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2011年05月16日 23:49:21
死霊のしたたり
 映画「死霊のしたたり」≪ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり≫のDVDを二月中旬に見ました。

 1985年の映画で原題は「Re-Animatore」。監督はスチュアート・ゴードン、脚本はスチュアート・ゴードン他。原作はH・P・ラヴクラフトの「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」です。

 B級だとは思いますが、けっこう楽しめました。



● 映画の長さと編集

 この映画は85分です。DVDには、カットされたシーンが収録されており、なぜカットされたのか解説が入っています。

 この解説で言っていたのが「説明シーンはテンポが悪くなるので、観客が想像で補える部分はカットした」といったことです。

 この映画は、それで正解だったと思います。内容的に、これで2時間もやると冗長で退屈なものになっていたと思いますので。



 では全ての作品でこういった方針で行えばよいかというと、実際はその匙加減が難しいと思います。

 たとえば映画は「強制時間進行型」のエンターテイメントです。なので、説明に筋が通っていなくても、どんどん先に進みます。そこで思考を奪うシーンが登場すれば、観客はそこに意識を集中するので、説明不足は気になりません。

 これは、現在ヒッチコックの「映画術」を読んでいるのですが、ヒッチコックが語っていた内容を念頭においています。

 ヒッチコックは、「映画は少々話に筋が通っていなくても、サスペンスでぐいぐい引っ張ることで、観客を飽きさせないことが大事。そうすれば話の整合性など、批評家以外は気にしなくなる」といったことを話していました。

 これはヒッチコックが手掛けるジャンルである「サスペンス」や「ホラー」では正しく当てはまると思います。観客は話の整合性よりも、手に汗握るシーンや興奮を求めて映画を見に行きますので。

 ただ、こういった「ジェットコースター」系以外では、この手法は瑕疵になるのかなとも思います。

 たとえばドキュメンタリに近い社会派ムービーでは、その「整合性」が主眼になるので、そこがちぐはぐだと目的に適わない作品になります。

 何はともあれ、ホラーというジャンル、特にB級ホラーというジャンルでは、無駄な説明を極力省いた方が、映画として成功するのだろうなと感じました。



● リアリティとホラー

 この映画では、首を切られた敵が、デュラハンのように首を抱えて動き回るシーンがあります。

 リアリティという観点からは、これはナンセンスです。超能力でも使えない限り、脳と有線接続していない肉体が、人間の意思を反映して動くことはありません。

 まあ、それを言い出すと、死体が蘇生するあたりでリアリティがないと言われればそれまでになります。

 ここらへんがホラーやSFなどの「現実世界ではないけれど、現実と地続きの世界を扱うジャンル」の難しさなのかもしれません。

 この映画は、主人公に医師(科学者)を据え、科学的実験を土台にしています。そういった設定だと、要求されるリアリティレベルが跳ね上がります。

 特にこれは映像化すると顕著で、あからさまに間違っているというのが目に見えてしまいます。

 では、この映画の「デュラハン風シーン」は駄目かというと、何と言うか、コメディ要素として成り立っています。特撮現場を想像しながら、ニヤニヤしてしまうシーンになっています。

 まあ、そこは、映画の本編とは違った楽しみ方になるのですが。

 というわけで、この映画の、首なしシーンを見ながら、映像作品のリアリティについて、少し考えてしまいました。



● 黄緑色の液体

 死体蘇生薬が、蛍光の黄緑色の液体でした。映像的には見栄えがあるけど、化学的には蛍光の意味はないよなと思いました。

 これは、どうでもいい感想ですが。



● マッド・サイエンティスト

 ごちそうさまです。おいしく頂きましたという感じです。

 主人公の相方のハーバート・ウェストは、見事なまでのマッド・サイエンティストでした。

 こういう空気の読まなさっぷりは、マッド・サイエンティストの条件だよなあと思いました。



● 粗筋

 以下粗筋です(ラスト直前ぐらいまで書いています。あまりネタバレの気にならない作品なので、気にしなくてもよいと思います)。

 主人公は医学生。主人公には、学長の娘の彼女がいる。ある時、彼が通っている大学に、一人の学生が転校してくる。彼は主人公の家に間借りして生活することになる。

 その同居人は、死体蘇生の実験を行っていた。主人公は彼に引き込まれて手伝うことになる。

 実験の途中、事故が起こり学長が死ぬ。同居人と主人公は学長を生き返らすが、意思を持たない凶暴な人間になってしまう。主人公の彼女は、その原因を知らされず失意に沈む。

 このカラクリに、同居人と対立していた教授が気付く。教授は同居人から死体蘇生薬を奪おうとして殺されてしまう。

 死体蘇生薬で生き返った教授は、同居人と主人公を亡き者にしようとする。教授は主人公の恋人に恋をしていた。彼は、主人公の彼女を奪って逃げる。

 主人公は恋人を救い出すために、死体を操る教授と戦うことになる。
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