映画「恋はデジャ・ブ」のDVDを八月末に見ました。
1993年の映画で、監督はハロルド・ライミス、脚本はハロルド・ライミスとダニー・ルービン、原案はダニー・ルービンです。
原題は「GROUNDHOG DAY」(聖燭節の日)。
主役はビル・マーレイ、ヒロインはアンディ・マクダウェルになります。
● 時間ループ物の演出
この映画は、ジャンルとしては時間ループ物になります。話の重さ的には、短編小説程度の重さになります。
ループ物の作品の場合、多くの描写が繰り返しになるのですが、その繰り返しを、いかに飽きさせないかが、けっこう大変だと思います。
「繰り返し」を演出するフックはいくつも提示できますが、その全てを毎回見せたり、同じテンポで出したりすると、退屈になるからです。
その点は、この映画の作り手も心得ているようで、あの手この手で「繰り返し」が「単調」にならないよう、演出に工夫を凝らしていました。
たとえば、同じシーンを繰り返す場合に、短くカットして繰り返したり、同じ繰り返しでも、時間の切り取る場所を変えたり、同じシーンを繰り返す場合でも、最初は単純な繰り返しだけど、後半は主人公の変化を演出するシーンにしたりとしていました。
そういった演出が多様されているために、落ち着いた雰囲気の映画(いちおうコメディ)のわりには、カット割りが多い印象になっていました。
派手で突き抜けるタイプの映画ではないですが、ちょっと楽しく、割と考えさせられるタイプの映画でした。
● 人間の成長
この映画では、時間のループを利用して、人間の成長を描いています。
主人公は、非常に自分勝手でわがままな人間です。周囲の人間との協調を考えず、自分の将来のことだけ考えています。
そんな彼は、同じ日を繰り返すという時間のループにはまります。彼は、最初は好き放題にします。次に、仕事仲間の女性を落とそうとして、何度も失敗します。やることがなくなった彼は、自殺をしようとしますが、必ず朝には元に戻っています。
そういった状態に陥った主人公は、やがて周囲の人々を救う行動を取り始めます。次の一日が来ないにも関わらず、周囲の人間が幸せになる姿を見ようとし始めます。
毎日繰り返される日々にこそ真実がある。そこに気付いた主人公は、閉じ込められた世界のなかでも、わずかな幸福を見つけることができるようになります。
そして、成長した主人公は、閉じた時間のなかで、次の一歩を踏み出せるようになります。
それほど重い話ではなく、軽いタッチのコメディー映画ですが、なかなか含蓄が深かったです。
大作といった作品ではなく、小品的な作品ですが面白かったです。
● Groundhog Day
聖燭節の日、日本では啓蟄の日です。
この日にマーモット(リス科マーモット属の哺乳類)が冬眠から覚めて穴を出てきて、もし晴れた日で地上に自分の影を見ればさらに六週間の冬ごもりに戻り、春の到来が遅れるという言い伝えがあるそうです。
□Yahoo!辞書 - Groundhog Day
http://dic.yahoo.co.jp/...0 なかなか上手い日を、設定に持ってきたなと思いました。
春の到来まで待たされる日というのを、ループが起こる日として選んでいます。
こういった設定は、その国の文化に根ざすので、邦題が「恋はデジャ・ブ」となるのは、仕方がないかなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。
主人公は天気予報の男性ニュース・キャスター。彼は地方局で働いているが、全国区に進出しようとしている。彼は傲慢な男で、周囲からは嫌われていた。
ある日、彼は、泊りがけで、ある村に取材に行くことになる。それは、聖燭節で春の訪れを占うモグラの取材だった。一緒に行ったのは、女性プロデューサーと、男性クルーである。
主人公は、その仕事をくだらないものだと思う。
その取材の翌日、主人公は驚くべき出来事に出会う。一晩過ぎたのに、その日も聖燭節だった。
それ以降、主人公には同じ日が訪れる。そこでどんなことをしようとも、必ず翌日には、元の日に戻るのだった。
その繰り返しのなか、最初は好き放題に遊んでいた主人公は、女性プロデューサーを口説こうと考え始める。何度も失敗しながら、彼女の好みを研究して、詰め将棋のように手を進めていく。しかし、彼女を口説くことはできなかった。
主人公は、毎日の繰り返しに絶望して自殺しようとする。しかし、その試みも失敗に終わる。
そして、生きる気力をなくして、毎日を繰り返す主人公は、その村の中に、不幸に遭ったり、命を落としたりする人がいることに気付く。主人公は、繰り返しの毎日のなかで、その人々を何度も何度も助け始める。
そうするうちに主人公は、毎日の繰り返しのなかで、ささやかな幸せに気付き始める。そうして内面が変化した主人公に、女性プロデューサーは心を寄せてくれる。
主人公は、女性プロデューサーと結ばれる。そして夜が明けた。日は動いていた。主人公は、日々の幸せを実感しながら、次の日へと踏み出していく。
● 役者
ビル・マーレイは、やる気のなさそうな演技が上手いですね。世を拗ねて馬鹿にしたようなキャラがよく似合っていました。
あと、ヒロインのアンディ・マクダウェルですが、凄い美人というわけではないけど、徐々に引かれていくというタイプがはまっていました。
こういう設定の映画だと、「見るからに物凄い美人」というのは、設定に合わないので、こういった女性がちょうどよいと思います。
というわけで、映画は小品ながら楽しめました。