2009年11月06日 17:04:52
映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」を劇場で11月初旬に見てきました。
2009年の映画で、監督はケニー・オルテガ。出演はマイケル・ジャクソン。
この映画は、マイケル・ジャクソンの幻の公演のリハーサルを収めたドキュメンタリー映画です。また、監督は、今回のステージのクリエイティブ・パートナー(監督)を務めていた人です。
よかったです。いわゆる「映画」ではないので、ストーリーはないのですが、二時間堪能しました。
私がマイケル・ジャクソンのファンだということを差し引いても、よいドキュメンタリーでした。
● ピラミッドの頂点としてのマイケル・ジャクソン
まず、この映画を見始めた瞬間に分かったことを書きます。
当たり前と言えば当たり前なのですが、ステージに参加するスタッフたちは、みんな一流です。その一流のスタッフたちの中にあって、かすむことなく、さらに燦然と、マイケル・ジャクソンは輝いています。一流の中の一流。
一流のダンサーを従えて、その中で輝くマイケル。一流のミュージシャンを従えて、その中で輝くマイケル。
そこには嫉妬も敵意もない。何も言わなくても、全てのスタッフが、マイケル・ジャクソンが一流の中の一流だと知っている。彼が、一流の上に君臨する存在なのだということがよく分かりました。
● ダンサーたちのリスペクト
映画は、ダンサーたちのオーディションから始まります。
この映像を見て分かることは、老若男女取り揃えたミュージシャンとは違い、若い人中心となるダンサー陣は、完全にマイケル・ジャクソンで育った世代の人たちだとうことです。
多くの人が、マイケル・ジャクソンに感動してダンスを始めている。そして、人生の目標をマイケル・ジャクソンにして、修練を積んできている。
つまり、彼らは、マイケル・ジャクソンとともにステージを作るスタッフでありながら、世界で最もマイケル・ジャクソンに心酔しているファンでもあるわけです。マイケルになりたくて、人生を捧げてきた人たちなのですから。
そのリスペクトが圧倒的でした。
マイケル・ジャクソンとともに踊れることに幸福を感じ、自分の出番でなくても終始マイケル・ジャクソンを見て、目に焼き付けようとしている。
そういった人たちが、マイケル・ジャクソンのステージを最高のものにしようと邁進している。その空気感が、映像を通して強く伝わって来ました
● 技術+華
オーディションの時に、選考者が言っていました。
「技術的にトップレベルであるのは当たり前。それに加えて、華が必要」
そこには、主役のマイケルを食ってしまうといった心配は微塵もありません。マイケルの圧倒的な存在感を引き立たせるために、各個人にも圧倒的な存在感を要求する。
凄いなあと思いました。
その「華」の意味がよく分かったのが、ギターの姉ちゃん。上手いだけではなく、華がある。なるほどなあと思いました。
● 妥協を許さない作り込み
マイケル・ジャクソンの細かなこだわりが凄かったです。
音、テンポ、踊り、演出、あらゆるところに、細かく調整を重ねます。
でも、それは一方的な命令ではありません。そこにいるのは、全員一流のスタッフ。「心配ない、すぐにできるよ」と、スタッフを完全に信頼している言葉とともに、ステージを作っていきます。
● マイケル・ジャクソンの気配り
シャイな人というのは、よく聞いていたのですが、気配りの人でもあるんだなというのが、映像から伝わってきました。
スタッフに注文を出す際も、長い注文を出す際は、「怒っているんではないよ」と前置きをしてから、スタッフに話をします。
そして、ファンに対する気配りも行き届いています。
新しいステージ用に、古い曲も新しい音になっているのですが、それでも往年のファンを喜ばせるために、昔の音がきちんと出るように、スタッフに注文をつけている。
本当に、ショー・ビジネスで真摯に活動を続けてきた人なんだなと思いました。
● リハーサルの運動量
かなりの運動量です。マイケルが一番体力を使っているのではないかという感じです。
これだけ踊りながら何度もリハーサルをやったら、相当疲れるんじゃないかと思いました。踊るだけでなく、ちゃんと全部歌っているし。でも、そんな疲れは微塵も感じさせませんでした。
マイケル、体力あるなあと思いました。そして、本当に「急死」だったんだなと思いました。
● あくまでリハーサル 100%ではない凄さ
リハーサル映像の歌とダンスは、相当完成度が高いです。
でも、映画の途中で衝撃の事実が分かります。「本気で歌わせないでよ。まだウォームアップを徐々にしている段階なんだから」と、マイケルが笑顔でスタッフに言います。
「えっ、まだまだ流しでしたか」と驚きました。
● 気になったこと
服です。
1つは、私服なのか、ステージ衣装なのかということです。リハーサルのあいだ、スタッフは全員私服なのですが、マイケルの服は派手です。
ステージ衣装? とも思いましたが、マイケルなら私服の可能性もあるなと思いました。これは気になりました。
もう1つは、スーツの仕立てです。
「王様の仕立て屋」ではないですが、あれだけ激しく踊るマイケルが着ているスーツは、特殊なノウハウで作られているのではないかと思いました。
普通のスーツの稼働範囲ではないと思いますので。あと、踊りを邪魔しないように、作っている必要がありますので。
というわけで、服がだいぶ気になりました。
● ダンサーたちの喪失感
最後に、マイケルの死についてです。
ダンサーたちの喪失感は、凄まじいものだっただろうなと思います。
マイケル・ジャクソンに憧れてダンスを始め、ダンスの世界で勝ち抜き、マイケル・ジャクソンのステージに一緒に立つことができるようになり、そのステージを最高のものにするために、一緒に努力を重ねてきた。
そのステージが、一回も世に出ることなく、直前にマイケルが消えてしまう。
人生の絶頂期に、ハシゴを全て外されるような状態です。それも、自分の成功が霧散したのではなく、自分の憧れの対象が霧散した。
人によっては、一年間ぐらいは仕事ができなくなるぐらいのショックだったのではないかと思いました。
本当に惜しい人をなくしたなと思いました。