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2010年05月25日 16:18:14
 映画「アリス・イン・ワンダーランド」を劇場で、五月上旬に見ました。

 2010年の映画で、監督はティム・バートン。脚本はリンダ・ウールヴァートン。

 主演はミア・ワシコウスカで、マッドハッター役でジョニー・デップ、赤の女王役でヘレナ・ボナム=カーターが出ています。

 3D映画でしたが、期待ほどよくはありませんでした。



● シナリオの問題

 映画は途中で何度か寝落ちしそうになりました。

 原因は、シナリオが退屈だったからです。

 どこが問題だったかと言うと、たぶん「危機の演出」が決定的に欠落しているからだと思います。

 この映画では、三つの危機が描かれます。

 一つ目は、主人公が襲われる危機。二つ目は、仲間であるマッドハッターが捕まる危機。三つ目は、世界が赤の女王によって完全に支配される危機です。

 この三つの危機がどれも弱いです。

 それぞれの危機について、問題点を書いていきます。



 まず、一つ目の「主人公が襲われる危機」ですが、主人公はプロポーズされて、現実世界から逃避して、ワンダーランドにやって来ます。そしてそこで、肉体的な危機に襲われます。

 この主人公ですが、現実世界からワンダーランドに来ていることに、危機感がありません。逃避で来ているので、「脱出しなければならない」という切迫感がそもそもありません。

 また、「これは夢だ」と思っているために、肉体的な危機に対する恐怖も欠如しています。

 そのため、危機が全くと言っていいほど、物語の盛り上げに寄与していません。



 次に、二つ目の「仲間であるマッドハッターが捕まる危機」ですが、これが説明不足で中途半端です。

 前提として、『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』があるために、キャラ説明が十分なされておらず、特定のキャラクターを失うことが、主人公にとってどういう意味を持つのか実感が湧きません。

 また、大人になった主人公は、それらのキャラクターの存在を忘れているために、二重の意味で危機感がありません。

 それだけではありません。この映画のアリスは、捕まったマッドハッターをすぐに助けに行きます。そのために、捕まったことの意味が薄れて、サスペンスがまるでありません。

 結果的に、メリハリのないシナリオになっています。



 最後に、三つ目の「世界が赤の女王によって完全に支配される危機」ですが、これが非常に弱いです。

 主人公にとって、そのことが「自分の危機」ではなく、さらに、その他のキャラクターにとってのどういった危機かも明確に描かれないために、「世界の危機」という印象がまるでありません。



 こういった危機感の欠如のために、非常に散漫な話になっており、『アリス』のキャラが出てくることだけで楽しませる、二次創作的な作品になっていました。

 なので、非常にがっかりな内容の作品だと思いました。



● 「PLANET OF THE APES 猿の惑星」の記憶

 この映画を見ている時に思ったのは、「PLANET OF THE APES 猿の惑星」(2001)の再来だということです。

 この「猿の惑星」も、今回の作品と同じように、ちょっと失敗という感じの作品でしたので。



● 3D映画の意味

 さて、この映画を特徴付けているもう一つの要素は3Dです。

 この映画を3D映画として見た感想は、「正直言って、3D映画として作る必要はなかったのでは?」というものです。

 3D映画に対して、「アバター」(2009)でも感じたことがあります。それは、3D映画はストーリーが希薄になるというものです。

 これは私の考えですが、「3D映画は、3Dとして見るだけで疲れるので、ストーリーを複雑にしない」傾向があるのではないかと思います。

「アバター」では、そのことがプラスに働いていましたが、この映画ではマイナスに働いているように思えました。

 また、「アバター」は3Dで見ることで大きな没入感を覚えましたが、この映画はそれほど3Dを楽しめるわけではありませんでした。

 正直な感想としては、「アバター」クラスだと3Dで見たいと感じるけど、この作品レベルのものなら、むしろ2Dで作ってくれた方がありがたいと感じました。

 今後、3D映画の流れが来るでしょうが、同じ2時間作品だと、3D映画の方が圧倒的に疲れるので、それに見合う内容のものでなければ、逆に敬遠されることになるのではないかと思いました。

 あと、映画館の問題もあるのかもしれません。

 前回「アバター」をアイマックスで見たので、その対比として今回は、109シネマズの普通の劇場で見ました。

 その結果、アイマックスよりも眼鏡が重くて、鼻が疲れました。



● 美術

 ティム・バートン作品なので、基本的に美術は面白くて魅力的でした。

 ただ、映像で気になった点がいくつかあったので書いておきます。

 まず、トランプ兵です。赤の女王のトランプ兵は真っ赤で、白の女王のトランプ兵は真っ白でした。このデザインが、トランプっぽくなく、あまり好みではありませんでした。

 このトランプ兵ですが、映画の終盤で集団戦闘を演じるのですが、これが非常に機械っぽい動きで、モーションのアルゴリズムの予算が手薄と感じる内容でした。

 ティム・バートンという監督は、あまり大規模戦闘を描く映画を撮っていないので、ここらへんのノウハウはないのかなと思いました。

 この戦闘シーンは、かなりちゃちくみえました。

 次に思ったのは、ハートのジャックの乗る馬が前足を上げて立つシーンが、機械っぽかったことです。


 何度かそういったシーンがあるのですが、ぎくしゃくしていて、もう少し自然に見える方がよいなと思いました。



● 粗筋

 以下、粗筋です(大まかな流れです。あまりネタバレではないと思います)。

 主人公はアリス。彼女は、貴族の息子にプロポーズされる。彼女はそのことが嫌で逃げ出し、穴に落ちる。

 彼女はワンダーランドに迷い込み、「救世主アリス」として、赤の女王が操るジャバウォッキーを倒すようにと言われる。

 彼女は「人違いだ」と言い、逃げ回るが、自分を助けてくれたマッドハッターを救うために、赤の女王のところに乗り込む。

 そして、周囲の懇願を受け、救世主アリスとして戦うことを決意する。
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