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2010年01月08日 17:21:36
駅馬車
 映画「駅馬車」のDVDを十月下旬に見ました。

 1939年の映画で、監督はジョン・フォード、脚本はダドリー・ニコルズ、主演はジョン・ウェインです。

 西部劇の傑作と名高い本作ですが、傑作の名に相応しいものでした。物凄く密度が濃く、お話が盛り込まれていて、徹底的にエンターテインメントでした。

 面白かったです。また見たくなる作品でした。

 99分という短い時間に、人生の全て(誕生から死)までを内包した傑作娯楽映画でした。



● 乗り合い馬車というフォーマット

 このフォーマットは、本当に便利だなと思いました。異種の人の出会いがあり、勝手に移動して、移動先で次々と危機が起こり、時間が経つとクライマックス・シーンに到着する。本当に便利です。

 この映画では、冒頭で一つの乗り合い馬車に、複数の人間が乗り込みます。乗り込むのは、アル中の医者、娼婦、酒商人、銀行頭取、出産間近の大佐夫人、優男の賭博師、保安官、御者、それにお尋ね者のガンマンであるリンゴ・キッドです。

 これらの中には、初見の人もいれば、知り合いもいます。そんな彼らは、アパッチ族が出没して荒らしまくっていると言われている場所に出発します。

 もうこれで、何かが起こらないはずがありません。当然ラストには襲撃による大銃撃戦が予想されます。さらに、キッドは行く先に復讐の相手がいます。決闘も予想されます。

 映画では、この馬車が移動しながら、恋愛などによる新たな人間関係が構築されたり、過去の人生が明かされたりしながら、話が進んでいきます。

 そして徐々に襲撃への緊張感が高まっていき、キッドの恋が発展していき、大佐夫人は子供を出産します。

 もう、人生のありとあらゆることが起こるといった感じです。

 短い時間の中に、非常に濃く話をぶち込むには、こういった枠組みが有効だなと思いました。



● スタートは多段ロケット

 では、この乗り合い馬車が、なぜそんな危険な場所に行くのか。全員が、こんな危ない場所になぜ向かうのか。

 映画は、その問題を、多段ロケット式のスタートで解決しています。

 どういった部分が、多段ロケットなのか? それは、最初は軍隊の護衛がついていることです。乗り合い馬車は騎兵隊と一緒に出発するので、その間安全です。でも、軍隊が他の場所に向かうことで、一段目のロケットから切り離されてしまいます。

 そうやって、「安全」の保障がなくなって危機が高まっていく。でも、それがじわじわと来るので、「行くか留まるか戻るか」の決断を馬車の乗客たちの間で何度も話し合い、そして行くことが決断されていきます。

 これは、上手い仕掛けだと思いました。初めから危険だと分かっていれば出発しないけど、徐々に危険が高まっていけば「まだ行ける」「もう引き返せない」と進み続けることになります。

 さらに、登場人物たちの決断が何度も入るために、苦悩や葛藤を描け、その決断の背後にある人間の背景を描けます。これは上手い。

 おかげで、話が単調ではなく、節目節目で緊迫感を持った濃い話になっています。



 この「軍隊と別れる」という多段ロケットの仕組みは、軍隊と一緒に行動している間は気付きませんでした。

 最初は、アパッチから襲撃された時のやられ役、アパッチ側の実力を示すための試し割り要員だと思っていました。何せ、一緒にいるのに、その人間は一切描かれていなかったので。

