映画「日曜日が待ち遠しい!」のDVDを六月中旬に見ました。
1982年の白黒映画で、監督・脚本はフランソワ・トリュフォー、原作はチャールズ・ウィリアムズです。主演は、ファニー・アルダンとジャン=ルイ・トランティニャンです。
面白いのは面白かったのですが、この映画の「男女の機微」には、ついていけないと思いました。
● 恋愛大国フランス
この映画は、主要登場人物のほぼ全てが、二人以上の異性と関係を持っています。ともかく恋愛発情閾値が低いようで、それが愛の国フランス流なのかと思いました。
また、序盤にけんかをしていた二人が、途中から恋人として振舞ったりしており、日本人の、というか私の感覚からしたら「よく分からない男女の機微だ」と感じました。
映画の終盤、特にその「恋愛」が話の中心になっていきます。しかし、この映画で描写されるような「男女の恋愛関係を何よりも優先する」という人間は、私の周囲にはいません。なので、ちょっとついていけませんでした。
でもまあ、映画は小粋で面白かったです。軽妙なミステリーというノリでした。
● キャスト
この映画は、トリュフォーの遺作となったそうです。トリュフォーの監督作品は、今のところ以下のものを見ています。
・「あこがれ」(1958)
・「勝手にしやがれ」(1959)
・「大人は判ってくれない」(1959)
・「華氏451」(1966)
・「野性の少年」(1969)
・「日曜日が待ち遠しい!」(1982)
だいぶ数が増えてきたなと思います。今のところ、どれも楽しめていますので、そのうち他の作品も見てみるかもしれません。
男優のジャン=ルイ・トランティニャンは、「男と女」(1966)で見ていました。
女優のファニー・アルダンは、手足が長くて、「いったい何頭身なんだ」という感じでした。あと、お尻が小さく、きゅっと引き締まっていて、格好よかったです。
● 「裏窓」との関係
映画を見ている途中で、ヒッチコックの「裏窓」(1954)を思い出しました。
「日曜日が待ち遠しい!」では、殺人容疑をかけられた男性が、身を隠しながら、恋人の女性に指示を出して探偵をしてもらうという話です。
その「男性が動けず」「女性が美人でおてんばで探偵役をする」という構図が「裏窓」を彷彿させました。
後述しますが、映像特典でトリュフォーとヒッチコックの関係が語られていたので、意識しているのかもしれないと思いました。
● 映像特典
映像特典は非常に興味深かったです。
トリュフォーがヒッチコックと共著した、ヒッチコックの「映画術」の本についてのインタビューでした。
インタビュワーは、ヒッチコックをトリュフォーの師匠と言っていました。そして、トリュフォーがヒッチコックの映画について熱く語っていました。
また、この番組には、聞き手の一人として、ロマン・ポランスキーが登場していました。
ヒッチコック、トリュフォー、ポランスキーという名前が並ぶのは、けっこう凄いなと思いました。
この映像特典では、面白いシーンがあったので、メモしておきます。
インタビュワー「ヒッチコックは、童貞で奥さんと結婚して、彼女だけを愛しているそうです」
ポランスキー「それは不幸なことだ」
このシーンで、思わずぶっと噴いてしまいました。ポランスキー、さすが言うな〜と思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(大きなネタバレはなし。中盤ぐらいまで書いています)。
主人公は不動産会社に勤める秘書の女性。彼女は社長と喧嘩する。その社長が、友人を殺害した容疑で警察に拘束された。彼は弁護士を呼び、釈放されて家に戻ってくる。
弁護士が帰ったあと、社長は家に入る。そこでは妻が死んでいた。
彼の許には脅迫電話が入っており、死んだ男性と妻ができていたそうだ。このままではどう考えても彼は殺人者として逮捕される。
彼の許に、秘書がやって来る。二人は身を隠せる場所へと移動する。彼女は、社長の窮地を救うために、探偵役をすることを決意する。そして、社長の死んだ妻の足取りをたどる。
その過程で、死んだ妻を調査している探偵会社の人間と遭遇する。どうも、妻を追っていた何者かがいるらしい。そして妻は過去を詐称しているということが分かる。
主人公は社長の許に戻る。そして、最初に死んだ社長の友人について調べ始める。また、脅迫電話の主についても調べる。
死んだ男には裏の顔があったことが徐々に分かる。主人公は、闇社会へと足を踏み入れていく。そして、どんどんと関係者が殺されていく……。
● 未解決?の部分
映画は、犯人が分かって結末を迎えます。
しかし、途中で「敵」として接触した一人が、なぜそんなことをしていたのか、一切答えが明かされずに終了します。
これは、ありなのか? と思いました。
ミステリーとしては、ちょっと足りない部分があるなというのが素直な感想です。
でもまあ、軽妙で楽しめる映画であることは確かです。