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2010年12月28日 00:08:00
バーディ
 映画「バーディ」のDVDを十月下旬に見ました。

 1984年の映画で、監督はアラン・パーカー。脚本は、サンディ・クルーフとジャック・ベアー。原作はウィリアム・ワートン。主演はニコラス・ケイジです。

 何というか、ニコラス・ケイジの独り舞台みたいな映画でした。なかなかよく出来ていたのですが、疑問が残る点もある映画でした。



● ニコラス・ケイジの独り舞台

 この映画を一言で言うならば、「ニコラス・ケイジの独り舞台」映画です。

 この映画は、ベトナム帰還兵の主人公が、同じく帰還兵で心を完全に閉ざしている親友のために、過去を語りながら色々と接触していき、心を開こうとする話です。

 映画は、過去の回想と病室でのシーンで進むのですが、この両方でニコラス・ケイジが出ずっぱりです。

 また、相方となる青年は、無表情でじっと黙り続けています。そのため、ニコラス・ケイジの、ほとんど独演状態になっています。

 演技力のある俳優でなければ、できない役だなと思いました。



● 他人を救済することによる自己の救済

 この映画の構造は、映画の中で医師によって語られています。

 心を閉ざした青年に、同じように戦争で心に傷を負った主人公をぶつけることで、双方によい効果が得られるのではないかというものです。

 主人公は、完全に塞ぎこんだ親友の心を解きほぐそうとすることで、自身の強張った心を和らげていきます。

 それは映画の終盤に、主人公の感情が高ぶり、頂点を迎えることで、精神の解放に至ります。

 なるほどなと思ったのは、主人公の心の傷を、肉体的な表現で示していることです。

 内面に負った傷というのは、外観からは判断がつきません。主人公は、大きな怪我を顔に負っているという設定です。このため、見た目として傷ついていることが分かります。

 こういった、内面と外面の照応は、物語を分かりやすくするために有効だと思いました。



● 鳥を夢見る青年

 この映画を特徴的にしているのは、主人公が救おうとするバーディーという青年です。

 彼は、鳥に取り憑かれており、自身も鳥になりたいと願っています。

 このバーディーの「世間とは全く違う価値感」と、その間に立つ主人公の立場を描くことで、この映画では、現実と夢の狭間のような状態を主人公に与えています。

 こういった物語を描く上で重要なことは、主人公の立ち位置をどこに持ってくるかです。

 主人公自身をバーディーの視点に持ってくると、観客は感情移入することが難しくなります。

 幻想に近い位置にいるけれど、現実の側に立っている青年。そういった位置に主人公が置かれているために、かなりファンタジーな雰囲気のある映画なのですが、現実の枠内に本作はなっていました。



● 少佐の医師

 さて、以下は疑問点です。

 映画の舞台となる精神病院には、少佐の医師がいます。彼は権威による敵対者の位置づけで登場するのですが、このキャラクターが有効に働いていないように思えました。

 なぜならば、この少佐は、主人公に対して何度か激高して反発するのですが、映画が終わるまでに、一度も彼の背景が語られないからです。

 そのため、なぜ怒っているのか、何の説明もないまま映画が終わってしまいます。

 この映画は、原作付きの作品なので、そちらでは何かが語られていたのかもしれません。

 どちらにしろ、疑問の残る部分でした。



● 粗筋

 以下、粗筋です(終盤、ラスト直前まで書いています)。

 主人公はベトナム戦争で顔面に傷を負い、アメリカに戻ってきた。彼は、ある精神病院に呼び出される。そこには、彼の親友が収容されていた。

 親友は、主人公と同じようにベトナム戦争に行っていた。そして、完全に心を閉ざして、無表情で無言のまま、日々を過ごすようになっていた。

 主人公は、自身のリハビリがてら、親友の心を開く役を与えられる。

 主人公と親友は、学生時代からの友達だった。その親友は変わったところがあった。それは、鳥をこよなく愛していたことである。

 鳥を捕まえて飼うだけでなく、自身も鳥になろうとしていた。彼は高所から飛び降りたり、飛行装置を作ったりしていた。

 主人公は、そんな夢の住人である親友と馬が合い、行動を共にしていた。

 主人公は、病棟で親友に語りかけながら、自身と親友の過去を思い出していく。そして、戦争で強張っていた心を、徐々に解きほぐしていく。しかし親友は心を閉ざしたままだった。

 主人公は、親友を担当する医師から、お役御免を告げられる。そのことに反発した主人公は、親友の病室に侵入して、彼を救い出そうとする……。
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