映画「BU・SU」のDVDを三月中旬に見ました。
1987年の映画で、監督は市川準、脚本は内館牧子です。
映画自体はそれなりに面白かったのですが、色々と思うところがありました。
● 性格ブスの意味
この映画は、「性格ブスの女の子が東京での生活で人にもまれ、自分の殻を破り自立していく」と紹介に書かれています。
その「性格ブス」なのですが、私が把握している「性格ブス」とは、かなり意味合いが違っていました。
この映画では、「性格ブス」を、「暗くて引っ込み思案の人」として用いています。私の把握では、そういった人は「暗い」人ではあっても、「性格ブス」ではありません。
「性格ブス」という意味では、映画中、主人公と対立する女の子たちの方が「性格ブス」です。
彼女たちは、特定の女の子を虐めて、それに腹を立てる主人公に対して「空気が読めない奴」として呆れます。
私の把握では、こちらの女の子たちの方が「性格ブス」です。
なので、この映画のタイトルは、非常に違和感がありました。
この「性格ブス」という言葉ですが、時代によって変遷があったのかと思い、過去の記憶を辿りました。しかし、私の記憶の限りでは、80年代でも、同じような意味だったと思います。
この映画では、なぜ暗くて引っ込み思案の女の子を「性格ブス」と定義していたのか、またいじめをして楽しんでいる女の子たちを、明るくて素敵な性格の人間として描いていたのか、謎が残りました。
そういった面が非常に気になり、あまり肯定的に映画を見ることができませんでした。
● 青春映画
さて、「性格ブス」の定義と、推奨される人間の理想像に違和感を持った本作ですが、青春映画としては、基本が押さえられていました。
この映画では、主人公が、あることを切っ掛けに自分の殻を破って、積極的に何かを行います。
そのことにより、暗くて俯いてばかりだった主人公の表情が徐々に変化していきます。
そういった部分はきちんとできていて、「青春映画」していました。
なので、先の「性格ブス」の設定は、何だかもったいないなと思いました。
● 富田靖子の容姿
この映画の主人公は富田靖子です。かわいらしくてよいです。彼女は高校生を演じています。
しかしまあ、着ている服のせいかもしれないですが、えらく体が平たくみえます。
そういった感想を持ったので、ネットで水着画像を探してみました。……ああ、服のせいではなく、本当に体が平たい人なのですね。
でもまあ、かわいかったです。
あと、鬱々と下を向いていると、そのかわいさも余り生かせないなと思いました。
そのため、映画の前半はあまりかわいく見えず、映画の後半で、徐々に上を向き始めると、生き生きとしてかわいくなっていきました。
● とんだとばっちり
映画には、主人公の同級生としてボクシング部の男の子が出てきます。演じているのは、高嶋政宏です。
彼は、クラスの喧嘩を止めに入って、逆切れした内気な男の子に怪我をさせられてボクシング部を休部します。
とんだとばっちりです。彼自身は何も悪いことをしていないのに。
なんだか、そういった部分も含めて、この映画は、善悪の因果関係のベクトルが色々と間違っているのではないかと感じました。
● 1980年代の風俗
今見ると、非常に遠い時代のように感じます。
まあ、当然ですね。二十年以上前ですから。
この時代の景色を見て思ったのは、今よりも遥かに貧乏だけど、活気に溢れているということです。
バブル時期なので、金回り云々では、今よりも豊かだったのでしょうが、映画を見る限り、あまり裕福には見えませんでした。
これは、二十年の間に、デザインのトレンドが変わったせいかもしれません。あとは、フィルムの色味が影響しているのかもしれません。
それと、決定的に違うのは家具や電化製品かなと思いました。今よりもえらく古めかしく、つまり野暮ったく感じましたので。
● 芸者という職業
主人公は、上京して芸者の家に寝泊りをして仕事をしています。
こういった、「非日常の職業」を絡ますことは、物語のフックとして有用だと思います。
また、映画の後半では、この芸者ならではの展開が見られます。
ここらへんは基本を押さえているなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(終盤の手前まで書いています。大きなネタバレはなしです)。
主人公は田舎に住む女子高校生。彼女は上京して、親戚の家で芸者見習いとして住み込みで働きながら高校に通う。
彼女は暗く、周囲の人間と打ち解けない。彼女は家でもクラスでも浮いている。
彼女はボクシング部の男の子に恋心を抱く。だが彼には恋人がいた。その男が、主人公に興味を見せたことで、その恋人は主人公を排斥しようとする。
それからしばらくして、クラスでトラブルが起こる。
ボクサーの恋人が、クラスの女の子を虐めていることに腹を立てた主人公が、そのことを指摘する。それが切っ掛けになり、クラスで目立たない男の子が暴発して、ボクシング部の男が怪我をする。
恋人は、嫌がらせのために、主人公を文化祭の実行委員に選ぶ。主人公はそのことを断ろうと考える。
だが、心が変わる。主人公は、虐められていた女の子と協力して、芸者の演目である「お七」を踊ることに決める。
そして、暴発した男の子や、ボクシング部の男など、何人かの人間が主人公の周りに集まるようになる……。
● 映画を見た切っ掛け
この映画は、神山健治の本「神山健治の映画は撮ったことがない」に名前が出ていたので予約しました。
同本に載っていた映画は、何本かツタヤディスカスの予約リストに入れました。
本を読んで、DVDを注文することは多いです。
まだまだ、映画の本を読んでいても、例に挙げられる映画を見ていないことが多いので、勉強が足らないなと思います。