映画「チャンス」のDVDを、二月中旬に見ました。
1979年の映画で、原題は「BEING THERE」。監督はハル・アシュビーで、原作・脚本はイエジー・コジンスキーです。
主演はピーター・セラーズで、ヒロインはシャーリー・マクレーンです。
静謐なギャグ映画という感じで、よかったです。
● 粗筋
この映画は、先に粗筋を書いた方が分かりやすいので、粗筋から書きます。
以下、粗筋です(終盤近くまで書いています。あまりネタバレが気になる映画ではないので、普通に粗筋を書いています)。
主人公はあるお屋敷の庭師。彼は物心付いた頃から、そのお屋敷を出たことがない。しかし、その屋敷の主人が死んだことにより、彼は屋敷の外に出る。彼は壮年の年齢に達していた。
一般世間で暮らしたことのない主人公は、テレビが大好きで、いつもテレビを見ている。そして、その真似をしたりしながら生活していた。
彼は町で、車に追突される。その車に乗っていたのは、富豪の妻で、彼女は主人公の治療のために、自分の屋敷に連れていく。特に行く当てのない主人公は、治療が終わるまで、その屋敷で過ごすことになる。
その屋敷の主人は大富豪で、政治にも強い影響を与える人物だった。だが彼は難病に犯されており、死期が近づいていた。屋敷の面々は、寡黙な主人公を、ひとかどの人物と見る。そして、大富豪は主人公を気に入る。
その屋敷に、大統領がやって来る。大富豪は、主人公を同席させる。大統領は、主人公が語る庭の話に感銘を受け、その内容をスピーチに盛り込む。
大統領のスピーチは影響力が大きく、世間は注目する。そして、元ネタを語った主人公に注目が集まる。
主人公はテレビに引っ張り出され、人気者になる。大統領は、CIAやFBIに、主人公の身元を探らせる。しかし、主人公の過去は全く見つからない。
そして主人公は、いつの間にか財界の重要人物と目されるようになり、大富豪の妻に慕われるようになる……。
● 静謐なギャグ映画
この映画を一言で言うならば「静謐なギャグ映画」です。
ギャグ映画なのがよく分かるのは、最後のスタッフロールで、NGシーンが延々とあることです。
この映画は、本当に何も考えていない人形のような主人公が、庭師の話や、テレビの真似をするだけで、いつの間にか周りが動いて、祭り上げられていく様子が面白いです。
この主人公は、一言で言うならば「人工無能」です。
周りの人間の問いかけに、微笑んだり、頷いたり、特に関係のない言葉を返すだけで、相手の人間はそこに知性を発見します。
この、「人の皮を被った人工無能」の周りで、勝手に話が大きくなっていく様子が、非常に面白かったです。また、その危うさがブラックで楽しかったです。
● ピーター・セラーズ
ピーター・セラーズは、「ピンク・パンサー」シリーズのジャック・クルーゾー警部、「博士の異常な愛情」(1964)のマンドレイク、マフリー大統領、Dr.ストレンジラブです。
この映画では、非常に温厚な紳士然としていますが、NGシーンを見ると、かなりお茶目な人っぽいなと思いました。
この人の抑えた演技が、非常によかったです。
● シャーリー・マクレーン
美人さんで、キュートで、ちょっとエロティックで非常によかったです。
シャーリー・マクレーンは、この頃四十五歳。年を取って、なお可愛い女性は素晴らしいと思います。
しかしまあ、シャーリー・マクレーン自身は、精神世界系で有名な人のようですね。
□アウトオン・ア・リム
http://www.tcp-ip.or.jp/~hirai/Bautoonnarimu.html 世界を飛び回っているうちに、精神世界に目覚める人って、けっこういるのかなと思いました。
● 人間の価値は、置かれた立場による
この映画を見て思ったことの一つです。
主人公は白紙のような人物で、そこには何も書き込まれていません。
しかし、置かれた立場によって、何色にでも染まり、そして周囲の人に一目置かれます。本人は何もしていないのに。
人生も似ていて、本人自身よりも、どこに立っているかの方が大切だったりします。
人生のチャンスは、望む時に、望む場所に立てるかどうかで、だいたい決まります。
もちろん、そのために、日頃から準備は必要ですが、スタート地点で、大きく差が開いているのが普通です。
世の中の九割以上は運だと思うのですが、運ではない部分が五割ぐらいはある社会を作っていかないといけないなと思います。