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2010年05月14日 17:23:52
スマイルBEST ブラックブック
 映画「ブラックブック」のDVDを三月中旬に見ました。

 2006年の映画で、監督はポール・ヴァーホーヴェン。脚本は、ジェラルド・ソエトマンとポール・ヴァーホーヴェンです。

 面白かったです。そして、ヴァーホーヴェンらしい映画でした。



● オランダのナチスと「女王陛下の戦士」

 映画は、TSUTAYA DISCASで注文したけれど、その経緯を忘れた状態で見始めました。そして、冒頭数分を見て、「オランダのナチスって、ヴァーホーヴェンみたいだな」と思いました。

 ヴァーホーヴェンは、「女王陛下の戦士」(1977年)という作品があります。

 この作品は、第二次世界大戦で、ナチスに攻め込まれたオランダ人が闘士となり、いったんイギリスに渡り、再度オランダに潜入して諜報を行うというものです。

 なので、「まるでヴァーホーヴェンみたい」と思ったわけです。同じ場所と時代設定ですので。

 ……まあ、ヴァーホーヴェンそのものだったわけですが。

 さて、こちらの「ブラックブック」ですが、「女王陛下の戦士」よりもグロテスク分は控えめで、スタイリッシュ分をちょっと足した感じになっていました。

 「女王陛下の戦士」の方は、爆弾が落ちたら、「肉片が吹き飛んで、壁からぶら下がる」みたいな感じの描写だったのですが、「ブラックブック」はそういった部分は抑えてありました。そして、映像的に高級感を出していました。

 ストーリー運びに関しては、「女王陛下の戦士」の方は、一大サーガ的に、戦争全体を描いていました。対して、「ブラックブック」の方は、ユダヤ人の一女性の視点で、もう少し狭い範囲の話になっていました。

 二つの作品の方向性は違うので単純に比較はできないのですが、どちらも違う方向で面白い作品になっていました。



● レジスタンスの女性

 この映画の主人公は、ユダヤ人の女性です。彼女は、ナチスから逃げる途中でレジスタンスに入ります。

 主人公は若くて美しいです。そういった女性が担当する役回りの定番として、彼女は敵方の重要人物の愛人となります。ここらへんは、「ラスト、コーション」(2007)を思い出しました。

 レジスタンスのメンバーは、一応、彼女にその役をするかどうか尋ねます。しかし、選択肢はほぼありません。

 こういった環境下での女性は大変だなと思いました。

 また、こういった女性の運命で思うのは、「敵方の男とセックスをして、子供ができる可能性があるのだけど、その子供も含めて運命は過酷だな」ということです。

 だからと言って、戦時下では、自分で行動を選べるわけではないので八方塞がりです。

 単純な生き死に以外での苦悩も伴うので、きついだろうなと思います。



● 三つのフェイズ

 映画は、三つのフェイズに分かれています。

1.ユダヤ人の主人公の逃亡

2.ナチスの駐屯地とレジスタンス

3.戦後の犯人探し

 1が序盤で、3が終盤で、2が映画の大部分を占めます。

 2は極言すると2つの場所で回っています。一つはナチスのオランダでの情報部の官舎で、もう一つはレジスタンスの隠れ家です。

 けっこうコストパフォーマンスのよい設定だなと思いました。

 ただし、二箇所だけで回っていると言っても、退屈ではありません。主人公がナチスの高官の愛人になって潜入したり、盗聴器を仕掛けたり、レジスタンス仲間が捕まったり、それを救出に行ったりと、頻繁に局面が変わります。

