映画「クリスティーン」のDVDを七月下旬に見ました。
1983年の作品で、監督はジョン・カーペンター、脚本はビル・フィリップス、原作はスティーヴン・キングです。
ああ、スティーヴン・キングだなと感じさせる、人が徐々に変貌していく作品でした。
● 呪われた車
この映画は、ジャンル的には「呪われた車」物とでも言う感じの作品です。自ら意識を持ち、自己修復能力を持つ車が、人に取り憑いて恋人のように振舞います。
車や船は、よく女性に譬えられます。
男性が好み、惜しみない労力を注ぐこれらの乗り物は、「呪い」のアイテムとしても定番的なものです。
愛着が湧くからこそ、呪いの源泉になるのでしょう。この映画では、溺れるように愛を注がれ、その愛に応える呪われた車が登場します。
その車の名前が「クリスティーン」です。女性の名前です。この車は、'58年型赤のプリマスだそうです。
私は車に対する興味は全くないのですが、自分の身を預けて、そこに包まれる「車」というものは、ある意味母胎のようなものなのかもしれません。
この映画では、車が徐々に人の心を蝕んでいく様が、丁寧に描かれています。
● 憑かれる人間
さて、映画のメイン・ギミックは「呪われた車」ですが、主人公は「憑かれた人間」です。
スティーヴン・キング原作の映画の定番パターンなのですが、主人公(もしくはメインの脇役)は、何かに憑かれて、徐々にその精神を変容させていきます。
この人の作品が映画化されやすいというのは、その人気もさることながら、この「ギミック」と「人間」の両輪が、作品中に分かりやすく織り込まれているからではないかと思います。
だいたい小説を映画化する際は、多くの要素を削り落とさなければなりません。
しかし、スティーヴン・キングの作品には、「ギミック」が分かりやすく示されています。そしてっそのギミックを拾えば、そのまま映画の「ウリ」となるようになっています。
また、物語を通して、主人公が「何かに執着して」変貌していきます。これも、映画にするには、非常に分かりやすいです。
この二つを外さなければ、彼の作品を映画化すれば、それほど変な映画にはなりません。
そういった、構造的に「映画にしやすい」という部分もあって、スティーヴン・キングの作品は、よく(悪く言えば安易に)映画化されるのかなと思いました。
● ジョン・カーペンター
「ハロウィン」(1978)、「遊星からの物体X」(1982)、「ゼイリブ」(1988)などを撮っている監督です。「ゼイリブ」は子供の頃にテレビで見て、強い印象を残しています。
そういえば、この監督は、まだ見ていない作品が多いです。
機会を見つけて、いくつかの作品を見ないといけないなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(終盤の直前まで書いています)。
主人公は冴えない学生。彼は、スポーツマンの親友を持っていた。主人公はある日、オンボロ自動車を見つけて、持ち主から買い取る。そして、その車を整備して、新品のように蘇らせる。
その頃から、主人公は少しずつ変貌して行く。家族との仲は険悪となり、彼女を作り、不良の鋭さを備え出す。
彼は次第に過激になり、親友や恋人はそのことで心配する。
主人公が手に入れた車は、呪われた車だった。その車は、女性としての人格を持ち、持ち主に強烈な愛情を注ぎ、彼に害を成す人間をことごとく排除していく行動力を持っていた。
主人公は、その車に憑かれ、車のことしか考えなくなる。そして、主人公と対立していた人間たちが死ぬ事件が起き、警察が動き始めた。
親友と恋人は、主人公を車から救うために、呪われた車に戦いを挑むことを決意する。