映画「サンゲリア」のDVDを十二月上旬に見ました。
1979年の映画で、監督はルチオ・フルチ、脚本はエリザ・ブリガンティです。
また、この映画に出ている女優ティサ・ファローは、ミア・ファローの妹だそうです。
● B級
映画を見始めて最初に思ったのは、「ああ、この映画はB級だ」でした。
どこがそう思ったかというと、映画の「絵」です。何となく、カメラの距離感とかが微妙に違うといった感じが冒頭からします。
その感覚は絵だけでなく、話の進行でも感じました。これがシナリオのためなのか、編集のためなのかは分りませんが、何かもっさりしています。
ここらへんの「何か違う感」をきちんと言葉にするには、自分で動画を繋いで、ああでもない、こうでもないと言いながら、自分が好きな映画の編集と比較しなければいけないんだろうなと思いました。
映像について見る目を養うには、そろそろ、そういった実験をしないといけないのかなと思い始めています。
● 始まりの唐突さ
さて、この映画の原題をallcinemaで調べると、何だか色々と書いてあります。
□映画 サンゲリア - allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=9216SANGUELLIA
ZOMBIE [米]
ZOMBIES 2 [伊]
THE ISLAND OF THE LIVING DEAD [製作時]
GLI ULTIMI ZOMBI
ZOMBI 2
そしてDVDには、確か「ZOMBIES 2」と書いてあったと思います。映画が「前回の続き風で」何か唐突に始まったのと、この表記から、続編物で「前作の続き」なんだろうと勝手に想像していました。
……Wikipediaを見たら、どうも続編ではないようですね。以下、引用。
□サンゲリア - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82... 本作の原題は『ZOMBI2』。前年にロメロの『Zombie/Dawn of the dead』(邦題『ゾンビ』 1978年)がイタリアをはじめヨーロッパで公開されたばかりだった。
『ゾンビ』のヨーロッパにおける配給権を持っていたダリオ・アルジェントは、無断でのタイトル使用について大いに憤慨しフルチ監督に対して抗議する。
しかし、フルチから「ゾンビはもともとブードゥ教特有の言語、権利を振りかざす根拠はどこにもない」と返され、後輩格の監督であったアルジェントはそれ以上何も言えなかった。
イタリアホラーの巨匠2人の確執はここから始まったとされる。
何だか私は、えらい勘違いをして映画を見ていたようだなというのが分りました。
続編でも何でもないようです。
また、「続編なんだろう」と勘違いした理由は、「始まりの唐突さ」だけではなく、実はもう一つあります。
それは、人物描写がみんな薄っぺらいことです。どの人物をとっても、その人物の立体的な背景が見えてこないペラペラさが気になりました。
まあ、B級ホラー映画に、キャラクターの掘り下げを求めても仕方がないのですが、えらく気になりました。
● 感情移入度の低さ
上述の通り、キャラクターの掘り下げが低いのと、視点が二つある(記者である主人公と、ゾンビがいる島に住む医師)ために、どうにも感情移入度が低かったです。
また、主人公である記者を船に乗せてくれたために巻き込まれる男女二人組みが、本当に背景が何も語られていなかったのも特筆すべき点だと思います。
様々なところで、「このキャラは、なぜここにいるのか?」ということに答えてくれないので、「きっと前作で公開済みの情報なんだろう」と思いながら映画を見ていました。
● サービス・シーン
サービス・シーンは豊富でした。女の人の裸はいっぱいありました。ストーリーに無関係な、過剰とも言える無意味な脱ぎっぷりは、お約束とはいえ、普通のB級映画よりも多いと感じました。
● 水中ゾンビ
ちょっと面白かったシーンは、水中ゾンビのシーンです。
女性が海で鮫に襲われると、なぜか海中にゾンビがいて、鮫対ゾンビとなり、その隙に女性は逃げようとします。
「海中(というか海底)にゾンビ」というのは、斜め上の発想でしたので、これはちょっと驚きました。
しかしまあ、ストーリーの必然性は、特にないシーンでした。このシーンは、サービス・シーンの収集をつけるためのギミックだよなと感じました。
● グロ描写
これはかなり力が入っていました。
痛そうで、気持ち悪くて、グロいシーンが後半は特に多かったです。
グロ・シーンがなければホラー映画ではない、という方には、ありなのではないかと思いました。
目に木片が徐々に刺さるシーンは、痛そうでした。
● ラストの展開
撮影は色々と問題があると思うのですが、ラストの展開は割りと好みでした。
自分の行動が、その場所から出て一つ上のレイヤーから見ると、実は全体の事象の一つにしか過ぎなかったというのは、SF的だなと思いました。
まあ、ベタと言えばベタなのですが、オチはきちんとつけたなと感じました。
● 粗筋
以下、粗筋です(終盤に入ったぐらいのところまで書いています。ネタバレ的なことはほとんどなし)。
海を漂う船を調査した警官が何者かに噛み殺された。その船の持ち主の娘は、父が帰ってこないことで、心を痛めていた。新聞記者の主人公は、事件を調べるために、彼女とともに南洋に旅立つことに決める。
二人は、港に船を停泊していたカップルに声をかけ、乗船させてもらう。そして、ある島にたどり着く。
その島では、奇妙な風土病が発生しており、医師と看護婦が奮闘していた。その病気とは、死人が生き返り、生きている人間を襲うという病気だった。襲われて噛まれた人間は、死後生き返り、再び人間を襲う。
主人公たちは、医師と会い、医師の妻に言伝を頼まれる。しかし、その場所に行くと、妻は死んでいた。そこには生き返った死者たちがいて、彼らは南の島を逃げ回ることになる。
そして、医師の許にたどり着くが、大量の死者たちがその場所に集まってきた……。
● まとめ
あまり好みではなかったなあというか、私には面白くなかったなあというのが、素直な感想です。
ゾンビ映画の系譜をいろいろと知っていたら、背後の確執とか、比較とかで面白かったのかもしれませんが、そういった予備知識がありませんでしたので。
というわけで、外れだったなという感想になりました。