映画「コーラスライン」のDVDを二月上旬に見ました。
1985年の作品で、1975年に初演されたミュージカルの映画化。監督はリチャード・アッテンボロー、脚本はアーノルド・シュルマン。出演はマイケル・ダグラス、アリソン・リード、テレンス・マン他。
ミュージカルのオーディションの舞台化。密室劇的な作品で、話的には個々のダンサーの告白が並列で並ぶ作りの作品。
それぞれのダンサーの告白に共感できるかどうかが鍵だと思うのですが、私はあまり共感できなかったので、この映画はそれほどよいとは思えませんでした。
● 枠組みと並列構造
この映画は、基本的に一舞台のみの作品です。ミュージカルのオーディションの場所で、最終選考に残った十六人のダンサーたちが、ディレクターのパーソナルな質問に答えていくという内容です。
この質問が並列で続き、それぞれが抱えている問題を浮き彫りにするといった構造になっています。
いわば、大きな枠組みの中で、十六本の小ストーリーがある構成です。舞台ではありかもしれませんが、映画としてはちょっとなあと思いました。
● マイノリティ
個々のダンサーの告白が、様々なマイノリティの立場での話になっているのが、この映画の肝です。
人種的マイノリティ、性的マイノリティなど、様々なマイノリティが出てきます。
こういった内容は、舞台となる場所によって移植可能だなと思いました。
たとえば、「十二人の怒れる男」(1957年)が、「12人の怒れる男」(2007年)としてリメイクされた際に、ロシアの問題を抉り出すようにアレンジされたように、この映画も地域や時代によって置き換え可能だと感じました。
● 映画の力学
さて、この映画は台詞劇です。ダンサーの告白は言葉で行なわれます。これは、映画には向かないと思いました。
映画は、台詞で状況を語るのではなく、映像で物語を語らないといけないです。
そういった意味で、この作品は映画向きではないと思います。
その点でも、私の中でこの映画の評価はあまり高くはなりませんでした。
● マイケル・ダグラス
この映画は、ダンサーばかりが出てくる作品です。その中で唯一俳優として、マイケル・ダグラスがディレクター役で出てきます。
彼は、机に座っているだけの役です。何というか、あまり働いていないけど、出ずっぱりなので、けっこう出演料がかかるのだろうなと思いました。
● 粗筋
以下、粗筋です(大きなネタバレはなし。枠組みだけ書いています)。
新しいミュージカルのオーディション。そこで十六人の男女が最終選考に残った。
選考担当のディレクターは、彼らに個人的な背景を聞いていく。彼らはいずれもマイノリティと呼ばれる人間たちだった。
また、そのオーディションに一人のダンサーがやって来る。彼女はメインを勤めるような人間で、コーラスラインに使えるような女性ではなかった。
彼女はかつて、ディレクターの恋人だった。彼女はこの一年、舞台に上がっていないという。そして、この舞台で使って欲しいという。
だが、それは口実だった。その背景には、彼女が彼に求めていた愛があった……。