2009年の読書のまとめ11月分です。
星による評価の基準については前述の通りです。
● 2009年11月(4冊/計49冊)
■ 01 出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代(塩山 芳明)
(★★★☆☆)
大学の先輩の部屋で発見して、購入予定に入れていた本です。
エロマンガの編集者として有名な(嫌われ者の記で有名な名物編集者)塩山芳明氏の本。エロ劇画から始まり、エロマンガの歴史を語りながら、その界隈の人たちの変な人や、駄目な人を書き綴っていく本。
基本的に、この人の文章は悪文だと思うのですが、内容は濃くておもしろかったです。色々と、学生時代の頃を思い出しました。
しかしまあ、バブルを経験しているというのはいいなあと思いました。きっちりそのお金で家を建てているし。バブル後に社会人になった人間としては、羨ましい限りです。
■ 11 吉里吉里人 上(井上 ひさし)
(★★★☆☆)
上・中・下巻で、各巻500ページぐらいある長い本。基本はギャグマンガのりの、ドタバタコメディですが、社会風刺が大量に入っているので、知的刺激に満ちています。
そういう意味で、SFユートピア小説に連なる、正統な作品なのではないかと思います。ちなみに日本SF大賞と星雲賞の受賞作品です。また、作者の井上ひさしは、「ひょっこりひょうたん島」の人です。
吾妻ひでおの不条理ギャグマンガののりに近いなあと思って調べてみたら、かなり近い年代に書かれていることが分りました。なので、そういった時代ののりの本だと思うと間違いないと思います。
井上ひさしの「吉里吉里人」は、第2回日本SF大賞受賞(1981年)、第13回星雲賞日本部門受賞(1982年)作品で、吾妻ひでおの「不条理日記」は、第10回星雲賞コミック部門受賞(1979年)作品です。
なので、ほぼ同じ年の作品になります。
話は、日本の一地方が独立をして、その独立を成立させるために、様々な手を打っていくというものです。
ともかく、下品で猥雑でドタバタで、お世辞にもお行儀のよい小説ではないですが、面白かったです。
ただ、ページ数稼ぎ的なエピソード(ページ数稼ぎという部分自体がネタ)が多く、途中「なんだか進まないなあ」という感じの場所が多々あり、1500ページ近い大部なので、中盤以降、ちょっと飽きました。
結局、全巻読み終わったのは、翌年1月の頭になりました。
■ 25 北村薫の創作表現講義(北村 薫)
(★★★☆☆)
創作意欲が刺激される良書。こういった授業を、高校時代ぐらいに受けていると、もう少しいろいろと目覚めるのが早くなるだろうになと思いました。
■ 27 神山健治の映画は撮ったことがない(神山 健治)
(
★★★★☆)
良書。
攻殻機動隊SAC(今なら「東のエデン」)の神山健治が、監督になろうとして、どういうことをやって失敗して、どういうことをやって成功したか。また、そういった体験から導き出した経験知など諸々をまとめた本。
監督業(創作業)に関わる人間や、映像を目指す人間には、いろいろと勉強になるところが多い本でした。
特に、映像制作の勘所は、あまり書いている本を読んだことがなかったので、なるほどなと思いました。
映像というのが、音楽の延長なのだということが、よく分りました。
また、アニメ畑でやってきた作者が、実写に挑戦する上で、いろいろと気付いた点や、問題となった点なども書いてあるのが興味深かったです。
この人の文章は、持って回ったところがなく、直接的でよいですね。成功も失敗も包み隠さずそのまま書いているので、読んでいて好感を持てます。
後半の対談集は、本の体裁を整えるためのページ稼ぎという印象が強かったですが、前半だけでも十分価値のある本なので、買って損はなかったです。