映画「最前線物語」のDVDを十一月下旬に見ました。
1980年の映画で、監督・脚本はサミュエル・フラー。主演はリー・マーヴィン。
第二次大戦のアメリカの部隊を舞台に、一人の軍曹と四人の若手兵士が数多くの戦線に参加していくお話です。面白かったです。
● 構成
この映画は、主人公の軍曹が、第一次大戦の終戦のタイミングで、ある行為を行うところから始まります。
そして、第二次大戦に一気に話は進み、そこから第二次大戦の終結までを描きます。
この、冒頭と末尾の「二つの終結」が対になっており、その描き方の相似と変化が描かれることで、映画としてのまとまりが非常によいものになっていました。
こういった構成は、ベタだけど有効だなと思いました。
とはいえ、この「二つの終結」の描写は、最初と最後にとってつけただけのものではありません。
中盤で、軍曹たちは、第一次大戦終結時にいた場所を再び訪れます。そこでは、死と誕生が描かれており、軍曹の内面の変化を、台詞ではなく、行為として描いています。
また、映画のラスト直前にも、軍曹の心中の変化を描くシーンを挿入しており、うまく話が流れるようになっていました。
よく、「大事なことは三度繰り返せ」と言われますが、ラストの決断がちょうど三度目ぐらいになっており、しっかりとした構成だなと思いました。
また、映画の「視点」として、若手小説家の兵士が従軍しているのもポイントだと思いました。
この部分はなくても、「映画」なので成立すると思いましたが、心情解説などを入れるのには、便利なギミックです。
そういった点も踏まえ、構造がしっかりしている映画だなと思いました。
● 有名戦線のダイジェスト版
さて、大枠としての構成を最初に書きましたが、この映画の最大の魅力は「第二次大戦、有名戦線ダイジェスト」といった部分です。
映画は、北アフリカ戦線、シシリー島、ノルマンディ上陸作戦、ユダヤ人のゲットー解放と話は進んでいきます。
まさに、有名戦線の疑似体験といった様相を呈した映画でした。
見ていて圧巻だったのが、死亡率の高さです。ともかく、バカバカ死んでいき、ドシドシ補給されてきます。
途中から四人の若手兵士たちは、補充されてくる新米兵士の名前を覚えなくなります。どうせ、数日で死ぬのが分かっているので。
また、軍曹と部下四人たちが会話の端々に言う台詞も胸に突き刺さってきます。上の人たちが、「死人を山積みすることを前提に」作戦を立てたり、兵器を作ったりしている……。
例えば、「兵士を歩かせて、狙撃されたら、そこに敵の狙撃兵がいる」という作戦。「敵陣の柵の下まで爆薬を運ぶために、兵士が一人ずつ柵に近づき、パイプを繋いでいく」という兵器(当然、パイプを一つずつ繋ぐごとに、一人ずつ死んでいきます)。
まあ戦争は、基本的に兵士は使い捨ての消耗品ですが、本当に消耗品扱いです。
各戦線で、それがよく分かるシーンが大量に出て来ました。
● リー・マーヴィンの存在感
この映画は、軍曹役のリー・マーヴィンの存在感が特に大きかったです。頑固そうで、強そうな人でした。
他の役者は、顔を覚えていませんが、彼だけ記憶に残りました。
● 粗筋
以下、粗筋です(終盤までの流れを中心に書いています。ネタバレあり)。
主人公は軍曹。彼は、第一次大戦の終了時、終戦を知らずにドイツ兵を殺してしまう。
それから数十年後、第二次大戦になり、彼は若い兵士を率いて戦場に出る。その中に、四人の若手アメリカ兵がいた。
部隊は、死亡率の高い戦線に送られ、兵士は次々に入れ替わっていく。しかし、軍曹と四人の兵士は生き残り、同じ戦線を共に戦っていくことになる。
彼らは、北アフリカ戦線、イタリア侵攻でのシシリー島での戦い、ノルマンディ上陸作戦、そしてドイツのユダヤ人虐殺の施設と、次々と戦場に投入されていく。
その転戦の最中、軍曹はかつて戦った戦場にたどり着く。そこには、死体の振りをして待ち構えているドイツ兵たちがいた。軍曹たちは敵兵を撃退して、その場所にやって来た妊婦の出産を手伝う。
その後、軍曹はユダヤ人のゲットーで、少年を救出する。彼は、精神を病んだ少年を立ち直らせようとするが、少年は死んでしまう。
そして、第二次大戦の終戦がやって来た。軍曹は、第一次大戦の終戦時のように、終戦後にやって来たドイツ兵を撃つ。だが、その場所に、四人の部下たちがやって来た……。
● まとめ
どんな内容か分らず借りましたが、面白かったです。
よくまとまっている映画だと思いました。
しかし、戦場に兵士として行くのは、本当に避けたいなと思いました。