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2010年03月09日 14:00:26
バード
 映画「バード」のDVDを一月中旬に見ました。

 1988年の映画で、監督はクリント・イーストウッド、脚本はジョエル・オリアンスキー、主演はフォレスト・ウィッテカーです。



● チャーリー・パーカー

 この映画は、ジャズ好きのイーストウッドが、ジャズのレジェンドである「バード(or ヤードバード)」こと、チャーリー・パーカーを題材にして撮った伝記映画です。

 映画中で使われているチャーリー・パーカーのアルトサックスの演奏は、全部本人の演奏を抜き出して、合成しているそうです。

 チャーリー・パーカーは、奥泉 光の「鳥類学者のファンタジア」を読んだ後なので、いろいろと思い出してしまいます。

 作品を見る順番としては、「バード」→「鳥類学者のファンタジア」の方が、より本を楽しめたかなと思いました。



● 回想を交えての進行

 映画は、基本的にイーストウッドなので出来はよいのですが、ちょっと進行が分りにくかったです。その原因は、現在の時間軸と過去の時間軸を、回想で切り替えて進める方式のせいです。

 この切り替えのせいで、時間の描写がちょっと分りにくかったです。

 それは、チャーリー・パーカーが三十四歳で早世していることにもよります。つまり、晩年のシーンと若いシーンに差がほとんどないからです。

 おかげで、途中で何度か「うん?」と詰まる場所がありました。

 回想構成というのは、明確な表現の区別をしたりしないと分りにくいものだと、思い知らされました。



● 汗だら微笑 フォレスト・ウィッテカー

 主役のチャーリー・パーカーを演じるのは、私が勝手に「微笑みデブ」と呼んでいるフォレスト・ウィッテカーです。

 この人は、汗をだらだらと垂らしながら、困ったように、そして嬉しそうに微笑む演技が強烈です。

 この映画でも、この「汗だら微笑」を炸裂させていました。

 大柄な熊のような体に、優しげで気の弱そうな微笑みの顔が乗っている様子も、インパクトがあります。

 相変わらず強い印象を残す人だなと思いました。



● 本物のチャーリー・パーカーはハンサム

 フォレスト・ウィッテカーの写真は以下です。

http://www.imdb.com/media/...
http://www.allcinema.net/prog/image_large...
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83...

 対して、本物のチャーリー・パーカーの写真は以下です。

http://en.wikipedia.org/wiki/File:Charlie_Parker.jpg

 甘いマスクどころではありません。女性にもてもてだったのも分ります。映画中にも、そういった描写が多いのですが、フォレスト・ウィッテカーだとどうにもぴんと来ません。

 少しは体型をコントロールして合わせてもよかったのでは? と思いました。

 おかげで、この映画を見る際は、主人公の顔は脳内変換して見ないといけないなと思いました。



● 白人系の奥さん

 チャーリー・パーカーの生没年は、1920年 - 1955年です。活躍の中心は1940年代です。時代は第二次大戦〜終戦ぐらいです。

 この時代背景で、チャーリー・パーカーの奥さんが白人系だったので驚きました。

 この女性、チャン・パーカーは、Wikipediaで調べてみたら、部分的にユダヤ人の血が入っていると記載がありました。どういった民族構成か知りませんが、黒人と白人のカップルは、当時としても珍しかったのではないかと思いました。

□Wikipedia - Chan Parker
http://en.wikipedia.org/wiki/Chan_Parker



● 麻薬とアルコール

 チャーリー・パーカーは、麻薬とアルコールに溺れて身を滅ぼしました。

 映画中で、「これはもう駄目だ」と思ったのは、フォレスト・ウィッテカーが以下のような台詞を吐いた時です。

 肝臓の薬に○ドル、潰瘍の薬に○ドル、全然効かないから、町で10ドルの麻薬を買ったら、痛みがなくなったよ。(○ドルは、75ドルとか、それぐらいの金額)

