2010年08月03日 06:20:44
GIGAZINEの求人が話題になっているというので読んでみました。
「求人募集って、腹痛が痛いみたいだな」というのは置いておいて、内容は、けっこう身につまされるものでした。会社で人を雇うリスクが、そのままモロに噴出した感じの心情吐露でしたので。
募集を読んだ感想は、「てんぱっているんだな」というのが第一印象です。あとは、「経営をするには、真面目過ぎる人なんだろうな」という印象も受けました。
あともう一つ思ったのは、GIGAZINEの編集長の山崎さんという方は、親しい経営者の知り合いとか、友人はいなかったのかなあということです。身近に、普段から相談できる人がいたら、もう少しどうにかなっていそうな印象でしたので。
というわけで、以下、サラリーマン時代を思い出しながら、私が思ったことを、つらつらと書きます。
まず、法律的にも問題がないことで、簡単に変えられることで、導入した方がよいと思うのは、「署名記事」に切り替えることです。これだけで、だいぶ状況は改善します。
次に、ちょっと大変だけど、今後のことを考えて変えた方がよいと思うのは、「給与体系」の変更です。
上記二つを行った方がよいと言う理由は、金銭的インセンティブも、名誉のインセンティブも、将来転職後に有利になる名声のインセンティブも、食っていくスキルを得られるインセンティブも得られないのならば、人は真面目に仕事をしないからです。
だって、その方が得だから。
経営者は、顧客に対して商売をするのと同様に、雇用者に対しても商売をしないといけません。
そういった施策が何もできないのなら、編集長に専念して、経営ができる人(有償でも、無償の協力者でも構わない)を、顧問に据えた方がよいです。
次に、人材募集記事に対して、抱いた感想などを書いていこうと思います。
「現社員を総入れ替えするならともかく、あれはモチベーションが激下がりだろうな」と思いました。
プライベートでも「仕事のために時間を使え」というのは、時間を使って何かをすれば、明確な金銭や役職上のリターンがあるか、将来の絵図が描けるかなど、何かないと難しいです。
そういうのを勝手にやる人は、単価が高いです(そのことについては後述します)。
また、社員にそういったことをさせたいならば、そうしたことによって他の社員(もしくは会社の外の社会)と差がつくような業務内容・給与体系にして、「こうすれば得」という道筋を付けないといけないです。
戦国武将だって、部下に仕事をさせるには、理念や魅力だけではなく、「論功行賞」をしっかりしていたわけですし。
だいたい、プライベートな時間は、その人の人生設計や人生戦略に合わせて使うべきです。経営者がそこに介入したいのならば、その時間を投資させたいと思わせるインセンティブが必要です。
こっちの方がお得ですよと、雇用者に対してそろばんを弾かないといけないです。
経営者は、夢を描いて、それを実現に導くのが仕事です。経営者は、業務内容や給与体系で、その実現の方法を示さないといけません。
それに、だいたい人間は、調子に乗っている時が一番のびるし、成果を出します。なので、やる気にさせて、自発的に何かをするように、環境を整えないといけないです。
そういう意味では、給与なんかが全て「応相談」というのは、きついなあと思いました。絵図が何も描けないですし。
次に、価値感に共感する人を募集している件について。
文章の方向性的に「志を共にする人」を募集する内容になっていますが、実は「能力のある人」を募集しています。自発的に仕事ができる人、成長を目指す人というのは、志云々以前に「相当できる人」です。
そういう人が欲しいのなら、どれだけのメリットがあるのかを提示する必要があります。
経営者と社員って、モチベーションも、目的に向けた労力の注ぎ方も違います。なので、社員は1/10ぐらいしか働いてくれないものです。
その前提の上で、同等近くの能力を持っている人を求めるのは、難しいだろうなあと思います。そういった人が欲しいのならば、大手とは言わないまでも、中規模以上の企業の待遇が必要だろうと思います。
まあそれ以前に、「ライターでない人に記事を書かせている」時点で、それは社員を総入れ替えするべきだろうと思います。
文章を読む限り、「ライターでない人を即席ライターにしようとして安く雇ってみたけど、ライターを育てるノウハウがなくてライターになりませんでした」というように読めるので。
これは社員を入れ替えて、ライターをきちんと雇うべきです。そこは安く済ませてはいけないと思います。ジャーナリズム云々言いたいのならば。
社員が働かない以前に、そもそも、そのスキルを持っている人を雇っていないので、「それ以前」の状態だと思います。
あと、「できる人のコスト」を甘く見ているなあと思います。
きちんとできる人は、そんなに安くはないです。給与も高いですし、リスクも高いです。
本当にできる人は、会社を割って、部下を連れて出て行きます。だって、その方が得なので。
それだけの能力を持っている人を、労働に従事させるには、それに見合う給料か、その会社だけでしかできないことなど、特殊な報酬が必要です。
もしくは、古典的な方法だけど、会社の信用でローンを組ませたり、家を買わせて単身赴任をさせるなどの、「物質」「人質」が必要です。嫌なやり方ですが。
あるいは、業界全体で転職リスクを高めて、人の流動性を低める圧力が必要です。もっと嫌なやり方ですが。
「価値感が同じで仕事ができる人」を求めるような内容だけど、実情は、「そこそこ記事が書けて、業務を回してくれる人」が欲しいだけなんだろうなあと思いました。
なので、素直にそういった募集をした方がよいだろうと感じました。
本当に能力がある人が「価値感」に共感した「振り」をしたならば、GIGAZINEにもぐり込んで、ブランドだけ持って、さっさと離脱するだろうと思いましたので。
もう一つ感じたのは、会社の規模の変化と、社員の流動性をあまり考えていないのかなという点です。
会社の規模が大きくなったりして、会社の目指す方向性やステージが変わった場合、それと一致しなくなった人材は、入れ替えていかないといけないです。
会社とともに成長した人間は残して、そうでない人は労働市場に戻すべきです。これは、サッカーのJリーグで、昇格したら、メンバーを入れ替えるようなものです。
でも、GIGAZINEって赤字だしなあ。
最後に、GIGAZINEが大阪っていうのは本当に凄いと思います。関西で、これだけ頑張っているのは、正直言って尊敬に値します。
私は昔関西にいて、「自分のしたいことをするのに関西にいては駄目だ、関東に行かないと仕事にならない」と思って、関東に行く計画を立てた人間なので。
まがりなりにも、うちは会社という形態を取っているので、色々と考えさせられました。