映画「マリアの恋人」のDVDを十二月下旬に見ました。
1984年の作品で、監督はアンドレイ・コンチャロフスキー、脚本はジェラール・ブラッシュ他。主演はジョン・サヴェージ、ヒロインはナスターシャ・キンスキーです。
何というか、すごい鬱展開の映画でした。よく出来ているとは思いますが、ボディブローのようにきつい映画だと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(ネタバレあり。最後まで書いています)。
舞台は1940年代のペンシルバニアの片田舎。兵卒の主人公は、五年ぶりに実家に戻ってくる。すると、幼馴染で恋心を抱いていた女の子マリアが、軽薄そうな将校と付き合っていた。
主人公は戦場で、彼女のことを思い浮かべることで、どうにか正気を保って生きてきた。彼は、町で有名な寡婦の家に行き、彼女と寝る。
戦場から帰ってきたということで、町ではパーティーが開かれる。しかし主人公はあまり嬉しくない。会場で主人公はマリアと出会う。マリアと恋人の将校は上手くいっていないようだった。
パーティーの最中、二人は会場を抜け出す。主人公は草原で、戦場に行く前にプレゼントしようと思っていたイヤリングを、彼女に手渡す。
主人公とマリアは急接近して結婚する。だがそこから主人公の苦悩の日々が始まった。戦場でマリアのことを神聖視していたために勃起しないのだ。
主人公は彼女にそのことを告げられずに悶々とする。そして、寡婦のところに行き性欲を吐き出す。その現場をマリアに見られてしまう。彼女は泣き、主人公は怒りを彼女にぶつける。
将校が新しい恋人を見つけ、婚約発表の日になった。将校はマリアをまだ愛していると言う。主人公は手をガスコンロで炙り、自分はこれだけ愛しているという。そして、マリアに「勝手にするがいい」と言い、姿を消す。
その頃、流しのギター弾きが町に来ていた。彼は色男でマリアを誘う。しかし、マリアはなびかない。
ある日、ギター弾きがマリアの許に来る。マリアは彼と寝る。
主人公はマリアの許から離れ、精肉工場で働いていた。マリアは主人公の許にやって来る。彼女は妊娠していた。その子は、ギター弾きの子だった。主人公はマリアを拒絶する。
夜、主人公と仲間たちが飲んでいるところに、流しのギター弾きがやって来る。彼は自慢話として、処女だった人妻との一夜の話をする。それは、マリアの話だった。主人公はギター弾きをぶちのめして去っていく。
主人公はマリアの許に戻ってくる。そして、ようやく一夜を共にする。彼は、マリアの夫として、赤ん坊の父親として、暮らしていくことを決める。
● 鬱展開
戦場でのトラウマ、幼馴染奪われ、勃起障害、寝取られ、他人の子と、次から次に鬱展開です。
その鬱展開を、鬱々と描いています。へこみます。
映画自体の出来はよかったのですが、さすがにこれはきついなあというのが、正直なところでした。
● ヨーロッパ映画のような手触り
映画は、ヨーロッパの香りただよう手触りでした。
監督のアンドレイ・コンチャロフスキーは、ロシアの芸術一家に生まれ、国立映画大学を経て映画監督になっているそうです。
この監督は、初期は芸術系の映画が多かったようです。しかし、この映画の後に撮った「暴走機関車」(1985)以降は、アクション娯楽作品に移行するようです。
この映画で、本人もへこんだのだろうかと勝手に想像してしまいました。たぶん違うと思いますが。
● ナスターシャ・キンスキー
ヒロインのナスターシャ・キンスキーは、クラウス・キンスキーの娘です。
クラウス・キンスキーの作品は、LEGIOんさんに薦められているので、もっと見たいのですが、なにぶんTSUTAYAにはないのです。残念。
というわけで、図書館とかで見かければ、見てみたいなと思います。