 でも実際は、試し割り要員ではなく、一番強力な一段目のロケットでした。

 まだまだ、話を見る目がないなと思いました。



● どこを切り取っても見所いっぱい

 映画は、非常に濃いです。どこを切り取っても見所いっぱいのシーンになっています。

 でも、実は銃撃戦は少ないです。映画の終盤までは、人間の絡みでシーンを作り上げていきます。

 多くの場合は、馬車の乗客間の対立や和解でシーンを組み立てています。単なるドンパチではなく、人生を切り取る話になっています。

 特に進行として上手いなと思ったのは、集合シーンと個別シーンの使い分けです。集合シーンは、基本的に対立の場です。意見が違う人間が多数いますので。

 そこで対立を描いたあと、ピックアップした少数キャラの個別シーンで、過去の体験や自分の考えを語らせます。

 そこでキャラが立体的になり、次の集合シーンでの発言の重みが変わります。

 このフォーマットは参考になるなと思いました。そして、この仕掛けのおかげで、どこを切り取っても見所いっぱいの会話シーンになっていました。



● 二つのクライマックス

 この映画には二つのクライマックス・シーンがあります。

 一つはアパッチ族による襲撃です。もう一つは、キッドの決闘です。

 この二つは、最後まで「あるのかないのか」というサスペンスで引っ張られます。

 特に後者は「本当にあるのかないのか」最後まで引っ張ります。なくても話が成立するというところまでサスペンスを盛り上げます。

 キッドは、馬車で娼婦に恋をします。しかし、娼婦は自分の職業を明かしてはいません。医者は彼女の父のような立場の知り合いで、キッドの知り合いでもあります。また、保安官は、キッドの知り合いで、キッドを子供の頃から知っており、決闘をやめさせようとしています。

 そのため、医者と保安官は、キッドと娼婦をくっつけようとします。また娼婦は、キッドを愛していながらも自分の前歴から恋仲になることに悩んでいます。

 キッドは彼女と一緒になりたくて、医者と保安官の説得から、決闘をするかどうか揺れます。そして、彼女から決闘をしないようにとの説得も受けます。

 これが単なる決闘なら、たぶんキッドはそのまま引いているでしょう。でも、彼が目指している決闘は、自分の親たちを殺された復讐です。そのため、キッドの決闘への渇望は、単なる欲望の暴走ではありません。そこには、過去の家族を取るのか、未来の家族を取るのかという葛藤があります。

 だからこそ、キッドも悩み、観客もハラハラします。このサスペンスがよく出来ていました。最初は頑なだったキッドが、徐々に心を開き、揺れていく様子が見ごたえありました。

 そして、話はラストになだれ込みます。

 アパッチの襲撃は、荒野を馬車で疾走しながら、背後からわらわらと騎馬が集まってくるという圧巻のシーンでした。

 そして、そこを抜けたあとの町──目指していた終着点──での夜のシーン……。

 映画は、ラストまで見た時に、非常に満足感を得られるものでした。



● 映画の画面作り

 さて、この映画を見て、映画の画面作りで、非常に分かり易くかつ参考になるシーンがあったので記憶に残すために書き残しておこうと思います。

 それは、目的地到着後のシーンです。

 夜の街をキッドが移動するシーンなのですが、そこでの画面作りが非常に分かり易かったです。

 遠景、中景、近景と描き分けて、奥行き感をつけていました。具体的に言うと、奥行き感をつけるために、わざと手前にガス燈を入れたりしていました。構図的には、浮世絵なんかの絵の作り方に近いなと思いました。

 こういった風に、奥行きを意識した画面作りが映画には必要なんだなと思いました。



● その他の感想

 馬車で川を渡る方法が、なるほどと思いました。馬車の左右に大木をくくりつけて、筏にしていました。

 また、アパッチ族のジェロニモの仲間は、馬に銃という装備でした。馬も銃も、新大陸発見後に持ち込まれたものです。人間は順応が早いなと思いました。

 あと、乗客の一人で、酒商人のピーコック(背が低い人)は、「我が家の楽園」(1938年)に出ていた人ではと思い、調べたら出ていました。



● 粗筋

 以下粗筋です(終盤に入るところまで書いています)。

 一台の乗り合い馬車が出発した。そこには様々な人が乗った。アル中の医者、娼婦、酒商人、出産間近の大佐夫人、優男の賭博師、保安官。その馬車が向かう先には、アパッチ族が出ているという知らせが入っていた。だが、彼らは、先を目指して出発した。

 馬車は途中で銀行頭取を拾う。そして、荒野に出てから一人の男を拾う。彼はお尋ね者のガンマン リンゴ・キッドだった。

 保安官はキッドを拘束する。実は保安官はキッドを幼い頃から知っていた。そしてキッドが、親の復讐のために先を目指していることを知っていた。

 馬車は最初軍隊に守られていた。しかし、軍隊は途中で去っていく。先に進むかどうか、乗客たちは話合う。そして先に進むことに決まる。

 あともう少しで目指す町に着くというところまで来る。その途中の宿で、大佐夫人が出産する。また、キッドは娼婦に愛の告白をする。彼女は、死ぬ人の旦那になるのは嫌だと言う。

 馬車は出発することになる。だが、近くまでアパッチが来ていることが判明する。一同は銃を持ち、襲撃に備えて出発する。そして、荒野のど真ん中で、アパッチの襲撃を受けることになる……。
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