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2009年07月08日 22:43:34
バッドサンタ
 映画「バッドサンタ」のDVDを五月下旬に見ました。

 2003年の映画で、監督はテリー・ツワイゴフ、脚本はグレン・フィカーラとジョン・レクアです。

 91分という時間から分かるように小品です。普段見られない「悪いサンタ」が見られる、ちょっと変わった映画です。

 凄い面白いタイプの映画ではないですが、見れば楽しいというタイプの映画でした。



 さて、この映画で面白いのは「悪いサンタ」という設定だけではありません。実はシナリオとしてよくできているのは、主人公が「サンタ・ビジネスを利用した金庫破り」をしているという点です。

 「三十四丁目の奇跡」(1947)でも描かれていますが、アメリカではデパートでサンタ役の人が座っていて、そのサンタに子供が欲しい物を言うことで、親がプレゼントを聞き出すという商売があります。

 この映画の主人公は、そのサンタ役をすることでデパートに侵入して、金庫破りの道具を少しずつ運び込み、金庫にお金が集まるタイミングを見計らって金庫破りをするという盗みを繰り返しています。

 そうやって稼いだ後は、一年間、遊び暮らします。

 この主人公の「サンタ泥棒」は二人組みで、一人は飲んだくれの金庫破りの男で、もう一人は物凄く背が小さい男です。

 主人公は飲んだくれの方で、酔っ払ってサンタの席に着いて、相棒に怒られます。

 そして、相棒の方が絵図を引く人間で、小さい背を活かして妖精(小人)役をします。

 映画の初っ端は、この「金庫破りの手際」を見せることで、観客の興味を引き、一気に物語に引き込みます。

 ここは、「悪いサンタ」という設定に入る以前に、非常に上手い話運びだなと思いました。



 こうやって、単に「悪いサンタ」というだけでなく、「金庫破り」というある意味「技術職」の部分を見せることで、話を転がしやすくしています。

 当然話には、「悪いサンタがどうこう」というのとは別に「金庫破りの段取りを粛々と進めていく」という進行があり、「金庫破りが成功するかどうか」というサスペンスがあります。

 こういったエンターテインメントとしての主軸があるために、「悪いサンタと少年の心の交流」という部分の中だるみがあまりありません。まあ、91分なので、中だるみも少ないはずなのですが。

 この映画は、とかく「悪いサンタ」という部分に目が行きがちなのですが、「綿密準備型の金庫破り」という部分が基礎にしっかりとあるので、手堅い作りの映画になっています。

 というわけで、突き抜けた面白さはないですが、きっちりと楽しませてくれる映画でした。



 以下、粗筋です(ネタバレあり。ラストの直前まで書いています)。

 主人公は、デパートのサンタ役をしながら、その裏で金庫破りを行う犯罪者。妖精役の相棒とともに、年に一度の稼ぎでここ数年食い続けている。

 だが、その稼業も次第に問題が出てきていた。原因は主人公の飲酒である。年々アルコール依存がひどくなっていく主人公は、サンタの役をきっちりとできないぐらいに胡乱になっていた。

 ある年の冬、主人公はデパートで変な少年のプレゼントの願いを聞く。その太った少年は、頭がおかしいのか、あまりにもおっとりしていて、受け答えがちぐはぐだった。

 主人公は、酔っ払ってデパートに現れたり、店内の控え室でセックスをしたりして、マネージャーの不興を買う。しかし、小心なマネージャーは、主人公の相棒に、逆に言い込められてしまう。

 マネージャーは、警備主任に頼んで、主人公達の調査を依頼する。

 主人公は調査の目を逃れるために、住んでいたモーテルを出る。そして、行く当てもなくさまよっているうちに、デパートで出会った変な少年の家に転がり込むことになる。

 少年の家は、少年以外には、ぼけた老婆しかいなかった。主人公はそこで生活を始める。そして、バーで出会った女を呼んで盛り上がる。

 少年は、いじめっ子たちに、ちょっかいをかけられていたが、気にならないのか、いつもへらへらしていた。そして、主人公のことを本物のサンタだと思っていた。

 主人公は最初、その少年を変な奴だと思っていた。だが、一緒に暮らすうちに、だんだん情が湧いて来る。

 そして、一生懸命作ったプレゼントをもらい、自分もクリスマスの日にはプレゼントを上げようと思うようになる。

 主人公は、自分の行いを悔いたりして、自分の罪を洗いざらいぶちまけた手紙を書いたりする。

 クリスマスの日が次第に近付いてきた。警備主任は、主人公達の素性を嗅ぎ付ける。しかし、マネージャーには告げず、主人公達を脅すネタに使う。

 金庫破り決行の日になった。そこで、主人公にとって予想外のことが起こる。相棒が、彼に銃を向けたのだ。年々使えなくなっていく主人公に見切りを付けた相棒は、今年限りで主人公を捨てることを決めていた。

 絶体絶命のピンチに陥る主人公。しかし、事態はさらに予想外の方向へと転がりだす……。



 一点、映画を見ている最中に、「ここは脚本上ちょっと弱いな」と思った点があります。

 それは、上の粗筋で書いた部分の直後に起こる出来事です。

 一応伏線はあるのですが、その伏線の理由付けが弱いので、「ちょっと足りないな」と感じました。

 伏線のエピソード自体が、「伏線のためのエピソード」になってしまっていたからです。

 そういうわけで、少し満足がいかない部分がありましたが、それなりに楽しい映画でした。



 あと、もう一点。

 主人公とバーで出会って仲がよくなる女性ですが、小さい頃から、サンタとセックスをするのが夢だったそうです。

 凄い夢だなと思いました。
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