映画「デイ・ウォッチ」のDVDを、九月下旬に見ました。
2006年のロシア映画で、監督・脚本はティムール・ベクマンベトフです。
この映画は、「ナイト・ウォッチ」(2004年)の続編です。この監督は、「ウォンテッド」(2008年)も撮っています。
「ナイト・ウォッチ」よりは落ち着いた感じで、この映画も面白かったです。
● 映像表現
相変わらず格好よいです。とはいえ、「ナイト・ウォッチ」ほど斬新ではありません。「ナイト・ウォッチ」は過剰過ぎる感じでしたので。
印象としては、「ナイト・ウォッチ」は若さの勢い的な感じで、「デイ・ウォッチ」は、効果を自覚しての映像構成という感じでした。
そのため、「デイ・ウォッチ」の方が、大人の印象の映画になっていました。
● 光と闇の戦い→親としての葛藤
前作の「ナイト・ウォッチ」は、「光と闇の戦い」が話の中心でした。そして、その話が進む中で、「親としての葛藤」が出てくるという進行でした。
今回の「デイ・ウォッチ」では、「光と闇の戦い」は、だいぶ脇に追いやられていました。確かにその対立はあるのですが、主人公の「親としての葛藤」、そして脇役の葛藤、そういったものが、話の中心になっていました。
そのため、「光と闇」というよりは、「立場の違う個人」という見せ方で、「光だからどう」とか「闇だからどう」とかいう部分は、あまりありませんでした。
そのため、前作との関わりは、それほど強くないという印象を持ちました。
● 運命のチョーク
さて、「光と闇の戦い」が、物語の前面から後退した結果、代わりに付け加えられたものがあります。それが「運命のチョーク」です。
このマジック・アイテムは、「光と闇の戦い」には直結しないものです。
でも、「過去の失敗に対する悩み」に対して、明確な答えを出すということには、有効に稼働します。
本作だけで考えると、この設定はありだなと思いましたが、前作との絡みで考えると、いくらなんでも強引だよなと思いました。
まあ、前回の話の続きが中心となり、映画が途中で中だるみするよりは、よいのかもしれませんが。
あと、このアイテムによる終盤の展開は、けっこう好みでした。
● 大破壊スペクタクル
映像表現で、触れていなかったので、ここで触れておきます。
終盤に出てくる、大破壊スペクタクルは、なかなかよかったです。観覧車が、ゴロンゴロンと転がって街を破壊していく辺りとか好きでした。
「街破壊映像」としては、かなり好きな部類に入りました。
● トランス・セクシャル物
さて、この映画を語る上で、外せないのが「トランス・セクシャル」だと思います。
現実世界のトランス・セクシャルではなく、漫画などの創作物のなかで登場するトランス・セクシャルです。
この映画では、主人公の男性と、脇役の女性の「中身」が入れ替わります。そして、主人公(女の体)とヒロインの、濡れ場が描かれます。
その濡れ場を含め、女の体の中に入った主人公の演技(女優の演技)が、なかなかよかったです。
映画には映像特典として、スタッフや俳優のインタビューが収録されていました。その中で、女優がその時のことを語っていました。
その映像で、男性と女性の動きの違いとして、「物の食べ方」の話をしていたのが、面白かったです。
「男性は、食べ物を口に放り込む」と指摘されて、そのように演技をした、と言っていました。確かに、男性らしく見えました。
TS物を語る上で、覚えておいた方がよい作品の一つだと思いますので、記憶しておくことにします。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。
世界には、光と闇に属する人間たちがいた。彼らは対立していたが、協定を結んで、全面対決にならないようにしていた。
主人公は光に属す人間である。しかし、彼の息子は、主人公の決断のせいで、闇側に取り込まれていた。
主人公は、光の組織で、後輩の女性の指導に当たる。闇側の人間を調べていた二人は、たまたま主人公の息子と遭遇してしまう。
主人子の息子は、闇の側の指導者に、直接養われていた。だが、個人行動を取り、その証拠が、光側に押さえられてしまった。
闇の側の人間は、主人公に、その証拠を奪還することを頼む。主人公は、最初断るが、証拠を盗み出す。そのことが遠因となり、主人公は協定違反のレッテルを貼られ、追われる羽目になる。
その頃、主人公の息子が、闇の側として覚醒する準備が進められていた。また、主人公と闇の側の人間は、人の運命を変える、不思議なチョークを奪い合うことにもなる。
主人公は、息子の覚醒を妨げようとして、闇の組織のパーティーに乗り込む。だが、覚醒を妨げることに失敗する。
主人公は、運命のチョークを奪取して、自分の人生を修正して、現在を変えようと試みる。
粗筋は、枝葉を切り落とすと、「何のことやら」という感じの話になっていますが、実際はもっといろんな要素が入っていました。
というわけで、131分と、少し長いですが、面白かったです。
あと、映画が終わったあと、「これで話、完結でいいんじゃないの?」と思いました。いちおう、三部作らしいですが。