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2010年06月12日 20:29:59
嫌われ松子の一生
 映画「嫌われ松子の一生」のDVDを、四月上旬に見ました。

 2006年の作品で、監督・脚本は中島哲也。原作は山田宗樹。主演は中谷美紀です。

 傑作。非常によく出来ていました。とても面白かったです。



● 松子の壮絶な一生

 映画は、老年に差し掛かった一人の女性の死から始まります。どうやら彼女は殺されたらしい。その話を知らされた甥である青年が、叔母の存在を初めて知り、その生涯をたどっていくという組み立てで物語は進みます。

 この殺された女性「松子」の生涯が、ともかく「転落の一途」という感じの人生で、怒涛のごとく「堕ちて」行きます。

 学校の美人教師から始まり、生徒の万引きの嫌疑を図らずも被って退職し、貧乏小説家と暮らし、ソープ嬢に落ち、さらに殺人犯にまでなっていく……。

 ともかく不器用で、その場その場で、船の舵を切り間違っては失敗して、どんどん不幸の連鎖に落ちていきます。

 自分を愛して欲しかった父親にも徹底的に嫌われます。父親は、体の弱い妹を溺愛しており、彼女はいつも蚊帳の外です。

 そして失意のうちで晩年を送り、最後は……。

 と、何の救いもないような人生が、次から次に展開していきます。

 この「どうしようもなく暗い物語」が、一気に楽しめるのは、「めくるめくミュージカルと、極彩色のCGの演出」で、「豪華絢爛きらびやかな絵」を作っていることによります。

 ともかくポップで派手で暑苦しい。そのために、あまりに不幸な人生が、ギャグとしか思えないように、振り切って見えます。



 また、一つ一つのエピソードもエッジが立っていて面白いです。

 個人的には、宮藤官九郎が演じていた、売れない小説家「八女川徹也」のエピソードがよかったです。

 彼は、小説に打ち込み、貧乏のどん底で自殺します。その死後、彼のライバルでサラリーマンになった、劇団ひとり演じる岡野が、強烈な嫉妬を見せます。

 本当に強烈な嫉妬を……。

 八女川は、いったいどんな凄い小説を書いていたのだろうと、気になりました。

 それだけでなく、一つ一つのエピソードが魅力的で、引き込まれるものがありました。



 そういった感じで、個々のパーツも非常に魅力的です。

 そして、映画の展開の速さと、テンポのよさと相俟って、不幸なはずの人生が、怒涛の物語となって押し寄せてきて、圧巻の印象を与えてくれます。

 これはもう、監督の力技だよなと思い、素直に感心しました。一見の価値ありです。



● 個性的で魅力的な俳優たち

 どんどん舞台が移り、入れ代わり立ち代り人が出てくるので、出演者は多かったです。

 その中でも、やはり主人公を演じる中谷美紀は頭抜けていました。体当たりの演技で、素晴らしかったです。

 また、松子の親友の沢村めぐみを演じた黒沢あすかも、味があってよかったです。「姐さん!」という感じで、格好よかったです。



 以下、終盤のネタバレを含む感想を書きます。



● 実は救済の物語

 このように「救いのない」物語なのですが、映画を見終わったあとには暗い感情は残りません。むしろ、清浄な気分になって感動します。

 それは、この物語が、実は救済の物語だからです。

 この映画の「松子」の一生は、不幸のどん底です。「本人には何の幸せもなかった」人生ですが、実は他人にとっては、価値のある人生だったことが映画の後半で示されます。

 映画の序盤、主人公である松子は、生徒の万引きの罪を意図せず被ることになります。その生徒は長じて、松子と再会して、彼女が好きだったことを告白して同棲します。

 彼はヤクザ者に落ちぶれており、松子をさらなる不幸に叩き落します。

 その元少年の龍洋一が、何度も刑務所に入り、そこでキリスト教に目覚めます。そして、どんなに不幸になっても、自分を許して愛を注いでくれる松子に、神の姿を見ます。

 松子は、自分自身は不幸な人生を歩んだけれど、誰かの心に救いをもたらしたことが、その一連の話から示されます。

 そのことは、「人間は自分自身の人生を全うすることで、誰かに何かを残せるかもしれない」という希望を提示してくれます。

 「たとえ自分自身が不幸であっても、世の中にとって価値のある人生を送れるかもしれない」という救済をもたらしてくれます。

 孤立し、どん底で、失意の内に死んでも、誰かを幸せにしているかもしれない……。

 松子の甥は、そういった松子の生涯を最後までたどり、彼女の人生を不幸と思いながらも、どこか幸福そうな表情を浮かべます。

 それは、この物語が、実は「不幸」の物語ではなく、「救済」の物語なのだからだと思います。

 そういった話なので、精神的にちょっと落ち込んでいる時にこの映画を見ると、人によっては号泣するかもしれません。

 この映画は、生きる意味を見失い、断片化して孤立した社会の中で生きている人々に、それでもあなたの人生には価値があるんだ、誰かのために何かをしているんだと、勇気付けてくれる作品だからです。



● ラストはちょっと引っ張りすぎ

 映画のラストは、松子が昇天していくシーンになります。そこは回想シーンになっているのですが、これがえらく長いです。

 さすがに引っ張りすぎ。

 これがなければ、かなり完璧な作品なのになと思いました。

 さすがに飽きて、「あとどれぐらい続くんだ?」と残り時間を確認してしまいましたので。



● 粗筋

 以下、粗筋です(終盤、ちょい過ぎぐらいまで書いています)。

 主人公は老年に差し掛かった女性。彼女は殺されて死んだ。彼女の甥は知らせを受けて、自分に叔母がいることを始めて知る。そして、荷物の整理にアパートに向かい、荒れ果てた部屋を見て驚く。

 主人公の女性は、転落人生を送っていた。

 父親に愛されたいと思いながらも愛を注がれず、そのせいで不器用な生き方を選択する女になっていた。

 彼女は学校の教師になるが、生徒の万引きの罪を図らずも被って退職する。その後、売れない小説家と付き合うが、彼は自殺してしまう。

 ソープ嬢に落ち、殺人犯となり、彼女の不幸は止まる所を知らない。

 そんな中、彼女は退職の原因となった、万引きした生徒と再会する。実は彼は、主人公のことが好きで、気を引きたいがために罪を犯したのだと言う。

 彼女は、彼と同棲し始める。そして、彼との愛を全うしようとする。しかし、不器用な二人は、さらなる不幸に転げ落ちることになる。
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