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2009年09月27日 23:43:49
武士道残酷物語
 映画「武士道残酷物語」のDVDを七月中旬に見ました。

 1963年の白黒映画で、監督は今井正、脚本は鈴木尚也ほか。原作は南条範夫の「被虐の系譜」。主演は中村錦之助が演じています。

 戦国時代から現代までの、ある一族の、「主君に仕える」という「被虐の歴史」を描いた作品です。

 原作者を見れば分かるとおり、残酷物です。

 この映画は、ベルリン映画祭で金熊賞受賞、そして中村錦之助が、日本のブルーリボン賞の主演男優賞を受賞しています。

 ベルリン映画祭で賞を取るのも頷けます。外国人好みの日本映画……というか、切腹フラグ大爆発という感じの映画でしたので。

 面白かったです。



● 七つの時代、七人の中村錦之助

 さて、この映画は、現代から始まり、一気に江戸時代初期まで戻り、現代まで続く被虐の家系の系譜を描いていきます。

 主君に苦しめられ、でも、マゾヒズム的な忠誠を尽くす、一族の話が延々と続きます。

 その全てに中村錦之助が、被虐の家系の人物として登場します。主演男優賞を取れるタイプの映画だなと思いました。少しずつタイプの違う人物を演じ分けていましたので。

 また、映画は、それぞれの時代の特徴をうまく取り入れた話になっています。それも面白かったです。映画の時間は123分なので、この手のタイプの映画としては、かなりテンポがよかったのも高評価になっています。

 それでは以下、七つの時代と、その概要を掲載しておきます。

 いちおうネタバレ的内容になりますので注意してください。



● 粗筋

 以下、粗筋です。(ネタバレあり。最後まで書いています)

・第〇話(昭和38年)飯倉進

 現代。主人公は建設会社の社員。彼の婚約者が自殺未遂を起こす。主人公は、その原因が、自分に流れる被虐の系譜の血にあると考える。

 彼はその昔、故郷に帰った時に、先祖たちの日記を読んでいた……。

・第一話(慶長15年)飯倉次郎左衛門

 関が原の戦いの後。主人公は武芸者として小大名に拾われる。主人公は島原の役に参加する。彼は、主君の失敗の許しを請うために、幕僚の本陣前で切腹して果てる。

・第二話(寛永15年)飯倉佐治衛門

 寛永時代。主人公は献身的に主君に仕えるが、勘気に触れて祖先の加増分を召し上げられる。彼は主君の死を追って切腹する。しかしそれは、主君に許可を取っての死ではなかった。

・第三話(元禄年間)飯倉久太郎

 元禄時代。江戸に遊学中の主人公は藩主の目にとまる。しかしそれは男色が目的だった。主人公は、意に染まぬ役を果たす。彼は、同じ辛い立場にある主君の側室とでき、そのことで酷系に処される。

・第四話(天明3年)飯倉修蔵

 天明の飢饉の頃。主人公は剣の道に励み、そのことで取り立てらていた。その時期、藩主は民を見ない政治をしていた。そのため、農民が藩を脱け出し、老中田沼意知に直訴をした。

 藩の取り潰しを避けるために、藩では女を差し出すことに決める。主人公の娘が選ばれ、彼女は贈り物にされる。娘の婚約者は絶望にくれる。

 不幸はそれに留まらなかった。今度は、主人公の妻が藩主の目にとまる。だが、彼女は抗い、自害して果てる。

 娘が帰ってきた。藩主は娘を得ようとする。しかし、自分を贈り物にされ、母を殺された娘は抵抗する。娘の元婚約者も同調する。二人は捕まってしまう。

 主人公は、目隠しで敵を倒す「闇の太刀」を振るうことを藩主に求められる。彼は殿中で太刀を振るう。だが、目隠しで斬らされたのは、娘とその婚約者だった。

・第五話(明治時代)飯倉進吾

 東京。主人公は学問に励み、出世を夢見ている。彼には婚約者がいた。主人公はある日、旧藩主を引き取り、自分の住んでいる家に連れてくる。旧藩主は、政治闘争に敗れ、耄碌していた。

 主人公は、かいがいしく旧藩主に仕える。しかし、旧藩主は主人公の婚約者に手を出す。主人公は旧藩主に婚約者を求められ、彼女に旧藩主の相手をするようにと頼み込む。

・第六話(昭和20年)飯倉修

 第二次大戦時。主人公は特攻隊員として、国に仕えて死ぬ。

・第七話(昭和38年)飯倉進

 現代。主人公は建設会社の社員。彼の婚約者は、ライバル会社のタイピスト。彼は上司に、ライバル会社の見積もり情報を入手できないかと言われ、婚約者に盗み出してもらう。

 また、企業情報を盗んだほとぼりが冷めるまで結婚を延期するように上司に言われて、それに従うことを婚約者に話す。

 主人公のことを信じられなくなった婚約者は自殺未遂を起こす。主人公は、今こそ被虐の系譜を断ち切るべきだと考え、上司の言葉を無視して結婚することに決める。



● まとめ

 まさに、「被虐の系譜」という感じで凄かったです。「武士道残酷物語」とは、よく付けたなと思います。

 古い映画でしたが楽しめました。

 「シグルイ」の原作を読んだ時に、かなり違っていた経験があるので、そのうち読んでみると、小説はだいぶあっさりしているかもなと思いました。
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