 そういった台詞を泣きそうな微笑み顔で言います。

 既に薬で内臓がぼろぼろで、その痛みを避けるために、さらに薬を買うような状態です。これはもう、どうにもならないなと思いました。



● レッド・ロドニー

 映画中、チャーリー・パーカーの弟分のような存在になる、ユダヤ人のジャズ・ミュージシャンが出てきます。その彼、レッド・ロドニーに対して、チャーリー・パーカーは、麻薬をしないようにと激しく怒ります。

 チャーリー・パーカー自身は、麻薬が身の破滅だと分っていたけれど、やめられなかったのでしょう。

 これは、かなり苦しい心情だっただろうと思いました。



● 付き人

 映画では、チャーリー・パーカーはけっこうな稼ぎがあるのですが、レコーディングなどに遅れてきたり、来なかったりします。その度に、雇う側は損害を出します。

 当時なので人件費は安いと思うので、雇う側は付き人をつければよいのにと思いました。毎回、困っている割には、何の対策もとっていないようでしたので。

 まだ当時には、エンターテインメント業界、特に音楽業界では、マネージャー的な職業はなかったのでしょうか? ちょっと謎だなと思いました。



● 粗筋

 以下、粗筋です。(ミステリーではないので、あまりネタバレは気にならないと思うので、最後まで書いています)

 主人公は、バードの異名を取る、伝説のジャズ・ミュージシャンであるチャーリー・パーカー。

 彼は、仕事の行き詰まりと娘の死による精神衰弱で、服毒して病院に運び込まれる。彼は一命を取り止め、精神病院でしばらく過ごす。彼は、出所の際、自分の人生を振り返る。

 彼の音楽人生は、罵倒と嘲笑から始まった。勝ち抜きのジャズ・セッションで、うまく吹けずに追い払われたのが、彼の原体験だった。

 それから数年後、彼は華やかで流麗なメロディーを演じる有能な演奏者に成長した。彼は、非常に女性に持てた。その中で、一人の女性と結婚する。

 だが、麻薬とアルコールを常用する彼は、行く先々でトラブルを引き起こした。また、警察にも付け狙われることになった。

 彼は、ふとしたことで知り合いになったユダヤ人のトランペット奏者の兄貴分のようになる。そして、彼を率いて、南部に演奏旅行に行く。

 だが、そういった楽しい時期は過ぎ去っていく。時代はロックン・ロールの時代に突入していく。その、単純でノリだけを求める戦慄に彼は拒否感を持つ。「もっと、音を鳴らしたい!」仕事はまだまだ来ていたが、彼は世間と自分との乖離を感じ始める。

 そして、仕事に行き詰まり、娘の死に遭遇する……。

 精神病院から退院した彼は、演奏旅行に出かける。そして死ぬ。

 その死体を見た医者は、「黒人六十代」と死亡診断書のためにメモを取ろうとする。だがその時、彼の年齢は、まだ三十四歳にしか過ぎなかった。



● ディジー・ガレスピーの秘密

 映画中、チャーリー・パーカーに散々迷惑をかけられながらも友人関係を続ける人間として、ディジー・ガレスピーが出てきます。

 そのディジー・ガレスピーに、チャーリー・パーカーが「お前も何か秘密があるだろう。しゃべれよ」と無理やり話させるシーンがあります。

 それに対して、ディジー・ガレスピーは、ぷりぷりと怒りながら、「お前は、散々周囲に迷惑をかけているが、お前が死んだあと、お前の音楽は残り、お前の記憶は残る」といった内容の台詞を吐きます。

 憤慨する気持ちも分るなと思いました。

 でも、ディジー・ガレスピーもジャズの功労者として歴史に名前が残っています。

 彼は生涯節制に努めていたそうで、その結果、この頃のジャズ・ミュージシャンとしては異例に長生き(72歳)しています。

 チャーリー・パーカーと対象的な人物だなと思いました。

□Wikipedia - ディジー・ガレスピー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83...
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