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2009年08月28日 03:37:07
シンシナティ・キッド
 映画「シンシナティ・キッド」のDVDを、七月上旬に見ました。

 1965年の白黒映画で、監督はノーマン・ジュイソン、脚本はリング・ラードナー・Jr他、主演はスティーヴ・マックィーンです。

 スタッド・ポーカーの頂上決戦を描いた映画です。緊張感溢れるポーカー勝負が熱い映画でした。



 さて、ポーカーの対決についてです。

 マンガでのポーカー勝負を見慣れていると、いかに仕込んで勝つかというのが多いのですが、この映画のポーカーはもっとベタなポーカーです。

 どこらへんがベタかというと、数日ぶっ通しで勝負をやって、たどり着いた山場で勝負を決めるという勝負の方法です。

 マンガでは、尺の関係で、勝負開始から決着までの時間は比較的短いです。

 しかし、実際に「イカサマ」をしない勝負では、勝負どころまで来るのに大変時間が掛かります。

 映画では、このジリジリとした時間進行を緊迫感溢れる描写で進めています。

 これがなかなかよかったです。

 映画は、前半と後半に分かれます。

 前半は、若きポーカーの名手が、「ザ・マン」と呼ばれる全米トップのプレイヤーに勝負を挑むまでを描きます。

 後半は、丸々ポーカーの勝負です。肉体的にも精神的にも限界まで張り詰めた戦いを描いていきます。

 そして、予備知識がないと意外と思える結末。見終わった後の満足感の高い映画でした。



 この映画を見て思い出したのは「ハスラー」(1961)です。

 じりじりと続く勝負を描いているのは、両者とも同じです。こちらの主役はポール・ニューマンです。

 スティーヴ・マックィーンとポール・ニューマンといえば、この当時の二大スターです。

 どちらの映画も面白かったです。

 ポール・ニューマンはどちらかと言うと優しげで、スティーヴ・マックィーンはどちらかというと神経質そうだと、私は思いました。

 何となくの印象ですが、スティーヴ・マックィーンの方が、風雨にさらされたような厳しさを感じましたので。



 以下、粗筋です(ラストの直前まで書いています。最後のネタバレはなしです)。

 主人公は、ニューオーリンに住むスタッド・ポーカーの名手。彼は、既にこの町では敵がおらず、戦いに飢えていた。

 そんなおり、全米のトップ・プレイヤーで「ザ・マン」と呼ばれる老ギャンブラーが町にやってきた。

 主人公は、自分の兄貴分を通して、彼との勝負を持とうとする。

 ザ・マンは、富豪たちとポーカーをして大いに勝つ。そうやって負けた富豪の一人が、主人公の兄貴分に圧力を掛けてくる。「ザ・マンを、いかさまで倒せ」と富豪は言う。

 勝負の準備が整い、戦いが始まる。舞台には、往年の名プレイヤーなど、多くのギャラリーが集まる。

 勝負は序盤、主人公有利で進む。しかし、初日が終わった後、主人公は激怒する。兄貴分が、カードを、自分有利に配っていることに気が付いたからだ。

 主人公は、富豪と対立し、いかさまなしでの真っ向勝負に挑む。

 戦いは膠着状態が続き、時間だけが過ぎていく。そして、二人に大役の気配が現れた時、最後の勝負が始まった。



 予備知識なしで見ていたのですが、ラストは意外な結末でした。そして、それに伴う、最後のシーンが憎い演出でよかったです。



 あと、映画で印象に残ったシーンについて書いておきます。

 それは、映画の冒頭で、隣町まで遠征していた主人公が、線路をわたって逃げるシーンです。

 たぶん、このシーンは、脚本では「線路を渡って、隣町から逃げる」ぐらいしか書いていないと思います。

 しかし実際の映画では、複雑な切り替えが行われる無数の線路を画面いっぱいに映し、その線路の上を、主人公が駆け足で逃げていく様子を、高所から撮影しています。

 これが非常に格好良かったです。

 映画の演出や、ロケーションの選定の重要さをよく教えてくれるシーンだなと思いました。



 さて、映画には特典映像が付いていました。

 特典映像では、プロが、俳優にカードの技を教える様子が紹介されていました。

 これがかなり凄かったです。

 大写しで手を見せているのに、カードの順番を意のままに操っているのが全く分からない。

 誰に何のカードを配るかを完全にコントロールしていました。

 こういう人がディーラーに立つと、素人は本当に翻弄されるんだろうなと思いました。

 物凄い練習を重ねているんだろうなと思い、感心しました。
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