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http://www.terminator4.jp/
2009年08月04日 22:38:22
 映画「ターミネーター4」を劇場で、六月下旬に見てきました。

 2009年の映画で、監督はマックG、脚本はジョン・ブランカトー他、主演はクリスチャン・ベイルです。

 「監督のマックGって誰?」と思ったら、「チャーリーズ・エンジェル」(2000)の監督でした。



 見た感想は、映像的にはよく出来ていたけど、脚本が緩すぎるなという感じでした。

 そう思ってプログラムを読むと、クリスチャン・ベイルが凄いことを書いていました。

 最初に見た脚本は駄目で、出る気がなかったけど、「ダークナイト」の監督の弟(共同脚本している)が来て、出来がよくなったので参加したと。

 うわあ、最初の脚本は、どれぐらい駄目だったんだろうと思いました。

 断片的な話を読むと、ジョン・コナーが変な新興宗教の教祖みたいな格好だったり、かなりやばい感じだったようです。

 さすがにそれは「出ちゃまずい」と思ったでしょう、クリスチャン・ベイル。



 ネタバレというか、序盤で明らかになる話なので、以下、今回の「4」の物語としてのギミックを書きます。

 まず、「ターミネーター」シリーズは、タイム・トラベル物で、「歴史を変えるための存在」が「未来からやって来る」というのが物語のベースにあります。

 そして「1」で示された対立構造は、「将来重要人物になる人間を殺すロボット」と、「そのロボットを倒す人間」が、同時に過去に送り込まれて、その「重要人物の母親の命」を争奪するというものです。

 「1」が話としてよく出来ているのは、実は、舞台に出てきていない、「ジョン・コナー」という第三者の計画があって、母親と、救いに来た男性が子供を作るという「もう一つの計画」があることです。

 このせいで、「鶏が先か卵が先か分からない」だけど「ただ一人で世界を背負うことになった女性」に母親がなるという衝撃的なラストシーンで映画は終わります。

 これは、処女懐胎と同じようなパラドックスです。そしてサラは、未来世界のマリアとなります。

 つまり、「ターミネーター」では、パラドックスが起こること自体が、物語上の意味を持っています。パラドックスが起こることで、サラは人類にとって特別な存在になります。

 「ターミネーター」シリーズは、このパラドックスを孕んだまま、その歴史を変えようとし続けるロボットと人間の戦いの話になっています。

 この構造は「2」でも再び示されます。

 それは、ターミネーターの誕生理由です。ターミネーターが誕生した理由は、「1」で壊されたターミネーターの腕を、サイバーダイン社が研究した結果になっています。

 つまり、ここでもパラドックスが発生しています。そしてそのせいで、ターミネーターは、歴史上特別な存在に位置付けられます。

 これは、「1」のリフレインです。

 ここまでが「ターミネーター」というシリーズの物語の前提になります。



 今回の「4」では、「未来から過去」という時間軸のカウンターとして、「過去から未来に送り込まれた人間」が登場します。

 基本のストーリーに対する「裏返し」が行われるわけです。

 これは、企画の種の部分として、それほど間違っていないと思います。

(ただ、この「送り込まれた人物」は、厳密に言うと、最初から意図をもって送り込まれたわけではありません)

 そして、その「送り込まれた人物」マーカス・ライトと、まだ子供のカイル・リース(後に過去に送られる兵士)と、大人のジョン・コナー(後に、カイルを過去に送る人物)の三人が、物語の中で絡みます。

 これもまあ、物語としては、ありな展開だと思います。

 基本の部分は、そこまで悪くない。

 ただ、話の構造が「ターミネーター的」かと言うと、そうではありません。物語に対する、意図的なパラドックスがありませんので。

 しかし、続編物としては、ありだと思います。「裏返し」というのは、これぐらい続いたシリーズではありでしょうから。

 さて、その後です。

 脚本が緩すぎると感じたのは、その後の肉付けの部分です。



 このシリーズでは、ジョン・コナーは凄い人物で、敵のスカイネットは、抵抗できないほどの圧倒的な存在というのが前提にあります。

 映画の前半は、荒廃した世界や、いろいろな種類のターミネーターの登場、その物量に対抗するジョンといった構図で、「ターミネーター的な未来世界」のイメージを喚起しながら、画面を持たせていました。

 これは、映像的に見ごたえがあり、なかなかよかったです。

 しかし後半、そのマジックの種が切れてしまいます。

 以下、完全にネタバレです。



 後半から終盤に掛けて、映画は、ジョン・コナーが単身、スカイネットの基地の一つに侵入するという話になっていきます。

 さすがにそれは無茶だろうと思いました。

 いくらなんでも、単身は無理でしょう。そして、そんな「一人の人間」に侵入されるほど、セキュリティーが甘い敵が、なぜ今まで勝ち続けているんだろうかと疑問に思いました。

 なんというか、世界観に矛盾を感じるような展開に後半なります。

 映像的には、シュワちゃん(T800)が出て、「おおっ」と喜ばしてくれたり、「1」を髣髴とさせる工場での戦闘シーンがあったり、「2」を思い出す、加熱と冷却の攻撃があったりします。

