映画「シューテム・アップ」のDVDを、七月上旬に見ました。
2007年の映画で、監督、脚本はマイケル・デイヴィス、主演はクライヴ・オーウェンです。
いやー、面白かった。
こういった爽快アクション系映画は、こうでないといけないです。
何かの合間に、九十分程度の痛快アクション映画を見たくなる時があるのですが、まさにそういった時のための映画という感じでした。
さて、この映画のよさは、三つあります。まずは、その三つを並べて、そのあと、細かく解説します。
・地形利用型のアクションが格好いい。
・設定がお馬鹿だけど、それがジェット・コースター・ムービーの中に入ることでユーモアになっている。
・ともかくハイスピード。弾丸、弾丸、弾丸。そのための設定。
では、以下解説していきます。
● 地形利用型のアクション
この手の九十分系爽快アクション映画の肝は、どれだけ斬新で格好いいアクションを見せられるかにあります。
それが決まれば、この手の映画を見る人の満足を70%以上満たせます。つまり及第点を取れます。
この映画は、始まった直後に、「地形利用」に新しさがあることを見せ付けてくれます。
アクション映画には、それぞれ「テーマ」となるようなアクションのベースがあることが多いです。
たとえばそれは、カンフーだったり、カー・アクションだったり、バイク・アクションだったり、ワイヤー・アクションだったり、ジャンプ・アクションだったりします。
九十分系の映画は、ボリュームが少ないので、「これだ!」というアクションの型が決まれば、それれだけで乗り切れます。
この映画を見た時に、それは「地形利用」だなと思いました。
地形利用と言っても、魔法的に地形を変化させて敵にダメージを与えるといったものではありません。
その場の状況をうまく利用して、アクションの派手なシーンを演出するといったやり方です。
私がまず「おおっ!」と思ったのは、冒頭のアクションで、主人公が車のタンクを撃ち、床に油を流したあとの行動です。
普通のアクション映画だと、この油に引火させて爆発などとやるのですが、この映画では違いました。
主人公は、その油に向かって駆け出します。そして、背中を下にして寝転んで、そのまま滑走しながら敵を殲滅します。
この映画の「地形利用」は、こんな感じです。出てくる場面場面で、他の映画とは違った「一捻りある演出」でバトルを見せてくれます。
これが、よく出来ていました。
まあ、ラスト近くになると、その捻り用と、演出の過剰さがギャグの域まで行ってしまうのですが、それはそれでありだと思いました。
アクションは、文句なしに及第点でした。
● 設定がお馬鹿 それがジェット・コースター・ムービーの中に入ることでユーモアに転化
かなりお馬鹿です。
主人公はニンジンをいつも持ち歩いていて、ことあるごとに食べます。挙句の果てに、ニンジンで敵を倒したりもします。
敵はデブで頭が薄いおっさんです。
ヒロインは、母乳専門の娼婦です。
主人公が敵と交戦を始める理由もギャグみたいです。
主人公は、たまたま妊婦を助けます。そうしたら彼女が産気づいて、子供を産んで、その子供を取り出したせいで追跡劇が始まります。
なぜか敵がその赤ん坊を殺そうと躍起になっているので、主人公は赤ん坊を抱えてひたすら逃げ続けます。
こんなお馬鹿な設定にも関わらず、ジェット・コースター・ムービーで、ひたすら真面目に進んでいくので、ギャグがほどよいユーモアに転化しています。
これはもう、力技といった感じでした。
● ともかくハイスピード 弾丸、弾丸、弾丸 そのための設定
ともかく、ハイテンションで、ハイスピードで、映画は展開していきます。
そしてもう、鼻血が出るほどの弾丸の嵐。
何気に、中盤以降の敵の設定がきちんとこの「弾丸の量」に貢献しています。そして、ともかく撃ちまくる、殺しまくる。そんな感じの映画です。
面白いです。
さて、ここまで書くと、単なるアクションお馬鹿映画のようですが、中盤も半ばを過ぎた辺りから、「アクションをするためだけ」だと思っていた設定が、実はシナリオとしてきちんと「意味のある」設定だったのが分かっていきます。
ここら辺は、上手いなと思いました。
「弾丸やアクションのための設定」と思わせておいて、それをハイスピード・ムービーで納得させておいて、でも「実はちゃんとしたシナリオですから」とあとで明かす。
憎い演出です。
● 味のあるキャラ
主人公(クライヴ・オーウェン)も、かなり突飛な感じの人で、ヒロイン(モニカ・ベルッチ)も変な人なのですが、一番変なのは敵キャラ(ポール・ジアマッティ)です。
ハゲでデブのおっさんは、実は外見に似合わず、元FBIの敏腕プロファイラーです。
なので、主人公たちがどんなに逃げても、些細な情報から逃走場所を見抜いて、部下を引き連れて追跡してきます。
この部下が、弾丸の犠牲になって、映画を彩ってくれるのは、言うまでもありません。凄い勢いで補充されます……。
そして、このおっさんは、何度も倒されるのですが、その都度、防弾チョッキやら何やらで、ターミネーターのように復活して追跡を続けます。
この敵キャラの、外見とのギャップが非常によかったです。
ほとんどギャグというか、完全にギャグなのですが、面白かったです。
● 他の映画との比較
この映画を見ている際に「アドレナリン」(2006)を思い出しました。どちらも、九十分級ムービーです。
終盤で似たようなシーンがあるのですが、個人的には「シューテム・アップ」の方が好きでした。
両方見た人は、どのシーンが似ているのか、言わなくても分かると思います。「アドレナリン」のラストシーンと、かなり被っています。結果は被っていないですが。
● 粗筋
以下、粗筋です。(中盤ぐらいまで書いています。大きなネタバレはありません)
主人公は名前も職業も不明の人物。彼はある日、バス停でバスを待っていた。そこで彼は、逃げる妊婦を目撃する。
よく分からないが、暴漢に追いかけられているらしい。
さすがに捨て置けないと思い、彼は妊婦が逃げ込んだ廃ビルに入り、銃を抜いた男を倒して、妊婦を救う。
しかし、それが延々と続く戦闘の始まりだった。
男には仲間がいたらしく、ビルには次から次に敵がやって来る。主人公は華麗なる射撃テクニックと冷静な行動で対応する。そうこうする内に妊婦が産気づき、主人公は子供を取り上げる。
主人公は、母親と子供を守りながら逃げようとする。しかし、その途中、母親が殺されてしまう。主人公は子供を抱えてビルから脱出した。
翌日、主人公は、子供を公園に捨てようとする。捨て子として、誰かに育ててもらうためだ。
しかしその直後、廃ビルにいた敵のボスが現れ、赤ん坊を銃で殺そうとする。
なぜ、赤ん坊を殺そうとするんだ? 主人公は驚きとともに子供を救って再び逃げる。そして、子供にミルクを与えるために、母乳専門の娼館に行き、馴染みの女に子供を託す。
しかし、そこにも敵がやって来た。主人公は女性と子供を助け、さらに逃亡を続ける。
逃げ回っているだけではその内やられる。主人公は、敵の使っている武器を見て、その出所に辺りを付ける。
そして、今度は敵について調べて、反撃しようとする。それとともに、妊婦がどこからやって来たのかも調べる。その結果、そこに、巨大な陰謀があることに主人公は気付く……。
というわけで、映画は面白かったです。
あと、個人的に興味があったのは、敵が使っていた銃です。指紋認証で、本人しか撃てないようになっていました。
向こうではこういうのが登場して、多くなっているのでしょうか。
銃の知識はあまりないので、分かりませんでした。