映画「アウトサイダー」のDVDを八月上旬に見ました。
1983年の映画で、監督はフランシス・コッポラ。脚本はキャスリーン・クヌートセン・ローウェ
ル、原作はS・E・ヒントンです。主演はC・トーマス・ハウエル。ヒロインはダイアン・レインです。
凄い面白いという作品ではありませんが、ところどころ妙に心に響くところがある映画でした。
● 行き場のない不満
この映画は、若者の行き場のない不満みたいなのがくすぶっています。
主人公たちは不良たちです。でもそれは、彼らがワルだからではなく、生まれ育った環境から脱出できない鬱屈と、若さの迸りが、そういった方向性に駆り立てているように見えます。
そういった意味では、「ウエスト・サイド物語」(1961)などに通じる映画だと思います。
この「アウトサイダー」では、そういった若者の鬱屈と衝突に、意図せぬ殺人というツイストを入れています。
この要素のために、物語は逃避行によるロードムービー的な要素が加味されています。
この逃亡中そして帰還後に行われる主人公たちの会話が、「ウエスト・サイド物語」に比べて、内容を深めていました。
● 階層社会
この映画を見ながら思ったのは、イギリスは階級社会で、アメリカは階層社会に見えるなあということです。
アメリカは移民の国で、移民してきた時期と民族で、地層のような階層を作っています。この映画では、富裕な階層の若者たちと、貧しい階層の若者たちが衝突します。
しかし、それは「階級」というほど離れているようには見えません。でも、現代日本に比べると明確に分かれています。
そういった意味では、アメリカは、自分の属する社会に対する帰属意識が強く、対抗心も大きいのだろうなと感じました。
日本では、出身地や出身校を言うことはありますが、それほど他のグループと乖離しているわけではないですので。
● 最弱こそが最強
主人公は、彼の属するグループの中では若手です。そして、彼が共に逃避行をする友人は、グループの中で、最も若手で最弱の存在です。
その逃避行と帰還後のやり取りで、この二人の内面が深く描かれます。
そこで分かるのは、この二人は、彼らが属するグループの中では、かなり異色の存在だということです。
そして、終盤近くの会話で分かるのは、この最弱の少年が、グループの中で一番大人びていて、世界をしっかっりと見ているということです。
トランプのゲームではないですが、最弱のカードが実は最強という感じで、映画の序盤と終盤での印象の逆転が鮮やかでした。
● Stay Gold
映画中の重要な台詞です。主人公に対して送られた重要なメッセージです。
「黄金のままでいろ」
若い頃の、黄金のような感性やみずみずしさを失わずに、いつまでも輝き続けろというメッセージです。
映画の内容の積み重ねがあるので、非常に鮮烈に印象に残りました。
「Stay Gold」というのは、歌のタイトルなどにもなっていますが、非常によい文句だなと思います。
● 風とともに去りぬ
気になったことです。映画中、「風とともに去りぬ」の本を買うシーンが何度かあるのですが、アメリカでは「風とともに去りぬ」は、どこにでも売っているものなのでしょうか?
それこそ、本屋だけでなく、病院の売店にも売っていました。
これは、日本だと、どういった本になるのでしょうか。赤川次郎とか、西村京太郎とかとは違いますし。ドラえもんやあさりちゃんとも違うでしょうし。そういった本で思いつくものがありません。
日本だと何かなというのは、だいぶ気になりました。
● 編集違い
映画を見た後、Twitterでこの映画のことを書いたら、「○○のシーンはありましたか?」と質問を受けました。
どうやら、編集違いのバージョンがあるようです。終盤の特定の場面でのキスシーンの「あり」「なし」があるみたいです。
「山の手からも夕焼けが?」「下町でも見える」という台詞のシーンのようですが、私が見たDVDには、キスシーンはありませんでした。
この感想を書く際に、この映画のことを調べたら、DVDでは未公開シーンが加わっていると書いてあったので、編集違いのバージョンが何種類かあるのかもしれません。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。
主人公はオクラホマ州の田舎町の十四歳。彼の住む町には、裕福な若者グループと、貧しい若者グループがあり、対立していた。主人公は、貧しい方のグループの若手だった。
主人公は、裕福なグループの女の子と仲よくなる。だがそのことがトラブルの種となり、彼とその友人は裕福なグループの男たちに襲われる。
主人公は気絶する。主人公の友人は、裕福なグループの若者を刺し、殺人を犯してしまう。
二人は、信頼を寄せている年上の若者のところに行き、隠れ先を手配してもらう。そして、その場所でしばらく二人で過ごす。
そんな中、煙草の不始末が原因で、隠れ家にしていた廃教会が火事になる。たまたまそこにいた幼い子供たちを助けるために、二人は奮闘する。
その結果、彼らは一躍ヒーローになる。主人公の友人は重度の火傷を負うが、子供たちを助けたことで、裁判の陪審員たちの心象はよくなり、たぶん無罪になるだろうと言われる。
そういった中、主人公の属する貧しいグループと、裕福なグループの対立は強まる。そして、決闘の時が約束される。
主人公は、その決闘に参加する。
戻ってくると、主人公の友人は死んでいた。二人を匿ってくれた兄貴分の若者は、そのことでやけになり、スーパーを襲って逃亡する。
主人公は、兄貴分を助けようとする。しかし、兄貴分は警察に射殺されてしまう。