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2011年07月22日 16:00:09
デストラップ 死の罠
 映画「デストラップ 死の罠」のDVDを四月上旬に見ました。

 1982年の映画で、監督はシドニー・ルメット、脚本はジェイ・プレッソン・アレン、原作はアイラ・レヴィン。主演はマイケル・ケインで、助演はクリストファー・リーヴです。

 演劇系の画面遷移だなと思って見ていましたが、ブロードウェイで大当たりした舞台の映画化でした。

 話は二転三転して面白かったです。



● 舞台の映画化の画面

 この映画は、ブロードウェイの舞台を映画化したものです。この手の演劇系の作品を舞台化したものには共通の特徴が多く見られます。

 それは、引きの画面が少ないことです。そして、話の多くが室内で進むことです。これは舞台の制約として、引きのシーンを盛り込めないことと、セットの都合で屋内が多くなることに起因しています。

 そのため、こういった映画では、室内で寄りの画面が多くなり、場面展開がほとんどなくなります。

 映画では、一つの被写体で持たせられる時間があり、また適度に引きと寄りをまぜることで緩急を付けます。

 しかし固定の場所で延々とカメラを回すと、緩のタイミングがなく、かなり詰まった印象になります。

 ここらへんは、舞台を映画にする時の課題なのだろうと思います。また、単純に緩のシーンを入れてもテンポが悪くなるので、難しいところだろうと思います。

 こういった作品を映画化する際は、割り切って舞台の通りに撮影するか、映画のために根本的にシナリオを直すかの二択しかないのでしょう。

 この映画では前者を採用したわけですが、やはり詰め込んだ画面だなという印象は抜け切れませんでした。



● 二転三転系の話の設計

 この映画は、話が二転三転するタイプの物語です。こういった話は、いわゆる本格ミステリとはかなり構造が違います。

 本格ミステリでは、答えに至る謎のヒントがあらかじめ提示されているのに、観客がそれに気づかず、全てが明かされた時に「あっ、そういうことだったんだ」と驚きます。

 対して、二転三転するタイプでは、「実は、これはこうでした」という新事実が次々に出てくることで、今までの話の意味がどんどん変わっていきます。

 前者は、話の筋は固定で、勘違いによって事実が覆い隠されているのに対して、後者は、提示された情報を観客が正しく認識することで、話の筋がその都度変わるといった構造を持っています。

 どちらも観客が情報を認知して解釈してくれないと成立しないことは同じですが、後者の方が誤誘導を必要としない分、難易度は低いと思います。

 ともあれ、この映画はなかなか凝っていて面白かったです。

 あと、主役が「売れなくなった往年の劇作家」という設定が、演劇を見に来る人々の興味をそそっていたのだろうなと思います。

 こういった「内輪的感覚」を与える設定というのは、そのジャンルのファンにとっては嬉しいものですので。



● クリストファー・リーヴ

 美男子ですね。非常に整っています。

 絵になる男性だなと思いました。

 スーパーマンよりは、こういった「美形」であることを前提とした話の方に、この人は合うのかもしれません。



● 粗筋

 以下、粗筋です(ネタバレあり。前半だけ書いています)。

 主人公は年を経た劇作家。彼にはお金持ちの妻がいた。彼は昔は人気作家だったが最近は低迷が続いている。

 そんな彼の元に、彼の授業を聞いた生徒からの原稿が届く。その原稿は非常に出来がよく、彼は起死回生のために、男子生徒を殺して原稿を奪う計画を妻に告げる。

 妻は夫に、その計画をやめさせようとする。しかし主人公は生徒を呼び出し、殺害計画を進めていく。

 そして主人公は生徒を殺し、妻に手伝わせて庭に埋める。

 その夜、妻は窓の外に恐ろしいものを見る。それは、死んだはずの生徒だった。妻は心臓に持病を持っていた。彼女はショック死してしまう。

 主人公は、生徒と手を取り合い喜ぶ。二人は恋仲だった。主人公は妻の遺産を相続する。

 それからしばらく経った。主人公は男子生徒を秘書として創作活動に励む。

 そんなある日、彼は恐るべきものを見つけてしまう。それは、男子生徒の書いた舞台の草稿だった。それは、主人公が妻を殺し、遺産を奪うというものだった。

 その筋は、主人公が妻を殺害した話そのものだった。主人公はその内容に恐れおののき、男子生徒に執筆をやめさせようとする……。
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