからそう思いました。

 映画は、主人公を中心にして、その中心軸からずれることなく、話が進んでいきます。

 主人公は、元プロ・フットボール・プレイヤーで、名選手だった過去があります。その能力を買われ、刑務所の所長から「看守チームの指導者になってくれ」と請われます。

 しかし、その前に、看守長に「その話を受けないように」と言われています。

 看守長は、看守チームの指導者で、所長に対抗心を持っています。そのため主人公は指導者の役を断るのですが、そのために不利な立場に追い込まれます。

 看守長は、主人公が言うことを聞いても、聞かなくても、主人公が嫌いです。そして所長は、断られたから主人公を憎むようになります。結果として主人公は、所長と看守長の間で、どちらの顔も立てられない状況に陥ります。

 さらに、所長との話し合いの結果、主人公は、噛ませ犬としての囚人チームを作らなければならないハメになります。

 囚人たちには「勝ち」を目指させながら、その裏では「負け」を所長に約束している。

 そういった中から、主人公の過去が徐々に分かり、さらに、主人公の闘争心に火を付けるような事件が起こっていく。

 そして最後は「人間としての尊厳」のために、死力を尽くして戦うようになる。その話の積み重ね方が非常に無駄がなくてよかったです。

 また、終盤は、「ずっと試合のシーン」なのですが、その中に葛藤や逃避、そして奮起や決意を盛り込んであります。また、序盤の伏線も回収します。この話の進め方が、面白く、そして熱かったです。

 これはよい映画でした。



 以下、少しネタバレ的内容になりますので、ネタバレが嫌いな人は読まないで下さい。

 ラストのネタバレについて書きます。



 映画は、ラストの締め方と見せ方が非常によかったです。

 このラストを見て、「中ボスの配置の仕方は重要だな」と思いました。

 映画としては、所長がラス・ボスで、看守長が中ボスの立場になります。

 この中ボスは、主人公の敵で、主人公を抑圧していると同時に、ラス・ボスに抑圧されていて、そのことを疎ましく思っています。

 そして戦いが終わり、この中ボスは「戦ったものだけが勝ち得ることのできる他者への理解」を主人公に対して持ちます。

 その結果、「高みから命令を出すだけのラス・ボス」を軽蔑し、主人公に対して敬意を持ちます。

 この中ボスの心の移り変わりが鮮やかに描かれており、それが映画のよさを数倍に引き上げていました。

 このシーンがあるおかげで、「尊厳のために戦った映画」だけではなく、「尊厳のために戦った心は、その相手にも響いて伝わる」ということを伝える映画にレベル・アップしています。

 これはよくできているなと思いました。

 そして、そういった中ボスの変化があるために、ラス・ボスの受けるダメージも大きくなり、映画の満足感も飛躍的に増大していました。

 ここらへんは、脚本力だなと思いました。



 以下、粗筋です(ネタバレあり。ラストの直前まで書いています。とはいえ、王道中の王道の話なので、書かなくてもだいたい成り行きは分かるタイプの話なのですが)。

 主人公は、元プロ・フットボール・プレイヤー。彼はかつてスター選手だった。だが今はジゴロとなり落ちぶれていた。

 主人公は女性と喧嘩して、車を持って外に出る。だが、女性はその車を盗んだと警察に通報して、彼は刑務所に入れられる。

 主人公は、ある刑務所に移送される。その刑務所の所長はフットボールが大好きで、看守たちにセミプロのチームを作らせていた。

 そのチームのリーダーである看守長は、主人公に指導者の話を蹴るようにと言う。主人公は、その通り話を蹴るが、所長の怒りを買い、さらに看守長にも嫌がらせを受ける。

 主人公は、早く刑期を全うして外に出ようと思う。しかし、所長と看守長に目を付けられているせいで、そういうわけにもいかない。

 さらに、囚人たちは、主人公に反感を持つ。その理由は、フットボールの能力がありながら、囚人達とフットボールをしないからだ。

 ある日、主人公は所長に呼ばれて、看守チームについて尋ねられる。主人公は、プロには遠く及ばないと答え、確実に勝ちたいなら、敵チームを買収すればいいと言う。主人公は、かつて八百長試合をして、追放された過去を持っていた。

 所長はその案に想を得て、囚人チームを作り、セミプロに登録し、噛ませ犬にする案を考える。そして、主人公にそのチームを組織するようにと言う。主人公は反対するが、所長の匙加減次第で刑期を伸ばせることを告げられ、しぶしぶその役を請けることになる。

 主人公は、負けることを隠して、チームのメンバーを集める。最初は、「所長に取り入る犬だ」と言っていた連中も、次第にフットボールに引かれて集まりだす。

 そして、個性派揃いのチームが出来上がる。その頃には、主人公も、徐々にやる気を出してくる。だが彼は、自分の刑期を延ばす危険は犯したくないと考えていた。

 しかし、チームの一員が、看守長の策略で死に、心に火が付く。徹底した練習と作戦でチームを勝利に導こうとする。

 試合が始まった。序盤、試合は拮抗する。主人公は所長に呼び出され、このままでは一生刑務所から出られないと告げられる。そして、大量得点差で負けるようにと指示される。

 主人公はミスの連続で点数を敵にやる。チームメイトの心は主人公から離れ、彼はベンチに入る。

 その頃からチームは総崩れとなる。そして、怪我人が続出する。主人公はいきり立つ。そして、かつて所長を殴り、三十年間刑務所に入っている老人に尋ねる。「後悔していないか?」「後悔していないさ」

 主人公はフィールドに復帰する。そして、猛進に次ぐ猛進で点を奪取する。

 主人公が完全に復帰したことを知り、仲間たちも波に乗る。大量に開いた点差は、じりじりと縮まっていく。そして、試合終了ラスト七秒となったところで、最後の攻撃が始まった……。



 映画中、一点だけ思ったことがあります。

 やっぱり、アメフトのルールってよく分からない。「アイシールド21」を途中までしか読んでいない私には、点数の入り方が、さっぱり分かりません。

 でも、映画で上手いなと思ったのは、ルールが分からなくても「こいつは、こいつを守っている」「こいつは、こいつの道を切り開いている」と分かる撮り方をしていることです。

 そのおかげで、なんとなく「今何が起こっているのか」そして「みんなで協力しているんだ」と分かるようになっています。

 そのため、ルールが分からなくても興奮できます。

 特に、ラスト七秒のスローモーションは、非常に燃えました。

 いい映画でした。
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