映画「軽蔑」のDVDを、七月上旬に見ました。
1963年の映画で、監督・脚本はジャン=リュック・ゴダールです。
愛されたい男と、その男の行動に幻滅して軽蔑する女を描いた映画です。
映画を見始めた時には、「これは面白くなさそう」と思ったのですが、終盤はぐわんぐわん来ました。ああ、これはぐったりと疲労させられるタイプの映画です。
言葉にはしにくいのですが、確かに「軽蔑」だと思いました。万人受けするかどうかはともかくとして、私は心に響きました。
さて、この映画は、映画製作を題材にした映画です。
主人公は脚本家で、アメリカの富豪に雇われます。富豪は、映画製作を行っていて、ドイツ出身の監督が作ったラッシュが難解すぎるということで、手直しのために主人公を呼んできます。
この、映画監督は、フリッツ・ラングです。本人がこの役で出ています。
フリッツ・ラングは「メトロポリス」(1927年)の監督です。
調べてみると、youtubeにありました。
□youtube - メトロポリス
http://www.youtube.com/view_play_list?p=FD4B66AC0709760F&search_query=metropolis+fritz+lang+1927 「メトロポリス」は既にパブリック・ドメインのようですので、貼っておきます。数日後にこちらも見ました。
フリッツ・ラングは、映画中では、アメリカの富豪に、けっこう酷い扱いを受けています。
でも、主人公はフリッツ・ラングを尊敬しているので、仲は良好でした。
以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。
主人公は脚本家。彼には美しい妻がいる。彼は、アメリカの富豪から仕事の依頼を受ける。その仕事とは、現在製作中の映画の脚本を書き直すことだった。
彼は妻とともに、富豪のいる映画スタジオに行く。監督はフリッツ・ラング。映画は「オデュッセイア」を映画化したものだった。
富豪と監督は、「オデュッセイア」の解釈について対立していた。
主人公は、妻のために購入したマンションのためにお金が必要だった。富豪は美しい妻に興味を寄せ、自宅までのドライブに誘う。
主人公は、妻に富豪の車に同乗するようにと促す。妻はそのことで彼を軽蔑する。
その時から、主人公と妻のすれ違いが始まる。
主人公は仕事を受け、妻とともに、富豪の別荘のあるマルタ島に渡る。
彼は、監督を尊敬しながらも、富豪の解釈に対して、そちらの方が腑に落ちると思う。
主人公は、映画撮影の現場に妻とともに張り付く。富豪がその場所に来て、妻を別荘まで誘う。妻は、主人公に引き止めて欲しいと望むが、主人公は妻を富豪の手に委ねる。
そのことで妻は、主人公に対して幻滅する。
主人公は、別荘で、妻と富豪がキスをしている場面を見る。そして、二人の仲は完全に崩壊する。
妻は、富豪とともに出て行く。主人公は、なぜ彼女が自分から離れていったか最後まで分からない。
劇中劇に当たる「オデュッセイア」の解釈が、そのまま「軽蔑」の男女関係になっていて、上手くできているなと思いました。
主人公は、富豪の「オデュッセイア」に対する解釈に共感していながら、自分がそういった立場になっていることに気が付きません。そして、愛する相手を失ってしまいます。
彼女の「軽蔑」の理由には共感します。自分を愛して、離さないで欲しいのに、男らしく独占せずに他人の手に委ねてしまう。
彼女の「軽蔑」は、そのことに対する失望です。
彼女は、そのことに気付かせようと思い、再度チャンスを主人公に与えます。しかし、主人公は、同じ過ちを再び行います。
確かに、この映画のタイトルは「軽蔑」だよなと思いました。
求められている強さを見せてくれない男に対する軽蔑です。
そのことに気付かない主人公に対して、憐れさと切なさが残る映画でした。