2010年12月07日 16:12:37
映画「エクスペンダブルズ」を映画館で十一月中旬に見ました。
2010年の映画で、監督、脚本、主演シルヴェスター・スタローン。競演はジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ミッキー・ローク、ドルフ・ラングレン、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガー他という、超豪華肉弾映画です。
いやー、本当に面白かった。こういう映画が見たかったんですよ。肉と火薬の怒涛のアクション映画でした。
● 脚本シルヴェスター・スタローン
映画好きならみんな知っていることですが、スタローンは俳優であると同時に脚本家としても有名です。彼の出世作の「ロッキー」は彼の脚本で映画会社に注目され、その脚本を元に主演を手に入れました。
そんな彼の脚本の特徴は、私は「王道」だと思います。力強いほどの王道の脚本で、観客をぐいぐいと引き込んでいきます。
そんなスタローンが、自身で監督・脚本・主演をこなして、さらに往年の肉体派スターたちを取り揃えて映画を撮る。そう言われたら、見に行かないと駄目じゃないですか。
何よりも、スタローン自身が、往年の肉体派スターたちの嚆矢であり、牽引役で、現在でもその地位を保っている大スターなわけですから。
というわけで、今回は非常に安心して見に行きました。結果は大満足。そうそう、こういう映画でスカッとしたかったんだよ! そう素直に言わせてくれる、気持ちのよいほど王道のアクション映画でした。
● お祭り映画
この映画を一言で言うならば「お祭り映画」です。新旧の肉弾派スター達が、銀幕上で競演する。それだけでお腹一杯です。
そして、そのスター達に、彼らの人生にちなんだエピソードや見せ場が用意されている。さらに、アクションも盛りだくさんで、彼らが複数絡む立ち回りも見せてくれる。
もう、「お祭り」です。
これが、単なる「豪華な映画」だけでなく、本当に面白い映画になっている。これは特筆すべきだと思います。
最近もやもやしていて、理屈抜きで楽しめる映画をみたいという人は、この映画は見て損のない映画だと思います。
● 一本道シナリオの練り込み
さて、この「エクスペンダブルズ」ですが、一本道シナリオです。ベースは「戦争の犬たち」(1980)だと思います(プログラムには、「戦争の犬たち」を強く意識して作ったとありました)。
話の内容は、傭兵たちが、某所にある小独裁国家を壊滅しに行くというものです。
このシナリオなのですが、本当に一本道シナリオです。しかし、「戦争の犬たち」のように退屈ではありません。なぜならば、一本道シナリオを面白くするための、様々な分かりやすい工夫がされているからです。
まず、最初の練り込みは動機付けです。本作では、依頼を受けて、実際に独裁国家転覆に向かうまでに、三段階の動機付けを行っています。
一つ目は、CIAからの依頼。ここで「金」を動機として設定します。主人公とその相棒は、現地に行って調査を行い、それがCIA内部のゴタゴタであることを知り、依頼を断ります。
二つ目は、「恋愛」要素です。現地調査の際に会った案内役の女性に恋愛フラグが設定されます。彼女は独裁者の娘で、自国の本当の解放のために戦っています。しかし、この恋愛要素でも、主人公は動きません。
そして、最後はダメ押しの三つ目です。それは「魂の救済」です。主人公は、既に引退した仲間に、過去の話を聞きます。自分があの時見捨てた人を助けていたら、自分の心は救済されていたかもしれないと。
動機は、徐々に、その人の心の外側から、内側に設定されていき、最後に、主人公はそれを自分自身の問題だと考えて立ち上がります。
そのために、非常に説得力を持って、決起のシーンに至ります。
また、この魂の救済を語るのが、出演者の中でも、演技巧者のミッキー・ロークというのもポイントです。このシーンは、非常に印象に残りました。
次は、敵側と味方側のツイストです。敵側と味方側に一筋縄ではいかない要素を盛り込むことで、一本道シナリオにハラハラドキドキの要素を上手く加えています。
まず、敵側についての設定です。
敵は独裁国家の元首ですが、その裏に、元CIAの人間がいます。つまり、傀儡国家なわけです。そしてこの真の敵は、非常に嫌な奴で、元首を抑圧しています。
このように、敵は一枚岩ではなく、何かのタイミングで暴発する危険性を孕んでいます。
次に味方側です。麻薬中毒で、傭兵グループを追放された元仲間(ドルフ・ラングレン)が、敵に内通します。彼は追放の復讐のために、主人公たちを執拗に襲います。
このように、敵も味方も一枚岩ではなく、それぞれ不安定要素を持っています。
そのため、一本道シナリオであるにも関わらず、随所にサスペンス要素が差し挟まり、退屈させない仕組みになっています。
こういった分かりやすい仕掛けは、非常に好印象でした。きっちり作りこんでいるなあという印象でした。
● 僕達の見たかったアクション
アクション万歳。
この映画は、CGの使用を極力排除した、実写の火薬と爆発と肉体の激突のアクション映画です。
ともかく、「映画は火薬と血糊の量だ!」という人には大満足の映画です。ともかく、ドッカン、ドッカンです。
肉体の激突、派手な射撃、怒涛のカーアクション。さらには、飛行機からガソリンを散布して、港を一気に爆発させるなど、見せ場満載です。それも、ひっきりなしにアクションシーンが続きます。
また、実はよくできているなと思ったのは、肉弾戦のところです。
あのスターとこのスターが激突! というだけでなく、あのスターとこのスターがタッグでバトル! といったシーンが随所に用意されています。
つまり、単なる対決ではなく、協力プレイが多数見られるわけです。これは興奮します。
こういった喜びは、キン肉マンの超人タッグトーナメント編で、初めてマッスルドッキングを見た時のような興奮を誘います。
まさに、僕達の見たかったアクションという感じでした。
● 長渕剛
映画のスタッフロールの歌は、長渕剛が歌っていました。
ちょっと泥臭い、でもハードなロックンロールという感じで、映画の雰囲気に合っていました。
たぶん、各国で、いろんな人が歌っているんだろうなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(中盤ぐらいまで書いています)。
主人公は、凄腕の傭兵団のリーダー。彼は高額の報酬で困難な仕事を引き受ける。主人公たちの傭兵団では、麻薬に溺れた仲間を一人追放する。
そんな彼らに入った新たな依頼は、南米の小国の転覆である。主人公は、右腕とともに、現地に行き、調査を行う。
そこで、主人公は案内役の女性に出会う。彼女は独裁者の娘だったが、自国のために反抗していた。主人公たちは、その地で敵に襲われる。脱出時に主人公は彼女を誘うが、彼女は自国のために現地に残った。
依頼のあった小国の背後には、元CIAの男がいた。依頼がCIAの内紛だと知った主人公は依頼を断る。しかし、彼は現地で合った女性を忘れられなかった。
そして、昔の仲間に、助けられる人間を見捨てたために、魂が今も病んでいるという話を聞く。主人公は、自身の魂の救済のために、単身現地に行くことを決める。
しかし、仲間たちはそんな主人公を一人で行かせはしなかった。彼らは、一致団結して現地に乗り込むことに決める。だが、そんな彼らの前に、傭兵団を追放された男が敵側に寝返り、襲い掛かってきた……。