 ここらへんは、緊迫感を途切れさせないように、脚本でうまく回しているなと思いました。



● 対立の演出

 映画は、様々な場面で対立を演出しており、飽きさせないようになっていました。

 敵との対立だけでなく、レジスタンス内での対立、敵の中での対立などを次々に出すことで、緊張感が途切れないようにしていました。

 こういったやり方は上手いなと思いました。



● エロとグロ

 ヴァーホーヴェンと言えば、悪趣味なエロとグロと暴力です。バイオレンスの方は今回は過剰ではなかったですが、エロとグロはありました。

 というわけで、ヴァーホーヴェンらしいなと思ったシーンを二つ取り上げます。

○ 毛染め

 ユダヤ人で黒髪の主人公が、ユダヤの高官に近づくために、髪を金髪に染めます。そして、それを徹底するために、下の毛も金色にします。

 エロというわけでもないですが、ヴァーホーヴェンらしいなと思いました。

 あと、主人公は肉体が豊満ではなく、だいぶ細身なので、脱いでもそれほどエロくはなかったです。

○ 糞尿被り

 これは、まさにヴァーホーヴェンらしいと思いました。

 主人公が頭から肥溜めをかけられます。

 ヴァーホーヴェンが好きそうなシーンだなと思いました。



● 「ミステリー」ではなく「サスペンス」

 映画を見た感想は、これはミステリーではなく、サスペンスだなです。

 映画には、「主人公の家族をナチスに売った人間は誰か?」という謎があります。でも、その謎解きという感じはなく、ひたすらサスペンスという感じです。

 いちおう終盤に、謎の鍵が提示されて、答えが明らかになるのですが、ミステリーという感じではなかったです。



● 切手収集

 主人公が愛人になるナチの将校は、生真面目で切手収集が趣味です。

 彼は、今で言うオタク気質の人です。昔のそういった人と言うと「切手収集」が多いですね。「蝶」もその手の定番ですが、「切手」の方が純朴なマニアな雰囲気がします。

 今は切手収集が趣味の人はほとんど見ませんが、かつては相当いたのでしょう。

 なんとなく、そういったキャラの典型例みたいな感じがしました。



● 粗筋

 以下、粗筋です(以下、ネタバレあり、終盤の開始まで書いています)。

 主人公は、オランダに住むユダヤ人の若い女性。第二次大戦下で、オランダはナチスに征服されて、ユダヤ人狩りが始まる。

 主人公は金を積み、家族とともに逃げる船に乗る。しかし、その船の所在はナチスに知らされており、主人公の家族は殺され、一人だけが逃げおおせる。

 船での脱出の手引きをした人間がナチスとつるみ、逃亡のために金品を身につけているユダヤ人を狩っていたのだ。

 主人公は潜伏し、オランダ人のレジスタンスに加わることになる。そこで、ナチスの高官の愛人兼スパイになる。

 主人公が愛人になったのは、ナチスの情報将校だった。彼はナチスだが穏健派で、終戦が近づいていることも分かっていた。彼はレジスタンスと和解することを考えている。

 しかし、ナチス内部は強硬派が支配している。またナチス内には、レジスタンスの内偵者と組んで、ユダヤ人狩りをして私腹を肥やしている者もいた。

 そうこうするうちに、レジスタンスの一部の人間が逮捕される。また、主人公が愛人になっていた情報将校も失脚して幽閉される。

 主人公は救出作戦に加わり、レジスタンスを手引きする。だが、その情報は筒抜けで、逆襲を受けてしまう。主人公は裏切り者の濡れ衣を着せられ潜伏する。

 終戦後、ユダヤ人狩りをしていたナチスの男は逃亡を企てる。しかし、彼は殺される。レジスタンスとナチスの間で暗躍していた人物が、彼を殺して金品を奪ったのだ。

 潜伏していた主人公は、レジスタンスの関係者と会い、内通者を知る鍵となるブラックブックを手に入れる……。



 以下、ネタバレありの感想です。



● ブラックブック

 映画の終盤に入って初めて出てきます。

 途中まで、なんでタイトルがブラックブックなのだろうと思っていました。

 ただ、「あっ」と声を上げるような登場の仕方ではなかったです。だいぶ唐突に出てきた感がありました。

 これは、もう少し登場をにおわしていてもよかったのではと思いました。



● 秀逸なクライマックスシーン

 映画の終盤は、主人公の家族をナチに売った犯人を追い詰める話になります。

 そのクライマックスのシーンが、非常に印象的でした。そして、ヴァーホーヴェンらしく、人間の醜悪な面が噴き出る素晴らしいシーンでした。

 犯人は、棺桶に入って死体の振りをして包囲網を突破しようとします。この作戦自体は、主人公がかつて検問を突破した方法で、その再演になります。

 その棺桶に辿りついた主人公は、棺桶の釘をねじ込んで封印していきます。中の犯人は、主人公に蓋を開けさせるために、棺桶のすき間(十字架の下が浮いていて、空気穴になっている)から、無数のお札を出して、主人公に渡そうとします。

 このシーンが凄まじかったです。

 棺おけの十字架の脇から、地獄の欲望が噴き出るように、大量のお札が溢れ出してきます。そのお金を無視するようにして、主人公は必死の形相で釘を回転させます。まるで、地獄の亡者をあの世に押し返すようにその作業を行います。

 素晴らしいシーンでした。

 映画は面白かったですが、このシーンのおかげで、「ただ面白い」を越えた、見ごたえを感じさせるものになっていました。
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