 ここらへんのファン・サービスは嫌いじゃないです。

 でも、ターミネーターの動力が核で、その核を使って、工場を木っ端微塵にするくだりを見て、さすがにそれはないだろうと思いました。

 スカイネット側は、ターミネーターを作るよりも、核爆弾を作る方が効率がよさそうです。

 それに「1」や「2」で描かれていたような、反乱軍側とターミネーターの戦闘が成立しないだろうと思いましたので。



 そういった感じで、なんというか、脊髄反射で突っ込みたくなるような展開が多かったです。

 映画の中盤で、秘密基地の周辺でドンパチをやっているシーンもあって、「それじゃあ、秘密が守れないだろう」と思ったり。

 そんな感じで、世界観に対する練り込み以前の、「こうなったら、こうなる」という部分がすっぽり抜けているような脚本になっていました。

 まあ、SFではなく、娯楽大作として見てくれという意味かもしれませんが。

 前半はアクション大作として楽しめた分、後半での脚本の突っ込みどころが多く、終わった後に微妙な気分になりました。



 以下、粗筋です(ネタバレあり。終盤に入るところまで書いています)。

 死刑囚が、献体を行った。その会社はサイバーダイン社だった。

 それから時が経ち、人類はスカイネットとターミネーターによって滅ぼされようとしていた。

 ジョン・コナーは反乱軍の一員として活躍しながら、人類に希望を語りかけるラジオ放送を行っていた。

 彼の部隊は、ある任務に就く。敵の情報中継地に侵入して、重要情報を盗んでくるという仕事だ。

 だがそこには罠が待ち受けていた。そしてジョン以外は全員死んでしまう。しかし彼は、そこで重要な情報を入手する。

 一つはターミネーターを無力化する秘密コード、もう一つは新型ターミネーターの情報、最後は、スカイネットの人類抹殺リストだ。

 リストによると、スカイネットによる人類抹殺の予定日は近付いていた。

 そして、その抹殺リストの優先順位の筆頭にいるのが、ジョン・コナーとカイル・リースだった。この時、カイルはまだ少年で、歴史の表舞台に顔を表していない。

 ジョンが基地から撤退した後、そこから一人の人間が出てきた。それは、かつての死刑囚だった。彼はなぜ自分がそこにいるのか分からないまま、人がいる場所を目指して歩き出す。

 そして、その元死刑囚のマーカスは、少年時代のカイルと出会う。

 ジョンは、ターミネーターの解除コードを使った大反撃の部隊指揮の役を得る。そして、コードの有用性を確かめながら、カイルの捜索を行う。

 カイルたちがいる地では、これまでとは違う人間狩りが行われていた。殺すことなく、捕獲するために、大型マシーンが投入され、暴れまわっていた。

 マーカスは、カイルを助けようとするが奪われてしまう。カイルを助けるために来たジョンと彼は合流するが、傷ついたマーカスは、ロボットと見なされる。献体に提供した彼の体は、機械との融合体にされていたからだ。

 マーカスは、自分が機械の体になっていることを、これまで知らなかった。

 カイルは、スカイネットの基地に運ばれた。そこは、反乱軍の総攻撃の目標地点でもあった。人々はまだカイルの重要性は認識していない。そして、反乱軍の司令部は、総攻撃の開始を命じる。

 このままでは歴史が変わってしまう。

 ジョンは、半人半ロボットのマーカスと協力し、単身、スカイネットの基地に潜入することを決める……。



 映画の終盤は微妙でしたが、映画のプログラムは、豪華で情報ぎっしりで大変よかったです。

 中でも「ああ、なるほど」と思ったのは、この「ターミネーター」シリーズの中での、シュワちゃんの位置付けです。



 ロボットは大きく作る方が楽なので、スカイネットは当初、大きな兵器で人間を攻撃していた。

 だけど、人間たちがゲリラ戦をやるので、殲滅できなかった。

 だから、ゲリラの中に侵入するための人型ロボットを開発することにした。

 でも、人型ロボットのノウハウがないために、試行錯誤が続いた。

 ようやく、だいぶ小さくなってきて「シュワちゃんぐらいの大きさ」になった。

 「やったー! 人間に見える! ゲリラに潜入できる!」

 そして、シュワちゃんを投入した。



 スカイネットのコンピューターが、案外馬鹿なのが分かりました。「シュワちゃん」は、さすがに規格外だろうと。

 でも「1」で、過去の人たちは、みんな人間だと騙されていたので、スカイネットの技術もたいしたものです。

 反乱軍も、最初のうちは騙されていたということでしたので、シュワちゃんは案外人間っぽいのだと思います。

 スカイネットに足りないのは、日本の萌え技術なのかもしれないと思いました……。



 とりあえず、映像的には見ごたえのある前半でした。

 プログラムを読むと、ロボットの大部分は、CGではなく、特撮だそうです。

 最近の映画は、後でプログラムを読まないと、CGか実写か分からないなと思いました。見ている時には、あまり気にせず見ていますし。



 以下、ラストのネタバレです。

 心臓移植手術は、さすがに野戦病院では無理だろう。それも、専門医でないなら、なおさらだろうと思いました。

 脚本の穴が多すぎて、誰かチェックした方がいいのではと思いました。
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